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633打ち明け話
しおりを挟むマクニス王国に戻ると、元気になったヨギ魔道師が出迎えてくれたのだが
「この度は、私の為に拓殿を危険に晒し申し訳なかった。浩司にも迷惑を掛けた。」
普段とは違う対応に戸惑ったが、俺が元通り健康になった事を伝える。
「そうか、そうか。本当に良かった。
この先、老いぼれの為に自分自身を危険に晒すな。
私を切り捨てても、確実に生き残る方法を選べ。」
かなり重い事を言われてしまった。
正直、自分の中に優先順位は存在する。
ただ、この世界で知り合った大切な仲間を助ける為に足掻く事を止める気はない。
バラン将軍とオリバー隊長は城に待機していると言うので、俺達が戻ってきたと伝えて貰う事にした。
サリナ姫は城に、ヨハン王子、ガゼルス将軍は自分達の屋敷に居ると言うので、3人にも無事だと伝えて貰うようお願いした。
「バラン将軍とオリバー隊長が戻って来てから話をさせて貰います。」
ヨギ魔道師が俺の言葉に頷いてくれたので、
ヨギ魔道師の状態を確認させてもらった後、秘薬を使った騎士の様子を見させてもらった。
秘薬を使ったのは13名。
8名は無事に復帰できる状態だったが、5名は騎士を続けるのは難しいだろう。
それどころか、3名は手足に麻痺が残り普通の生活をするのも大変だと思う。
何とか出来ないかと俺も出来る限りの治療を行ってみたが、少しの改善しか出来なかった。
これが、秘薬を使い強制的に治療を行った代償なのか。
『拓でもこれ以上の治療は無理じゃ。』
今の俺に出来る限界なのか。
もしかして、3人にとっては秘薬を使った事で辛い人生を歩ませてしまうのかもしれない。
「俺の力では、これ以上の改善は出来ません。申し訳ありません。」
俺は謝り、少しでも楽になるよう魔力同調を行ったマッサージを行うと
「何を謝っているのです。正直、ハイオークにやられた時は死んだと思いました。
こうして、生きていられるのも拓殿のお陰です。
ありがとうございました。
元騎士団と言うのは、かなり信用されます。
普通に生活するのは難しいかもしれませんが大丈夫ですよ。」
そんな簡単な話では無いだろう。
俺が口を挟む事では無い事は十分分かってはいるが
「もし良ければ、ラグテルの町にあるカレー工場で働きませんか。
思ったより引き合いが多くて、人を増やしたいと思っていましたが、外部にレシピが漏れない様に信用出来る人しか雇えません。
騎士団の皆さんなら読み書き、計算も出来るので来て頂けると本当に助かります。
仕事内容は検討する必要が有りますが、考えてもらえないでしょうか。」
今後の提案をさせてもらった。
本来なら、仕事を取りまとめてくれているニックさんに相談する必要があるが、後で謝るしかないだろう。
騎士団に戻れない5人には後で回答をもらう事にし、魔力同調を行ったマッサージを続けさせてもらった。
バラン将軍達が寄宿舎に戻ってきたのは2日後。ブルネリ公爵も一緒だった。
「拓殿、無事に復帰されて良かった。
第3部隊も拓殿の用意してくれた薬のお陰で、あの戦いで誰も死なずに済んだ。」
バラン将軍からの礼を受けた後、個室へと移動した。
ブルネリ公爵、ヨギ魔道師、バラン将軍、オリバー隊長、アーク、クリーム、そしてOZ。
全員が揃った所で、俺はアイテムボックスからグリムの意識が宿った黒い本を取り出した。
「今回、攻撃を仕掛けて来た魔道師が
『我が分身の弟子なら、我が弟子と同じ事。』
と言って、ヨギ魔道師に呪いを掛けました。」
ブルネリ公爵にも説明をすると言っておいたので、事前にバラン将軍からこの話は聞いていたみたいだ。
