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現在と過去

第169話

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 シャワーを浴びた後、リビングに入ってテレビを見ていた。

 チャンネルを手に取り、ボタンを押しまくる。

 ちっともいい番組がないと思い、適当にニュースでもつけていようと4チャンネルを押した。

 国際ニュースとか政治、スポーツにエンタメ、その他諸々。

 食欲はないからって伝えたんだけど、キーちゃんは焼きそば焼くって言ってた。

 キーちゃんは今、兄貴と2人暮らしだった。

 父親はアメリカに行ったきり、まだ帰ってきてないし、母親は幼い時に離婚して、今はいない。

 兄貴の方は仕事で帰るのが遅く、いつも大体10時くらいになるって言ってた。


 「ほんまに食わんのか?」


 せっせとまな板で野菜を切りながら、ソファにいる私に向かって聞いてきた。


 「いらん」


 母さんからもらった2000円は、ポケットに入れたままだ。

 まじでお腹空いてない。

 かわりに喉が渇いた。

 カラカラだった。


 「冷蔵庫にコーラあるで」

 「…ああ、うん」


 キーちゃんは色々気を遣ってくれた。

 着替えとか全部貸してくれたし、話も聞いてくれた。

 「話」というか、ちゃんと整理して話せたかどうか曖昧だけど、聞いてくれたんだ。

 話を遮ることもなく。

 とりあえずちゃんと聞くからってことで、まずはご飯の支度を始めたところだ。

 詳しい話はこれから。


 「おし!できたできた!」


 いい匂いのする焼きそばがフライパンごと机にやってきて、取り皿も持ってきた。

 自由に取っていいからって箸も持ってきてくれて、氷入りのグラスも。


 「…私はいいのに…」

 「まあそう言うな。雨にも濡れたんやし、食うもん食っとかんと風邪ひくで?」


 キーちゃんは色々と手際がいい。

 見かけによらず成績はいつもトップクラスだし、運動神経は抜群で、非の打ち所がない。

 「女子力」もずば抜けている。

 料理も家事も、本当に高校生か!?っていうくらいのクオリティだし。


 「シャワー浴びたから大丈夫」


 今は、アイツのことしか考えられない。

 今頃目が覚めてるかなとか、どうしてるだろうって、そればかりが気になる。

 他のことなんて考えられなかった。

 不安だったんだ。


 もしかしたら…


 って思うことが、どうしようもなく頭にチラついて
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