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678クルアの町

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『結界が張られておるな。』
「張られているね。」
「拓ちゃん、何をのん気に言っているんだよ。どうする力づくで結界を破るか。」

城から抜け出ようとしたが、上空には結界が張られていた。
それ程強い結界では無いので、浩司の魔力なら簡単に破壊できるが敵に手の内を見せるのは止めておきたい。
もしかすると、この結界を破る事で侵入者の位置を特定するのが目的なのかもしれない。
正直、弱過ぎて人の出入りを止めるためとは考え難い。
城門の方へと回ってみたが、兵士が完全に見張っていて蟻の這い出る隙も無い。
しかし、城壁は只の壁みたいだ。

土魔法と練成術を合わせて城壁に穴を開け、外に出た所で穴を塞いでおく。

市街地だと夜中でも大勢の兵士達が警戒をしていそうなので、町の裏側へと移動する事にした。
城から遠ざかると、急に街並みが酷くなりプレハブ小屋が続いている。
そして、ジレット王国に来てから初めて獣人達の姿を見た。

「こんな所に獣人が住んでいたんだな。」
『今にも潰れそうな建物にゃ。』
『ギリス教の影響じゃろうが、ここまで酷いとは…』

見かける獣人達は、まともな生活も出来ていないのが一目で分かる。

「拓ちゃん、何か出来る事は無いのか。」
「俺だって何とかしたいけど、今は無理だよ。」

残念だが、ジレット王国を抜けだしギリス教の聖地、クルアの町へ向かった。



ジレット王国から兵士が派遣されているみたいで、町への入口は厳重な検問がされている。
俺達はそれを無視して、夜中の内に壁を乗り越えて町に入った。

入って驚いたのは、町の中心にある巨大な女神像。
町の中からなら、何処からでも女神像を見る事が出来そうだ。
女神像の周辺が神殿になり、町の正門から神殿までは巨大な道が通っており、参道となっている。
俺達は朝日が昇るまで身を隠し、人々が活動を始めるのに合わせて神殿へと向かう事にした。
ヤマトは姿を消して俺の頭の上に乗っている。

朝も早いのに、参道には多くの信者の姿。
流れに沿って進むと、白い大理石で出来上がった神殿が有り、
一般人はその手前で神に対し祈り、その先には特別に許された者だけが入る事を許されていた。

俺達は、祈るポーズだけを行い、その後は町の散策を始めた。
規則正しく揃った街並みで、綺麗に出来上がった町だった。
当り前だが、何処にも獣人は居ない。
俺は、光魔法で太った子供に変身している。
歩いていると、町中にも兵士が目を光らせているからだ。
体の大きな男と子供の組み合わせを見つけると確認を行っている。
俺達は一旦は目を向けられるが、俺の太った体を見ると確認まではされない。


暗くなった所で、仮面を被り神殿に忍び込んだ。
目的は、中心の女神像。
この女神像を中心にして、神殿の上空はシールドで覆われている。
神殿から先も兵士達によって警備がされているが、気配を消し建物の影に隠れながら進む俺達は見つからなかった。
更に神殿の奥へと進むと人の数は減っていく。
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