異世界遺跡巡り ～ロマンを求めて異世界冒険～

691不満

「ちょっと拓ちゃん、このままで良いの。
　拓ちゃん達の功績が、全て私達の物になってしまうわよ。」
「確かに、皆を救ったのは拓殿と浩司殿の力だと言うのに。
　町作りを始めただけの私の成果となってしまう。
　ましてや、情けは人の為ならずなんて、初めて聞いた言葉だぞ。」

サリナ姫とシュミト公爵が練成術で魔道具のコアを作っている俺の所にやって来て申し訳なさそうにしている。
逆に治世という面倒事を押し付ける様な形になってしまい申し訳なく思っていた。

「俺の事は別に気にしないでください。
　皆さんには面倒な重しになってしまうかも知れませんが、開拓を進めるのに信頼関係が有ったほうが良いでしょう。」

俺としては功績を残して注目されるのは面倒なだけで、出資した分が利子がついて戻ってくるなら問題ない。
しかし

「拓、私は良くないからな。」

何度目かの開発資材を運んでいたヨギ魔道師が戻ってきた。
ヨギ魔道師が馬車で移動したのは初めだけで、後は浩司が操作するハングライダーで材料の輸送を行っている。
確か、今回の輸送で建物の資材の運搬作業は完了するはずだ。

「どうも、私が斧ちゃんだなんて思われているみたいだ。
　あんな出鱈目な獣人救出をしただけでなく、
　毒を撒いて国と神殿を潰そうとし、大量のゾンビを国にぶつけたんだぞ。」

ヨギ魔道師は本当に嫌がっているみたいだ。

「毒は、謎の２人組が行った事になっているかと。」
「こんな事をしでかす人間が何人も居ると考える訳無いだろう。
　毒男だぞ。第２のグリム大魔道師と呼ばれるのならともかく、毒男だぞ。」

２度も毒男と言うなんて、問題はそこだったのか。俺も嫌だが・・・

『確かに第２の儂なら嬉しがると思うが、毒男ではな。』
『これは不味いにゃ。せっかくの拓の二つ名が取られてしまうにゃ。』

余計な所でグリムとヤマトが言葉を挟んでくる。

「私が斧ちゃんで、剣君はシュミト公爵ではないかと噂になっているみたいだな。
　ＯＺとの世界旅行をする為にも、お前達２人が目立つよりは良いが、面倒を押し付ける相手も思いつかん。
　大体、こんな事を出来る様な人物なんて、他にグリム大魔導士くらいではないか。」

ＯＺとの世界旅行って・・・
そんなヨギ魔道師に、そっとケーキと紅茶を差し出すと
直ぐに食べ終え、お代わりを要求された。

しかし、剣君と斧ちゃんの中身か・・・好き放題やり過ぎたか。
まさか、国の一大事になってしまったとは。
獣人の人達が余計な事は言わないと思うが、変に目を付けられても邪魔なので何か手を打った方が良いだろう。

俺としては、このままヨギ魔導士が斧ちゃんになってくれれば助かるが・・・無理だな。
何か考える必要が有るが、良い案はないので後回しで良いだろう。