雨上がりに僕らは駆けていく Part1
「隕石衝突の日(ジャイアント・インパクト)」
そう呼ばれた日から、世界は雲に覆われた。
明日は来る
誰もが、そう思っていた。
ごくありふれた日常の真後ろで、穏やかな陽に照らされた世界の輪郭を見るように。
風は時の流れに身を任せていた。
時は風の音の中に流れていた。
空は青く、どこまでも広かった。
それはまるで、雨の降る予感さえ、消し去るようで
世界が滅ぶのは、運命だった。
それは、偶然の産物に等しいものだったが、逃れられない「時間」でもあった。
未来。
——数えきれないほどの膨大な「明日」が、世界にはあった。
けれども、その「時間」は来なかった。
秒速12kmという隕石の落下が、成層圏を越え、地上へと降ってきた。
明日へと流れる「空」を、越えて。
あの日から、決して止むことがない雨が降った。
隕石衝突で大気中に巻き上げられた塵や煤が、巨大な雲になったからだ。
その雲は空を覆い、世界を暗闇に包んだ。
明けることのない夜を、もたらしたのだ。
もう、空を飛ぶ鳥はいない。
翼を広げられる場所はない。
「未来」は、手の届かないところまで消え去った。
ずっと遠く、光さえも追いつけない、距離の果てに。
…けれども「今日」は、まだ残されていた。
それは「明日」に届き得るものではなかったが、“そうなれるかもしれない可能性“を秘めていた。
1995年、——1月。
世界の運命が揺らいだ、あの場所で。
プロローグ
【第1章】未来から来た少年
整理できない時間
変わり果てた幼なじみ
2013年とクリスマス
50年後の世界
未来の研究
風の岬
第一次クロノプロジェクト
【第2章】新しい朝
星の降る夜
次元の狭間
未来の記憶
18.44m
【第3章】青い土地
運命の交差点
現在と過去
空と海と、トンネルの向こう
99%の先へ
【第4章】アナザーワールド
雨
1000年の邂逅
この世界のどこかいるキミへ
第一次タイムクラッシュ
【第5章】失われた時の中で
現在の岸辺
「今」を越えられるスピード
夏空
少年とヒーロー
【第6章】バッテリー
セカンド・キッド
キミがいる街
風の憧憬
明日への道
【第7章】須磨と海
1995.1.17
1秒後の昨日、1秒前の明日
世界と楔
死線
【第8章】一瞬の風
墓標のない土地
位置について、よーい
スタートライン
GO
【第9章】世界が終わる前に
風の通り道
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旅立ちの日に
試合
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