雨上がりに僕らは駆けていく Part1

平木明日香

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未来の研究

第47話

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 その言葉は、ほんの冗談だった。

 何か言い返して来るかなと思い、笑いながら亮平を見る。

 だけどそこには笑顔がなかった。


 「スマンな」


 怒ってるわけじゃない。

 ひたすら、申し訳なさそうにしてる。

 その顔を見て婆ちゃんが心配そうに声をかけた。


 「まあ、男の子やし、素行が悪い時期もあるさかい、大目に見たって、カエちゃん」


 ああ、…うん。

 別にそんなつもりじゃなかったんだけど。

 なんかごめん。


 「いやぁしかし、婆ちゃんこの牛肉うまいわ!最高!」


 ごまかすように亮平はスプーンを動かし、バクバク夢中に食べている。

 私よりも2倍、…いや5倍くらいのスピードで完食しそうな勢いだ。


 「カエちゃん、今日はいつまでおるん?」


 そうだ。

 もう夜も遅いんだ。

 ひとまず家に帰るっていうのもアリかもしれない。

 でも話はまだ途中だったから、もう少しいると伝えた。


 ご飯を食べたあと、後片付けをして、亮平はシャワーを浴びに行った。

 私は私でコタツに戻り、夜のニュースを見ながらスマホにかかっていた電話やメールの対応に追われていた。



 『姉ちゃん、今どこ!?(メール文)』



 …やばい。


 スマホを見たら着信履歴が9件にもなってた…。


 確実に怒られるパターンだ。

 梨紗ならまだいいが、母さんに絶対怒られる。

 連絡もせずに夜が来て、パーティーはもうとっくに始まってなきゃいけない時間、っていうことを改めて考えると、背筋が凍った。


 パーティーのことを疎かに考えていたのは、やっぱりまだ、ここが現実じゃないってことを頭の片隅に捉えていたからだ。

 そのせいもあって、自分が元の世界に帰れるかどうかの問題以外は、さして重荷にはならないとタカを括っていた。

 元の世界に帰れれば全て解決する…はずなのだが、冷静に考えると、今の状況はとにかくまずい。

 おまけに翔君からもう一度電話がかかってきてた。


 …どうすればいいんだ…


 私の気も知れず、亮平は首にタオルをかけて、「いい湯だったわぁ」と呑気に帰ってきた。


 「どうかしたんか?」

 「どうもこうもないわ。あんたのせいで親に怒られるわ、これ」

 「パーティーのこと?俺は関係ないやろ…。ここに来る言うたんはお前なんやし」


 そりゃそうだが、結局なんの役にも立ててないじゃないか。

 パーティーとか、翔君のこととか、私がほったらかしている「問題」自体は、結局過去の世界のものだ。

 一度通った道なんだから、わざわざ折り返す必要はない。

 そんな軽はずみな考えが間違いだった。

 パーティーをほったらかしている事自体は、元の世界に戻れれば解決する。

 でも実際は戻れてないし、戻れない。

 ほとんど詰んだ状態だ…



 亮平、なんとかして。


 「とりあえず、電話しときぃな」


 電話したって、なんて言えばいいかわからない。

 亮平ん家にいるって言えばいいのか?



 …いやいや、事態が余計悪化するだけだ。
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