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625闇の中
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ゆっくりと人通りの少ない街道を進んでいると
「後方から、スピードを出してい近付いて来る人達が居るので、馬車を脇に寄せましょう。」
俺の探索魔法に随分と飛ばしている人達が引っかかった。
初めは魔獣に追われているのかとも思ったが、そういう事では無いらしい。
こういう時は、道を譲った方が問題が無いだろう。
肉眼でも確認出来る程の距離まで近づいて来ると、馬を全速力で走らせているのが分かる。
馬は全部で3頭。乗っているのは普通の市民だ。
何か有ったのだろうか。一応、全員が武器を持って構えていると
「どうしたんだ。お前達は何をしている。」
近付いて来る人達に声を掛けたのは、馬車を運転してくれている兵士。
馬を走らせていたのは、バラン将軍の部下だった。
「申し訳ありません。マクニス王国に敵が攻め込み、ヨギ魔道師が呪いをかけられました。
拓殿、どうかマクニス王国へお越し願えないでしょうか。」
元貴族の処刑時にナターシャ達が攻め込み、元貴族達は奪われ、ヨギ魔道師が敵の魔道師に呪いをかけられたのとの事。
ピース医師とトリス練成術師にも使いを出しているらしい。
俺と浩司でハングライダーで一気にヨギ魔道師の所へ行こうとしたが
「待つんだ。もしかすると、彼等がナターシャ達に追跡されているかもしれない。
サリナ姫とヨハン王子の警護を考えると、全員で移動したほうが良い。」
ガラに、サリナ姫とヨハン王子が狙われる可能性を指摘された。
馬車を反転させると、全員でマクニス王国へと向かう事になった。
迎えに来た兵士の1人には、馬車に乗ってもらい状況を説明してもらった。
「処刑場を守っていた、第一、第二騎士団では多数の死亡者が出ています。
我々第三部隊においては、死者は出ていませんが拓殿が用意してくれた秘薬を使用しました。
敵が引き上げて直ぐにマクニス王国を出たので、その後の状況までは分かりません。
そして、ヨギ魔道士ですが、私が最後に確認した時は体が黒く変色していました。」
『オリジナルめ、嫌な呪いをかけおって。
放置しておけば、生きながらにして体が腐ってしまうぞ。』
グリムが溜息を吐く様に話した。
ナターシャに呪いを掛けられた後、この呪いについてもグリムから教えてもらった。
『安心せい。今の拓なら治せるじゃろう。
殺すつもりなら、既に命はない。オリジナルからの小手調べといった所じゃ。』
マクニス王国に着くまで、光魔法を使える者は魔力を温存。
夜の移動は危険なため行わなかったが、朝空が明るく成りかけてから、夕暮れ時まで馬車を走らせた。
元貴族の囚人に逃げられ、騎士団に多くの犠牲が出たので仕方が無いだろうが王都の雰囲気が暗い。
「活気が無いですね。
ただ、自分達を守る騎士団が手も足も出なかった割には落ち着いていますね。」
「情報操作がされているのでしょう。
大方、騎士団によって敵は全滅。国の安全は守られた。と言った感じでしょうか。」
俺の疑問にエチゴさんが答えると、俺達を呼びに来た兵士が頷く。
騎士団が相手にならないと知られれば、パニックになる可能性が有るから仕方が無いか。
馬車はそのまま、騎士団の寄宿舎へと向かった。
街中とは違い、寄宿舎の中は緊張した空気で張り詰めていた。
直ぐに、光魔法が使えるガラやエチゴさん達は秘薬を飲んだ兵士の下へ
俺はヨギ魔道士の所へ案内された。
「拓殿、来てくれて助かった。」
部屋には、ブルネリ公爵の3男で宮廷魔道士のリチャードさんと長女で騎士団所属のハンナさんが居た。
国に使えている人達がここに居て良いのか気になったが、先ずはヨギ魔道士だ。
「他の宮廷魔道士が居たので、席を外してもらいました。ヨギ魔道士をお願いします。」
話を聞くと、光魔法を使える宮廷魔道士が呪いを打ち消そうとしたが効果が無く
状態が悪化しないように、回復魔法を掛け続けていたらしい。
『拓よ、直ぐに治療に入るぞ。』
ヨギ魔道士の体は黒く染まり、体中に膿が出ていた。
それを見たグリムの指示に従い、治療の準備に取り掛かる。
体中にポーションをかけ皮膚の状態を改善。
水晶の玉で出来る限り悪い気を吸いだし、ヨギ魔道士の魔力を整える。
後は、魔力同調を行った光の魔力で全身を満たし、浄化魔法をかけるだけだ。
『力むんじゃない。
全身に毒が回った兵士を助けたのと同じ要領じゃ。
ヨギ魔道士の方が魔力も良く練られていて魔力同調もし易いじゃろう。』
グリムの言葉に少し肩の力が抜けた。
自分で思っていた以上に、気負い過ぎていたみたいだ。
深呼吸をしてから、ヨギ魔道士の体に手を置き、光の魔力を流し込んでいく。
グリムが同調しきれていない魔力を体外に放出させるが、以前と違い殆どない。
「浄化」
すると、ヨギ魔道士から黒いオーラが噴出し俺の浄化魔法によって消滅していく。
後は、体の中に闇の魔力の残骸が残っていないか確認するだけだ。
『気を抜くな。何かがおかしい。』
グリムに言われた次の瞬間、ヨギ魔道士から何かが噴出し俺を覆った。
「グリム、一体何が起きたんだ。グリム、返事をしてくれ。」
