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640収穫
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特に何もおきずに、1ヶ月が経った。
俺は更に光の魔道結晶に魔法陣を描き終え、魔道具を作り上げた。
「拓ちゃん、魔道具作りで1ヶ月間 部屋に篭りっきりだったろう。
一段落着いた事だし、皆で果樹園に行かないか。」
浩司の誘いに乗って、久しぶりに家の外に出た。
この1ヶ月、食事、トイレ以外で自分の部屋からも出ていない。
その食事ですら自分の部屋で済ませる事が多かった。
護衛任務を引き受けていると言うのに、逆にサリナ姫やヨハン王子から心配されてしまう始末だ。
「一応、考えていた物は作り終えたので、これからは今まで通りに生活しますよ。
それより、果樹園に何が有るんです?」
「それは、着いてからのお楽しみね。」
サリナ姫が面白そうにしているので、これ以上は聞かないが、そろそろ初めての収穫時期だ。
果樹園に着くとカーン夫婦や子供達が出迎えてくれた。
他にもニックさん、パウロさん、ヨーゼフさん、ティムさんと経営陣も勢揃い。
そして、案内された先には
「この果樹園で初めて生った果物です。先ずはオーナーが1つ目の果物を採ってください。」
ニックさんがそう言うと、浩司が肩車をして熟れた果物の下に俺を運んでくれる。
一番初めの収穫を行うと、皆が拍手をしてくれた。
「オーナー、皮ごと食べれるんで、一口どうぞ。」
カーンさんに進められ、そのまま一口頬張ると果肉は瑞々しく、口の中に甘い汁が弾ける。
「甘い、凄く瑞々しくて甘いよ。皆、本当にありがとう。
果樹園での初めての収穫は大成功だ。」
俺の言葉に歓声が上がり、皆での収穫が始まった。
サリナ姫やヨハン王子はもちろん、バラン将軍やガゼルス将軍も子供達を肩車して収穫を手伝ってくれた。
小さい子供達も、収穫した果物を綺麗に拭いて箱に並べている。
しかし、アークやクリーム、OZのメンバーは収穫を楽しみながらも、ソワソワしているのは何故だろう。
お昼に、皆でお握りを食べた後、収穫は果樹園の人達に任せ、カーンさんに別の場所へと案内された。
「これって、王の木と王妃の木だよね。1ヶ月前は花だったと思ったけど。」
それに、どちらも実が鈴生りだ。
上手く育てて数個収穫できれば良いと聞いていたのだが・・・
「記載された育て方でも、収穫は秋になるとなっていました。
与えていた土の魔力の影響としか考えられません。」
栄養に合わせて付ける実の数を調整すると言っていたので、十分な栄養が有ったと言う事か。
しかし、実が生るには早いだろう。
グリムに言われて土地を調べてみると1ヶ月前に、たっぷりと土に与えた魔力がかなり少なくなっている。
『多過ぎる土の魔力が、実の方へと供給された結果かも知れんな。
農業の分野については、儂は素人じゃ。
カーンにじっくりと調べてもらうのも良かろう。』
カーンさんによると、既に十分に熟しているらしい。
後ろを見ると、涎を垂らしそうな冒険者の集団。
「収穫をしましょうか。」
既に脚立まで用意していて、待ったは出来ないだろう。
午前中の収穫で、妙にソワソワしていたのは、この為だったのか。
王の実は、巨大な胡桃の様で、硬い殻の中には蜜が詰まっている。
王女の実は、メロンほどのサイズで薄皮の赤い実だ。
ずっしりと重い王の木の実を試しに割ってみると、中には大量の蜜。
漂う上品な甘い香り。ひと舐めすると蜂蜜に近いがもっと濃密だが後味がスッキリしている。
瓶に移し終え、残った殻を皆に渡すと付いている蜜を指で舐め
「凄い、上品な甘さだ。流石は王の実。」
「シロップみたいな感じだと思っていたけど、格が違うな。」
「紅茶に混ぜて飲んでみたいわ」
「ちょっと、あんた達、何で殻を直接舐めているのよ。」
「もう指でも掬えないだろ。」
「だからって、それは無いでしょ。」
子供達が居なくて良かった。この人達、本当に意地汚さ過ぎる。
事前にエチゴさんに収穫した実について相談していたが、こんなに大量に収穫出切るとは思わなかった。
これなら木を送ってくれたブルネリ公爵や第3騎士団の人達に返礼し、クロイツ伯爵やロダン侯爵にもプレゼント出来る。
とりあえず、収穫した実はアイテムボックスにしまったのだが、皆から無言の視線・・・
「一応、付き合いがあるので配らない訳にはいかないので。
珍しいので、その辺を考慮してから扱いを決めようかと。」
俺がそう言うと、「そうだよな。」「確かに必要よね。」「きっと喜ぶぞ。」と皆は笑って答えているが
目だけは笑わず、俺の腕にはめたアイテムボックスを見ている。
