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658脱出

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「サリナ様は何を言っているのです。彼等兵士は、王族や貴族を守るのが仕事。
 彼の為に、王族を危険にさらす訳にはいきません。」

さっき、俺を突き飛ばそうとした貴族が話けていた。
黙ってろと言いたいが、言っている事は正しい。

「サリナ様、私が彼に付き添います。
 ここから、脱出するとしても私では足手まといになるでしょう。
 それに、王族が逃げ出したとなれば、こちらを調べる事は無いかも知れません。」

綺麗な服を着た年配の婦人が丁寧にお辞儀をしてサリナ姫に話しかける。

「その姿は、剣君と斧ちゃんね。
 私はドレーヌと申します。どうか国王様や王子様、そしてサリナ様の事を宜しくお願いします。」

ドレーヌ夫人は俺達に頭を下げる。

「分かりました。兵士を宜しくお願いします。
 それから、これを。苦しむ事は有りません。
 ですが、脱出したら戻ってきますので、最後まで粘って下さい。」

渡したのは錠剤を2つ・・・。
ドレーヌ夫人は受け取ると、「ありがとう」と言って優しく微笑んだ。
サリナ姫は、「ドレーヌ夫人」と言って抱きつくと、ドレーヌ夫人は優しくサリナ姫の背中を撫で

「サリナ様。こんなに素晴らしい騎士が付いているのです。きっと大丈夫。
 無事に脱出する事を祈っております。」

ゆっくりと、自分の体からサリナ姫を離す。

「ドレーヌ様、私も残ります。これでも少しは力になれます。」

先程の、ハイオーガと戦っていた貴族だった。

「シュミト公爵、ありがとうございます。
 ですが、ここは私1人で大丈夫。貴方には皆さんの護衛をお願いします。」

シュミト公爵は、何とも言えない表情で、頷いていた。
片腕を失ったバラキエ侯爵も、俺達と一緒に脱出を試みる。

塔への入口で毒を撒き散らしてきたからか、未だ敵は来ていない。

「先に、これを飲んでください。
 ここに来るまで、毒を撒いてきました。その解毒剤です。」

貴族が何かを言おうとしたが、国王、王子、サリナ姫がそのまま飲むと渋々と飲んでいた。
バラキエ侯爵も何も言わずに薬を飲んだ。

塔の階段を降りて行くと、途中から急にばら撒いてきた痺れ薬と眠り薬が充満している。
その中を走り抜けていくと、薬が切れた所に敵が待ち構えていた。

「ライトニング」

既に塔から離れ、ある程度の魔法が使えるようになっている。
浩司の雷魔法が炸裂し、敵が怯んだ間にバラン将軍が斬りかかり、文字通り道を切り開いて行った。
殿を務めてくれているのはシュミト公爵とバラキエ侯爵

「俺とバラキエ侯爵で殿を引き受ける。バラン将軍達は先方を頼む。」

正直、片腕になったバラキエ侯爵を殿に置くのはどうかと思ったが、

「片腕になろうと、お前達よりまともな働きは出来る。」
「任せて貰って大丈夫だ。信用しろ。」

議論している時間も無く、シュミト公爵を信じてバラキエ侯爵が殿を務めている。
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