雨上がりに僕らは駆けていく Part1

平木明日香

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未来の研究

第46話

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 パーティーを放ったらかして、亮平ん家にいるってことを梨紗が知ったら、きっとたまげるだろうな。

 まだあんなヤンキーとつるんでんのかって、怒鳴るに決まってる。

 私の周りじゃ、亮平のことを毛嫌う人が多かったし、梨沙もその一人だった。


 「婆ちゃん、最近亮平悪いことしてないん?」

 「カエちゃんがちゃんと面倒見てくれとったらええんやけどねぇ」

 「あー、やっぱ私がいないとダメかぁ」

 「…キミたちなんでそんな上からなん?」


 それにしても、ただの悪ガキだった亮平とは思えないほど、米研ぎがさまになっている。

 そのままずっと様子を見てても、フライパンの手捌きや包丁の使い方、油を引く時のクイっという手首の回転まで、憎らしいほどに手際がいい。

 さすが、「50年分の知識」を持つ男…。



 「さ!出来た出来た!ご飯にしよ!」


 食卓に並べられたカレーと、婆ちゃんが昔買ってくれてた私専用のスプーン。


 まだあったんだ…。


 そう思いながら「いただきます」と手を合わせた。

 婆ちゃんは、ニコニコしてこっちを見てる。


 「いやぁ、それにしてもべっぴんさんになってなぁ」


 …ゴフッ。

 べっぴん…。

 そんな言葉を頂けるとは、ありがたき幸せである。


 「婆ちゃん、嘘ついたらあかんで」


 その横で真顔を決め込むバカ。

 足蹴りをかまして婆ちゃんの声を追った。


 「あんたがこうしてまたここにおることが、夢みたいやわ」

 「そんな大袈裟な」

 「大袈裟なわけあるさかい。あんたが来るとこの家も嬉しい言うとるわ」

 「まぁ…、私は歩くマイナスイオン言われとるしなぁ」

 「お前はマイナスイオンやのうてただの…痛ッ!」

 「あんたは黙っとき!」

 「亮平もなぁ、ずっと会いたがっとったで」

 「私に?」


 それは初耳だ。

 亮平を見ると「なんのこと?」みたいな表情を浮かべて、知らん顔している。


 「会いたくなさそうにしとるけど?」

 「恥ずかしがっとるだけよ」

 「婆ちゃんうるさい!」

 「一緒にまた遊びたい言うとったやん、あんた」


 「遊びたい」か。

 確かに。

 私も時々そう思う時があった。

 自然が豊かなこの地元で、私たちは色んなことをしてた。

 一時期は超デカイガラス製のケースにカブトムシをコレクションしていたり、川に出かけて鮎を一本釣りしたり、河川敷でどっちが遠くまで石切りができるか競い合ったり、グラウンドで一緒に野球をしたり。


 「私も、ここに来るんは好きやったよ。色んなことしてたよね。誰かさんが不良になるから、来づらくなったんやで」
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