今夜にでもニックさん、エチゴさんを交えて実の対応方法を決めてしまおう。
俺は更に光の魔道結晶に魔法陣を描き終え、魔道具を作り上げた。
「拓ちゃん、魔道具作りで1ヶ月間 部屋に篭りっきりだったろう。
一段落着いた事だし、皆で果樹園に行かないか。」
浩司の誘いに乗って、久しぶりに家の外に出た。
この1ヶ月、食事、トイレ以外で自分の部屋からも出ていない。
その食事ですら自分の部屋で済ませる事が多かった。
護衛任務を引き受けていると言うのに、逆にサリナ姫やヨハン王子から心配されてしまう始末だ。
「一応、考えていた物は作り終えたので、これからは今まで通りに生活しますよ。
それより、果樹園に何が有るんです?」
「それは、着いてからのお楽しみね。」
サリナ姫が面白そうにしているので、これ以上は聞かないが、そろそろ初めての収穫時期だ。
果樹園に着くとカーン夫婦や子供達が出迎えてくれた。
他にもニックさん、パウロさん、ヨーゼフさん、ティムさんと経営陣も勢揃い。
そして、案内された先には
「この果樹園で初めて生った果物です。先ずはオーナーが1つ目の果物を採ってください。」
ニックさんがそう言うと、浩司が肩車をして熟れた果物の下に俺を運んでくれる。
一番初めの収穫を行うと、皆が拍手をしてくれた。
「オーナー、皮ごと食べれるんで、一口どうぞ。」
カーンさんに進められ、そのまま一口頬張ると果肉は瑞々しく、口の中に甘い汁が弾ける。
「甘い、凄く瑞々しくて甘いよ。皆、本当にありがとう。
果樹園での初めての収穫は大成功だ。」
俺の言葉に歓声が上がり、皆での収穫が始まった。
サリナ姫やヨハン王子はもちろん、バラン将軍やガゼルス将軍も子供達を肩車して収穫を手伝ってくれた。
小さい子供達も、収穫した果物を綺麗に拭いて箱に並べている。
しかし、アークやクリーム、OZのメンバーは収穫を楽しみながらも、ソワソワしているのは何故だろう。
お昼に、皆でお握りを食べた後、収穫は果樹園の人達に任せ、カーンさんに別の場所へと案内された。
「これって、王の木と王妃の木だよね。1ヶ月前は花だったと思ったけど。」
それに、どちらも実が鈴生りだ。
上手く育てて数個収穫できれば良いと聞いていたのだが・・・
「記載された育て方でも、収穫は秋になるとなっていました。
与えていた土の魔力の影響としか考えられません。」
栄養に合わせて付ける実の数を調整すると言っていたので、十分な栄養が有ったと言う事か。
しかし、実が生るには早いだろう。
グリムに言われて土地を調べてみると1ヶ月前に、たっぷりと土に与えた魔力がかなり少なくなっている。
『多過ぎる土の魔力が、実の方へと供給された結果かも知れんな。
農業の分野については、儂は素人じゃ。
カーンにじっくりと調べてもらうのも良かろう。』
カーンさんによると、既に十分に熟しているらしい。
後ろを見ると、涎を垂らしそうな冒険者の集団。
「収穫をしましょうか。」
既に脚立まで用意していて、待ったは出来ないだろう。
午前中の収穫で、妙にソワソワしていたのは、この為だったのか。
王の実は、巨大な胡桃の様で、硬い殻の中には蜜が詰まっている。
王女の実は、メロンほどのサイズで薄皮の赤い実だ。
ずっしりと重い王の木の実を試しに割ってみると、中には大量の蜜。
漂う上品な甘い香り。ひと舐めすると蜂蜜に近いがもっと濃密だが後味がスッキリしている。
瓶に移し終え、残った殻を皆に渡すと付いている蜜を指で舐め
「凄い、上品な甘さだ。流石は王の実。」
「シロップみたいな感じだと思っていたけど、格が違うな。」
「紅茶に混ぜて飲んでみたいわ」
「ちょっと、あんた達、何で殻を直接舐めているのよ。」
「もう指でも掬えないだろ。」
「だからって、それは無いでしょ。」
子供達が居なくて良かった。この人達、本当に意地汚さ過ぎる。
事前にエチゴさんに収穫した実について相談していたが、こんなに大量に収穫出切るとは思わなかった。
これなら木を送ってくれたブルネリ公爵や第3騎士団の人達に返礼し、クロイツ伯爵やロダン侯爵にもプレゼント出来る。
とりあえず、収穫した実はアイテムボックスにしまったのだが、皆から無言の視線・・・
「一応、付き合いがあるので配らない訳にはいかないので。
珍しいので、その辺を考慮してから扱いを決めようかと。」
俺がそう言うと、「そうだよな。」「確かに必要よね。」「きっと喜ぶぞ。」と皆は笑って答えているが
目だけは笑わず、俺の腕にはめたアイテムボックスを見ている。
今夜にでもニックさん、エチゴさんを交えて実の対応方法を決めてしまおう。
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