グリムに問いかけても、何も返事が無い。
俺は何も無い闇の中に、ただ1人立っていた。
「後方から、スピードを出してい近付いて来る人達が居るので、馬車を脇に寄せましょう。」
俺の探索魔法に随分と飛ばしている人達が引っかかった。
初めは魔獣に追われているのかとも思ったが、そういう事では無いらしい。
こういう時は、道を譲った方が問題が無いだろう。
肉眼でも確認出来る程の距離まで近づいて来ると、馬を全速力で走らせているのが分かる。
馬は全部で3頭。乗っているのは普通の市民だ。
何か有ったのだろうか。一応、全員が武器を持って構えていると
「どうしたんだ。お前達は何をしている。」
近付いて来る人達に声を掛けたのは、馬車を運転してくれている兵士。
馬を走らせていたのは、バラン将軍の部下だった。
「申し訳ありません。マクニス王国に敵が攻め込み、ヨギ魔道師が呪いをかけられました。
拓殿、どうかマクニス王国へお越し願えないでしょうか。」
元貴族の処刑時にナターシャ達が攻め込み、元貴族達は奪われ、ヨギ魔道師が敵の魔道師に呪いをかけられたのとの事。
ピース医師とトリス練成術師にも使いを出しているらしい。
俺と浩司でハングライダーで一気にヨギ魔道師の所へ行こうとしたが
「待つんだ。もしかすると、彼等がナターシャ達に追跡されているかもしれない。
サリナ姫とヨハン王子の警護を考えると、全員で移動したほうが良い。」
ガラに、サリナ姫とヨハン王子が狙われる可能性を指摘された。
馬車を反転させると、全員でマクニス王国へと向かう事になった。
迎えに来た兵士の1人には、馬車に乗ってもらい状況を説明してもらった。
「処刑場を守っていた、第一、第二騎士団では多数の死亡者が出ています。
我々第三部隊においては、死者は出ていませんが拓殿が用意してくれた秘薬を使用しました。
敵が引き上げて直ぐにマクニス王国を出たので、その後の状況までは分かりません。
そして、ヨギ魔道士ですが、私が最後に確認した時は体が黒く変色していました。」
『オリジナルめ、嫌な呪いをかけおって。
放置しておけば、生きながらにして体が腐ってしまうぞ。』
グリムが溜息を吐く様に話した。
ナターシャに呪いを掛けられた後、この呪いについてもグリムから教えてもらった。
『安心せい。今の拓なら治せるじゃろう。
殺すつもりなら、既に命はない。オリジナルからの小手調べといった所じゃ。』
マクニス王国に着くまで、光魔法を使える者は魔力を温存。
夜の移動は危険なため行わなかったが、朝空が明るく成りかけてから、夕暮れ時まで馬車を走らせた。
元貴族の囚人に逃げられ、騎士団に多くの犠牲が出たので仕方が無いだろうが王都の雰囲気が暗い。
「活気が無いですね。
ただ、自分達を守る騎士団が手も足も出なかった割には落ち着いていますね。」
「情報操作がされているのでしょう。
大方、騎士団によって敵は全滅。国の安全は守られた。と言った感じでしょうか。」
俺の疑問にエチゴさんが答えると、俺達を呼びに来た兵士が頷く。
騎士団が相手にならないと知られれば、パニックになる可能性が有るから仕方が無いか。
馬車はそのまま、騎士団の寄宿舎へと向かった。
街中とは違い、寄宿舎の中は緊張した空気で張り詰めていた。
直ぐに、光魔法が使えるガラやエチゴさん達は秘薬を飲んだ兵士の下へ
俺はヨギ魔道士の所へ案内された。
「拓殿、来てくれて助かった。」
部屋には、ブルネリ公爵の3男で宮廷魔道士のリチャードさんと長女で騎士団所属のハンナさんが居た。
国に使えている人達がここに居て良いのか気になったが、先ずはヨギ魔道士だ。
「他の宮廷魔道士が居たので、席を外してもらいました。ヨギ魔道士をお願いします。」
話を聞くと、光魔法を使える宮廷魔道士が呪いを打ち消そうとしたが効果が無く
状態が悪化しないように、回復魔法を掛け続けていたらしい。
『拓よ、直ぐに治療に入るぞ。』
ヨギ魔道士の体は黒く染まり、体中に膿が出ていた。
それを見たグリムの指示に従い、治療の準備に取り掛かる。
体中にポーションをかけ皮膚の状態を改善。
水晶の玉で出来る限り悪い気を吸いだし、ヨギ魔道士の魔力を整える。
後は、魔力同調を行った光の魔力で全身を満たし、浄化魔法をかけるだけだ。
『力むんじゃない。
全身に毒が回った兵士を助けたのと同じ要領じゃ。
ヨギ魔道士の方が魔力も良く練られていて魔力同調もし易いじゃろう。』
グリムの言葉に少し肩の力が抜けた。
自分で思っていた以上に、気負い過ぎていたみたいだ。
深呼吸をしてから、ヨギ魔道士の体に手を置き、光の魔力を流し込んでいく。
グリムが同調しきれていない魔力を体外に放出させるが、以前と違い殆どない。
「浄化」
すると、ヨギ魔道士から黒いオーラが噴出し俺の浄化魔法によって消滅していく。
後は、体の中に闇の魔力の残骸が残っていないか確認するだけだ。
『気を抜くな。何かがおかしい。』
グリムに言われた次の瞬間、ヨギ魔道士から何かが噴出し俺を覆った。
「グリム、一体何が起きたんだ。グリム、返事をしてくれ。」
グリムに問いかけても、何も返事が無い。
俺は何も無い闇の中に、ただ1人立っていた。
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