雨上がりに僕らは駆けていく Part1

平木明日香

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現在と過去

第172話

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 「…大体、過去に戻ってきて、お前はどうやってここに戻ってきたんや?」

 「…どうやって?」

 「2013年にタイムリープした後や。そのまま今日まで過ごしとったんか?」

 「…え?いや、そういうわけやない」

 「せやったら、お前は「どこ」からきたんや?」


 一瞬考え込んでしまった。

 自分がどうやってここに戻ってきたのか。

 「どこ」から来たのか。

 冷静に考えても、考えなくても、そんな簡単なことくらいわかる。

 …わかるはずなのに、なぜか答えられなかった。


 「そんな難しいこと聞いとらんで?」

 「…わかっとるけど」


 キーちゃんが疑問に思うのも無理はない。

 でもホントなんだ…

 あれは「夢」なんかじゃない…

 今日の朝はそんなことは思わなかった。

 でも今は、夢じゃないって思うんだ…

 証拠なんてものはないけど


 「…考えすぎや。心配なのはわかるけど。病院で夢でも見とったんやろ?」


 …違う


 そんなんじゃない。


 夢なんかじゃないんだ…


 「…最後に隕石を見てた」

 「…隕石?」

 「アキラと絢音と、…その2人は中学の友達なんやけど」

 「電話で言っとったことあったな?新しい友達ができたって」

 「そう。3年になってもずっと一緒やったんや。運良くクラスも一緒やったし」

 「で?」

 「で、亮平が隕石を見に行こうって言うて」

 「「未来の亮平」が?」

 「そうそう!それで…」

 「…それで?」


 そこから先の記憶を、思い出そうとした。

 2022年に飛んだって言う話よりも、もっと手前。

 そこでノイズのようなものが頭の中に走った。

 夜空と、星と、光と、——渇いた音。


 あの夜、キーちゃんがいた。

 2013年のあの夜に、いるはずがないキーちゃんが。



 …でもそれを伝えようか迷った。

 「伝えることを迷った」というよりも、急に、自分が見たあの光景が、——出来事が、嘘のように思えた。


 確かにあの場所にキーちゃんはいた。

 それは間違いない。

 でもあり得ないものを右手に持ってて、亮平がその場所に倒れて…


 「…どした?」

 「…いや、なんもない」


 キーちゃんが言う。

 考えすぎだ、って。

 夢でも見てたんだって。


 その言葉が、急に重くのしかかってきた。

 考えようとすればするほど、現実とは思えない出来事。

 光景。


 でも、…でも、今日の出来事が偶然には思えない。

 その2つの感覚がない混ぜになって襲いかかる。

 だんだん訳が分からなくなってきた。
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