他のメンバーは初めて聞いたので、バラン将軍が戦いの状況を簡単に説明してくれた。
「この本が、俺と浩司の師匠であるグリムです。
今回、戦いを仕掛けて来たグリムの意識の一部が宿っています。」
OZのメンバー以外は、俺の言葉に驚いている。
「どうやら、OZは全てを知っているみたいだな。
拓殿、浩司殿、2人の師匠であるグリム殿とは、あのグリム大魔道師なのだろうか。」
皆が落ち着いた所で、ブルネリ公爵が聞いてきた。
「そうです。皆さんとの話しに出て来たグリム大魔道師です。
そして、戦いを仕掛けて来たのはグリム大魔道師本人です。」
俺の回答に「やはりそうか」とブルネリ公爵が呟いていた。
他の人も、グリム大魔道師を受け止めていた。
とんでもない事を話していると自覚しているが、全員が素直に受け止めているのが不思議に思ってしまう。
気になる所だが、話しを進めさせてもらう。
「先に言っておきますと、この本に意識を移した300年ほど前には
グリムに獣人に対する差別的な意識は有りませんでした。
彼がナターシャ達と行動を共にし、何故300年も生きていられるのかは謎です。
ただ、オリジナルは全盛期以上の力を持っています。」
魔力量は俺や浩司の方が上だが、魔力を蓄えられるガリウム鉱石の腕輪を付け
木属性以外の魔力を持ち、大量の魔力を使っても体への反動が少ない。
かなりチートな存在だと説明させてもらうと
「流石はグリム大魔道師だ。」
敵だというのにヨギ魔道師がグリムの事を褒めている。
「やはり、それだけの魔道師だったか。
魔道師がグリム大魔道師本人だとすると、ブライは剣王ブライ本人かもしれないな。」
ブルネリ公爵がヨギ魔道師の言葉を流して、話しを進める。
問題は、グリムもブライも弱点が見つからない事だ。
結局、俺達が強くなるしか打つ手が無い。
「この度は、私の為に拓殿を危険に晒し申し訳なかった。浩司にも迷惑を掛けた。」
普段とは違う対応に戸惑ったが、俺が元通り健康になった事を伝える。
「そうか、そうか。本当に良かった。
この先、老いぼれの為に自分自身を危険に晒すな。
私を切り捨てても、確実に生き残る方法を選べ。」
かなり重い事を言われてしまった。
正直、自分の中に優先順位は存在する。
ただ、この世界で知り合った大切な仲間を助ける為に足掻く事を止める気はない。
バラン将軍とオリバー隊長は城に待機していると言うので、俺達が戻ってきたと伝えて貰う事にした。
サリナ姫は城に、ヨハン王子、ガゼルス将軍は自分達の屋敷に居ると言うので、3人にも無事だと伝えて貰うようお願いした。
「バラン将軍とオリバー隊長が戻って来てから話をさせて貰います。」
ヨギ魔道師が俺の言葉に頷いてくれたので、
ヨギ魔道師の状態を確認させてもらった後、秘薬を使った騎士の様子を見させてもらった。
秘薬を使ったのは13名。
8名は無事に復帰できる状態だったが、5名は騎士を続けるのは難しいだろう。
それどころか、3名は手足に麻痺が残り普通の生活をするのも大変だと思う。
何とか出来ないかと俺も出来る限りの治療を行ってみたが、少しの改善しか出来なかった。
これが、秘薬を使い強制的に治療を行った代償なのか。
『拓でもこれ以上の治療は無理じゃ。』
今の俺に出来る限界なのか。
もしかして、3人にとっては秘薬を使った事で辛い人生を歩ませてしまうのかもしれない。
「俺の力では、これ以上の改善は出来ません。申し訳ありません。」
俺は謝り、少しでも楽になるよう魔力同調を行ったマッサージを行うと
「何を謝っているのです。正直、ハイオークにやられた時は死んだと思いました。
