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空と海と、トンネルの向こう

第196話

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 「待って待って…!「時間改変」ってどういうことなん!?やっぱり、未来やと自分の過去に戻れるとか、そういう技術が…!?」

 「落ち着け。冷静に考えてみ?そんなん信じられるか…?アタシは、親父のことは嫌いやが、頭がいい学者ってことは認める。せやけどな、未来とか過去とか、時間改変とか、意味わからんやろ?そんなもん、どうせ妄言に過ぎん」

 「…本気でそう思ってるん?」

 「なんや、親父の肩持つんか?」

 「そういうわけやないけど…、ここに連れてきたんは、なんか引っ掛かりがあったからやろ?おじさんの言葉とか、ここにある資料の中から」

 「…まぁ」

 「確かに私も信じられんで?いまだに、全部「夢」やって思う。でも…、アイツが言ったんや。それだけは、嘘のように思えん。事故に遭ったアイツが、…どうしても偶然には思えんのや」

 「目ェ覚まさんって…?」

 「…うん。不安なんや…、キーちゃん。どんなに不思議なことでも、今だけは、全部嘘やないって思える気がする…。世界が終わるとか、遠い未来の話とか、…キャパオーバーすぎて…そりゃ、理解不能やけど。…もし、もし本当に50年後の亮平が存在してて、私に言ったことが全部本当やとしたら…」

 「…やとしたら?」

 「なんとかしてアイツを助けたい」

 「どうやって?(笑)」

 「…わからんけど、このまま目ェ覚まさんとか、絶対に許さん」


 キーちゃんが私に教えてくれた話は、確かに信じられない。

 だけど、今はそんなこと言ってられない。

 ここに来る道中も、病院に連絡を取ってた。

 亮平が目を覚ましてないか、それが頭から離れなくて。


 でもやっぱりアイツは、目を覚ましてない。

 確認を取るたびに不安になった。

 このまま目を覚さないんじゃないか…って。


 …だって、「未来の亮平」は言っていた。

 事故に遭った俺は、植物状態になって、…それで…



 「わかったわかった。…でも、楓が言う「未来の亮平」って、どうやって過去に戻ってきたわけ?」

 「…えっと、その、「クロノ・クロス」って言うやつで。多分、…そうやと思う」

 「自分の脳にデータを送信、ってやつやろ?」

 「そうそう!」

 「…うーん。ここにその関連の資料があればええけど、見たことないんよな…。けど、その「クロノ・クロス」って言うんは、もしかしたらあるかもしれん」

 「おじさんから聞いてないん?」

 「さっきのノート見るまで、忘れとったわ。その言葉を。「ベッケンシュタイン境界」に関してはよぉ口に出しとったけど、「クロノ・クロス」はなぁ…。ってか、アタシが開発者ってのは絶対ないわ。そんな頭良くないし。第一興味無い」

 「頭良いくせに…」

 「そりゃ楓に比べたらな(笑)あっ、そうや。面白いノートがあったな、そういえば」


 そう言いながら、別の棚から取り出した古臭い一冊のノートを、パラパラッとめくった後、「見てみ」って言って渡してきた。

 タイトルは、

 『ある少女への手紙』

 とあった。
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