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運命の交差点
第163話
しおりを挟む「…母さん、亮平が…」
「大丈夫、…きっと大丈夫だから」
「ほんとに…?」
「…」
「私さ…、嫌な夢見たんや」
「…夢?」
「…亮平が、事故に遭う夢」
「…え?」
「夢の中であいつは、もう目が覚めないって…」
「そんなの…、夢やろ??」
「…そう思いたいけど…、胸騒ぎがするんや…」
母さんは必死に手を握ってくれた。
『手術中』
見慣れない赤ランプの文字が目に焼き付いて離れない。
病院の廊下は嘘のように静まり返って、どこからかカツンカツンという足音が聞こえた。
その間に、看護婦さんが亮平の現状について婆ちゃんに話していた。
その話は待合室にいる私たちにも聞こえてきた。
『事故をした時のなんらかの衝撃で、亮平は下顎骨を骨折していた』
『骨の破片が左頸動脈を突き破り、血液が首の内部に漏れ始めた』
って。
傷ついた頚動脈を結束しなければ、血液が止まらずに危険な状態になってしまう…
婆ちゃんはただ頷いてた。
「助かるんですか?!」
と、必死に訴えかけてた。
…ただ、必死に。
未来の亮平が言っていたこと…
9月10日に起こった出来事…
一体、なにが起こってる…?
じっと座ってはいられなかった。
なんで急にこんなことが起こってるのか…
下顎骨を骨折…?
頚動脈が、…損傷?
…そんな
…嘘だろ?
手術室の向こうにいる亮平。
止まらない時間。
…なんで、
…なんでこんなことに…
アイツは笑ってた。
今、本当に目の前で、笑ってたじゃないか…
助かったんだって思った。
未来を変えられたんだ…って。
いや、…そもそも、「未来」ってなんだ…?
交差点のトラックと、高速道路で横転したバイク。
未来の亮平はなんて言ってた?
自分が事故に遭わなかったせいで、私が事故に遭ってしまった…?
逆にもう一度自分が事故に遭えば、元々の世界の状態になる…
意味がわからない。
だけどそんなことを言っていた。
でもアイツは、このドアのいる先にアイツは、未来でも過去でもない、「今」のアイツだ。
それは間違いない。
…確証はないけど、そう思うんだ。
ずっと一緒にいた私だからわかる。
アイツは正真正銘の「亮平」だ。
じゃあ夢で見たアイツは…?
わからない…
なにが正しくて、なにが間違っているのか…
頭の中で嫌な音が鳴り響いた。
夢でも見た。
心臓マッサージを受けるキーちゃん。
心拍数の機械の音。
耳をつんざくようなキーーーーーンっていう音。
サイレンだ、…まるで。
ピーーーーーー
って、ずっと頭の中に残っている。
ベットに溢れ落ちた真っ赤な色。
現実離れした慌ただしさ。
亮平…
頼むから
無事でいてくれ
…頼むから
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