こうして、生きていられるのも拓殿のお陰です。
ありがとうございました。
元騎士団と言うのは、かなり信用されます。
普通に生活するのは難しいかもしれませんが大丈夫ですよ。」
そんな簡単な話では無いだろう。
俺が口を挟む事では無い事は十分分かってはいるが
「もし良ければ、ラグテルの町にあるカレー工場で働きませんか。
思ったより引き合いが多くて、人を増やしたいと思っていましたが、外部にレシピが漏れない様に信用出来る人しか雇えません。
騎士団の皆さんなら読み書き、計算も出来るので来て頂けると本当に助かります。
仕事内容は検討する必要が有りますが、考えてもらえないでしょうか。」
今後の提案をさせてもらった。
本来なら、仕事を取りまとめてくれているニックさんに相談する必要があるが、後で謝るしかないだろう。
騎士団に戻れない5人には後で回答をもらう事にし、魔力同調を行ったマッサージを続けさせてもらった。
バラン将軍達が寄宿舎に戻ってきたのは2日後。ブルネリ公爵も一緒だった。
「拓殿、無事に復帰されて良かった。
第3部隊も拓殿の用意してくれた薬のお陰で、あの戦いで誰も死なずに済んだ。」
バラン将軍からの礼を受けた後、個室へと移動した。
ブルネリ公爵、ヨギ魔道師、バラン将軍、オリバー隊長、アーク、クリーム、そしてOZ。
全員が揃った所で、俺はアイテムボックスからグリムの意識が宿った黒い本を取り出した。
「今回、攻撃を仕掛けて来た魔道師が
『我が分身の弟子なら、我が弟子と同じ事。』
と言って、ヨギ魔道師に呪いを掛けました。」
ブルネリ公爵にも説明をすると言っておいたので、事前にバラン将軍からこの話は聞いていたみたいだ。
他のメンバーは初めて聞いたので、バラン将軍が戦いの状況を簡単に説明してくれた。
「この本が、俺と浩司の師匠であるグリムです。
今回、戦いを仕掛けて来たグリムの意識の一部が宿っています。」
OZのメンバー以外は、俺の言葉に驚いている。
「どうやら、OZは全てを知っているみたいだな。
拓殿、浩司殿、2人の師匠であるグリム殿とは、あのグリム大魔道師なのだろうか。」
皆が落ち着いた所で、ブルネリ公爵が聞いてきた。
「そうです。皆さんとの話しに出て来たグリム大魔道師です。
そして、戦いを仕掛けて来たのはグリム大魔道師本人です。」
俺の回答に「やはりそうか」とブルネリ公爵が呟いていた。
他の人も、グリム大魔道師を受け止めていた。
とんでもない事を話していると自覚しているが、全員が素直に受け止めているのが不思議に思ってしまう。
気になる所だが、話しを進めさせてもらう。
「先に言っておきますと、この本に意識を移した300年ほど前には
グリムに獣人に対する差別的な意識は有りませんでした。
彼がナターシャ達と行動を共にし、何故300年も生きていられるのかは謎です。
ただ、オリジナルは全盛期以上の力を持っています。」
魔力量は俺や浩司の方が上だが、魔力を蓄えられるガリウム鉱石の腕輪を付け
木属性以外の魔力を持ち、大量の魔力を使っても体への反動が少ない。
かなりチートな存在だと説明させてもらうと
「流石はグリム大魔道師だ。」
敵だというのにヨギ魔道師がグリムの事を褒めている。
「やはり、それだけの魔道師だったか。
魔道師がグリム大魔道師本人だとすると、ブライは剣王ブライ本人かもしれないな。」
ブルネリ公爵がヨギ魔道師の言葉を流して、話しを進める。
問題は、グリムもブライも弱点が見つからない事だ。
結局、俺達が強くなるしか打つ手が無い。
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