上 下
714 / 744

714砦の戦い1

しおりを挟む
******(砦の隊長)

「隊長、このままでは、砦がもちません。」

大森林から溢れ出した魔獣は砦の壁を崩し始めている。
かなりの強度を持つ壁だろうと、これ以上の攻撃を受ければ崩壊するだろう。

マクニス王国から援軍を派遣する光弾は上がっている。
しかし、連続して発生した内乱。かなりの兵士が倒れている中、この大群を抑えるだけの部隊を編成できるのだろうか。

20名しかいない部下達も頑張り、魔法弾を打ち続けて来たが在庫は切れた。
破裂する魔法陣が描かれているコアを球として敵にぶつける使い捨ての魔道具だ。
高級すぎて、それなりにしか用意されていない。

「ここまでか。」

敵が人間なら、交渉次第では降伏もあり得るが、魔獣相手では待っているのは死。
ならば、一匹でも多く対峙するのみ。
隊長が部下に号令を掛けようとした時

「隊長、援軍です。援軍が来ました。」

駆け込んできた部下の後ろには、バラン将軍配下、第三騎士団オリバー大隊長の姿が。

「オリバー隊長。来てくれたのか。しかし、その恰好は。」

オリバー隊長も、その後ろに居る騎士団も、まるで冒険者だった。

「説明は後回しだ。魔法弾を扱える者は居るか。魔獣にぶつける。」
「居ますが、もう球は在りません。」
「球は持ってきている。バルク殿、ゴルゴ殿、受け取った魔法弾を撃ち込む指示に回ってくれ。」

バルク・ギルドマスターとゴルゴ達は兵士に連れられて城壁へを移動した。

「攻撃魔法を使える者は城壁より攻撃を仕掛けろ。
 残った者は、砦の者達に食料とポーションを供給したのち、体力を温存しておけ。
 無理はするな。マクニス王国から援軍が来るまで持ち堪えろ。」

オリバー隊長の指示で全員が動き始めた。
早すぎるとは思ったが、やはりマクニス王国からの援軍という訳では無いのか。
しかし、これで少しは希望が見えてきた。


******(ゴルゴ)

「先ずは、この緑の球をゴブリンやオーク、オーガに向かって撃ち込む。」

俺が兵士に話しても

「あの集団の何処に向かって打てば良いのでしょうか。」

魔獣で埋まっている大地を見て、兵士が困っていた。
確かに、この中で目標を見つけるのは難しいだろう。しかし、奴等の特徴を知っていれば見分けは付く。

「あそこの岩場から右に100m。出来るか。」
「任せてください。」

流石は兵士だ。場所さえ指示すればその場所に的確に打つ。
当たった球が弾けると煙が広がると、ゴブリン達が周囲に居る魔獣を攻撃をしてでも煙から逃げていた。
それはオーク、オーガに対しても同じだった。
周囲に居た魔獣とぶつかり、そこで戦いが始まっていた。

「あの野郎、なんて物を渡してくれたんだ。効果てきめんじゃねぇか。
 良し、次はこの黒い球をウルフ系の魔獣に当てるぞ。」

黒い球を撃ち込むと、ウルフ系の魔獣の身動きが取れなくなっていた。
視覚と嗅覚に影響を与えているのだろうか。前足でしきりに顔を掻き始めた。
そこに後ろから来た魔獣が踏み潰し始め、またしても魔獣同士の戦いが始まった。
この2種類の球によって魔獣たちは混乱し、更に魔獣同士の争いが更に広がり始めていた。

「凄い、これだけの効果が出る薬は見たことがない。」

兵士も拓の作った薬の効果に驚いている。

「これは世界一の錬成術士が作ったんだ。この程度は当たり前だ。
 次は、赤い球を強い魔獣の居る場所に打ち込むぞ。
 合わせて、空を飛ぶ魔獣が近づいて来たら青い球をその中心に打ち込め。」

赤い球を撃ち込むと炎が広がり、青い球を撃ち込むと風の刃が周囲を襲った。

「魔獣同士が争っている所は無視しろ。同士討ちをさせておけ。
 砦に向かってくる魔獣だけに集中させる。」

俺の指示のもと兵士達は的確に球をぶつけ、更に兵士達の魔法攻撃もあり、砦への攻撃が弱まってきた。
下では砦の門が開き、オリバー隊長を先頭に魔獣への攻撃が始まる。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

公爵家三男に転生しましたが・・・

キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが… 色々と本当に色々とありまして・・・ 転生しました。 前世は女性でしたが異世界では男! 記憶持ち葛藤をご覧下さい。 作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので

sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。 早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。 なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。 ※魔法と剣の世界です。 ※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

追放シーフの成り上がり

白銀六花
ファンタジー
王都のギルドでSS級まで上り詰めた冒険者パーティー【オリオン】の一員として日々活躍するディーノ。 前衛のシーフとしてモンスターを翻弄し、回避しながらダメージを蓄積させていき、最後はパーティー全員でトドメを刺す。 これがディーノの所属するオリオンの戦い方だ。 ところが、SS級モンスター相手に命がけで戦うディーノに対し、ほぼ無傷で戦闘を終えるパーティーメンバー。 ディーノのスキル【ギフト】によってパーティーメンバーのステータスを上昇させ、パーティー内でも誰よりも戦闘に貢献していたはずなのに…… 「お前、俺達の実力についてこれなくなってるんじゃねぇの?」とパーティーを追放される。 ディーノを追放し、新たな仲間とパーティーを再結成した元仲間達。 新生パーティー【ブレイブ】でクエストに出るも、以前とは違い命がけの戦闘を繰り広げ、クエストには失敗を繰り返す。 理由もわからず怒りに震え、新入りを役立たずと怒鳴りちらす元仲間達。 そしてソロの冒険者として活動し始めるとディーノは、自分のスキルを見直す事となり、S級冒険者として活躍していく事となる。 ディーノもまさか、パーティーに所属していた事で弱くなっていたなどと気付く事もなかったのだ。 それと同じく、自分がパーティーに所属していた事で仲間を弱いままにしてしまった事にも気付いてしまう。 自由気ままなソロ冒険者生活を楽しむディーノ。 そこに元仲間が会いに来て「戻って来い」? 戻る気などさらさら無いディーノはあっさりと断り、一人自由な生活を……と、思えば何故かブレイブの新人が頼って来た。

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

無敵の力で異世界無双~ただし全裸~

みなみ
ファンタジー
下半身を露出したまま風呂で溺死した葉山宗一は、神様見習い少女シエルの手によって異世界ルナティカルへと転生したが、宗一にはなにやら不思議な力が備わってしまい……。異世界の常識やいざこざを全裸パワーでぶち破っていく異世界転生コメディー!

追放したんでしょ?楽しく暮らしてるのでほっといて

だましだまし
ファンタジー
私たちの未来の王子妃を影なり日向なりと支える為に存在している。 敬愛する侯爵令嬢ディボラ様の為に切磋琢磨し、鼓舞し合い、己を磨いてきた。 決して追放に備えていた訳では無いのよ?

処理中です...