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空と海と、トンネルの向こう
第179話
しおりを挟む雨が止む気配はなく、今夜は嵐になるそうです、というニュース。
身支度を整え、キーちゃんが「早く行くぞ!」って玄関前に待機していたが、あまりにも雨がひどかったため、私たちは一晩待つことにした。
どこに行くのか、キーちゃんは言わなかった。
行ってからのお楽しみ的な言い方をされ、結局夜が明けるまで教えてくれなかった。
朝一番のアラームに起こされ、カーテンと窓を開けると、雨上がりの瑞々しい空気が、朝風の涼しさと一緒にやって来た。
空は青い。
ひたすらに。
眩しすぎる日の光に目をやられ、眠気が飛んでいく。
「よっしゃ、朝飯食ったら行くで!」
と、キーちゃんが言った。
私より先に起きていたみたいだった。
焼き立ての目玉焼きと、パン。
紙パックの牛乳にストローをさして口に咥えながら、キーちゃんは服を着替えている。
私が牛乳嫌いなの知ってるくせに、そっとテーブルの上に同じ紙パックのやつを置いてた。
いらないから、そっとそれを冷蔵庫に返す。
代わりに午後の紅茶を拝借する。
奇跡的に見つけたんだ。
350mlのペットボトルを。
「なぁ、どこに行くん?」
「せっかちやな。少しは待つって言うことをやな」
待つって言うか、誰だって気になると思うんだけど。
話に全く興味を示していなかったのに、急に真顔になってさ?
何事かと思ったよ。
挙げ句、すぐに行こうとか言い出すし。
「なんか持っていくもんとかある?」
「ない!金は持って行っとけよ」
「金??」
「途中で喉渇いたり腹減ったりするやろ?」
「…ああ」
「ま、運が良かったら非常食があるかもしれん」
「非常食??」
「おう。今から行くのはアタシの秘密基地やからな」
「秘密基地!?」
なんじゃ、…それは。
秘密基地とな。
予想外の行き先に、戸惑わずにはいられない。
目玉焼きを完食したところで、ほら行くぞ!って催促してきた。
…まだパンが…
あたふたしながら、食べかけのパンを口に咥えた。
財布だけポケットに入れ、外に出る。
自転車に2人で乗って、「出発しんこーう!!」のキーちゃんの合図。
思いっきりペダルを踏むキーちゃん。
背中にしがみつく私。
ハイテンションな声に寄りかかりながら、坂道を一気に降った。
風に靡かれて、前髪が乱れる。
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