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空と海と、トンネルの向こう
第182話
しおりを挟む「神戸大橋」は、浜手幹線を抜け、巨大なビル群を抜けた先にある、海と街とを繋ぐ架け橋だった。
昔キーちゃんが言ってたんだ。
「あの橋の向こうに、見たこともない世界があるんや!」
って。
子供の頃だった。
まだ私たちが、小学生だった頃。
キーちゃんがそう言った理由を、私はまだ知らない。
ポートランドは、日本で最先発のウォーターフロント都市と呼ばれている。
1966年より着工、1981年に「21世紀の海上都市」と銘打って街びらきが行われた。
1987年には南側の第2期地区の建設が開始され、東沖の六甲アイランドを超えて、日本最大の人工島となった。
国内最大級の医療クラスターとしての一面も持ち、次世代スーパーコンピュータ「京」および富岳の誘致に成功するなど、研究ゾーンとしての注目を浴びている場所でもあった。
キーちゃんは昔、この場所によく来ていた。
学校が終わった後、自転車を漕ぎ、神戸大橋を渡って、ある「場所」に行っていた。
キーちゃんの父親がいた『神戸中央大学』の研究室に。
キーちゃんは子供の頃から天才だった。
剣道だけが取り柄の亮平とは違って、テストは毎度すごい点数だったし、他の子とは全然違った。
なによりキーちゃんは、宇宙とか科学とかが好きだった。
「宇宙」っていうと、へんに聞こえるかもしれないけど。
夜2人で抜け出して、廃墟ビルの屋上で寝転びながら、天体観測した時があった。
確か33年ぶりの彗星の大接近とかで、突然家のインターホンを鳴らしてきたんだ。
「楓、いくぞ!」ってキラキラした目で、リュックサックを背負いながら。
あの時、小学生だというのに、宇宙についてを熱く語っていたキーちゃん。
“1番好きな天体は何か”、夜空を見上げながら話してた。
初めて聞くブラックホールという言語。
木星の超強力な磁場についてのお話し。
私は興味なんてないのに、宇宙は今何歳でしょう?とか、
『宇宙の果て』はどこでしょう?とか、
超難関な質問をぶつけてきて、その度に頭がパンクしそうになった。
火星が地球の前にあるのか、後ろにあるのかもよく分かってない私が、『スーパーローテーション』とか『シュワルツシルト半径』とかの言語たちをその時に知ってしまったのは、今ではいい思い出だ。
全部、キーちゃんのせいだよ。
宇宙について、中途半端に変な単語を覚えてしまったのは。
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