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未来の研究
第52話
しおりを挟む「でも実際は、お前が生きとる「世界」があった」
亮平が『クロノ・クロス』の被験者になる前の「世界」こそ、本来あるべきはずの世界であり、「時間」であると言った。
そしてその世界で、私は結婚し、子供もいたのだと言った。
過去を変えてしまったことで、「そうなるはずだった」という未来が変わった。
私が生きているはずの未来が、失われたそうだ。
「被験者にされた俺は、事故を回避した後、なにごともなかったかのように生活を送ってた。せやけど、頭ん中に埋め込まれた電子コードは、いわば未来に通じるタイムカプセルみたいなもんやった。2つの世界を繋げるために、最初の世界での『メッセージ』として、未来の科学者にそれを届けたんや」
「どうやって?」
「よぉわからんが、クロノクロスが最初に開発された時、科学者はクロノクロスの内部に、ある特殊な電子スペクトルを内蔵したそうや。被験者になった俺は、もしも過去に情報を送信し、それを未来に持ち帰ってくることができれば、『クロノクロス』にアクセスすることができるコードを得ることができると言われた。そのコードを入手してアクセスすれば、変化する前と変化した後の2つの世界を、1つのデータグラフとして表すことができると言ったんや」
「でも、その科学者は、未来に帰ってきた亮平をどうやって見つけたの?だって、最初の世界の科学者と、過去が変わった世界での科学者は、例え同じ人物だったとしても「亮平を過去に送ったこと」を共有することはできないでしょ?」
「俺が、出向いたんや」
「出向いた?」
「正確には、出向かされたって感じか。ある日、電子新聞で見かけた特殊なマークに目が入った時、すぐに電話がかかってきた。クロノクロスの研究者たちは、過去に送った「被験者」を見つけ出すために、遠隔でスキャンできるコードも、被験者の頭ん中に植え付けてた」
「スキャンされたん?」
「そ!ピッて感じで」
そんな簡易的な…。
社会の中で必ず目にするであろう様々な媒体を使って、亮平がそれを見つけるように仕向けることで、脳の中に埋め込んだ識別用のコードがそれに反応する。
研究施設に呼び出された亮平は、事情もわからずに行ったそうだ。
そこで、色々な話を聞かされたみたいだった。
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