雨上がりに僕らは駆けていく Part1

平木明日香

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【第3章】青い土地

第151話

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 「時間」が0から1に触れる時、0コンマ1秒の最初の刹那に、——現在が近づく。

 その加速度的な速度の先に、“未来を思い出せる”。


 現実か、夢か。


 その答えが目の前にあるかどうかはわからない…


 じっと待っていた。


 その時、——信号が青になるまでの、時間を。




 狭い路地。

 回る時計の針。

 

 
 ブロロロロロロロロロ……




 その「音」は、予告もなくやって来た。


 朝の静かな通りを震わすように響いた排気音。


 近づいてくる、——巨大な物体。




 ゴォォォォォォォォォォォ…




 横断歩道の前に立っていた。


 轟音を立てながらものすごいスピードで回転する車輪。


 アスファルトが摩擦で焦げるように焼けた臭いを引き連れてくる。


 止まる気配がない「それ」は、時間と時間の隙間を縫って、限界まで引き伸ばされた「空間」を切り裂くように、近づいてきた。


 凝視する視界。


 硬直する体。


 永遠にも思えるような「一瞬」は、交差点の真ん中を覆うように交錯した。


 風圧で髪が浮き上がる。


 その瞬間に、信号は青に切り替わった。





 目の前に通り過ぎたのは、一台のトラックだった。


 埃が巻き上げられ、視界の先に交錯した被写体が、路地の向こう側へと消えていった。



 「…嘘」


 そう思ったのは、本当に「それ」が、目の前にやって来るとは思わなかったからだ。

 半信半疑だった。

 心臓がドキドキしてる。

 
 本当に唐突だった。

 あの朝と同じように信号の前まで来て、「未来の現在」が近づくのを感じた。

 それ自体が奇妙だけれど、…なんていうんだろう…、急いで家に帰ろうと思っていたあの時のように、直前まで、交差点を渡れると思っていた。

 それほど、路地は静かだった。

 青になるのを待たなくても、進んでいけると感じるように。



 トラックは細い路地だというのにものすごいスピードだった。

 ブレーキなんてかけずに、減速する気配すらなかった。

 カーブミラーがないせいで、建物の影に隠れてよく見えないから、白線のギリギリまで近づかないと、左右を見渡せない。

 だから近づいたんだ。

 そうしたら、「音」が聞こえてきた。

 あの時に感じなかった、トラックの「気配」が。
 
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