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603調査準備

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******(ガラ)

遺跡周辺の地理情報が欲しいとギルドの受け付けに伝えると奥の部屋に通され
詳細な地図だけでなく、薬草を手に入れようとした冒険者の報告をまとめた資料を見せてくれた。

「ガラどうだ。原因の調査は可能だと思うか。」

今、俺の前に居るのは、ここのギルドマスターだ。
Aランクの冒険者が遺跡周辺の地理について調べていると聞いて色々と配慮してくれている。
冒険者の報告をまとめた資料を調べると
数年前から徐々に闇の魔力が集まっていったのが分かる。
盆地状の地形の中心には遺跡がある。
もしかすると、この原因は遺跡に有るのかもしれない。しかし、

「遺跡は立ち入り禁止なのか。」
「神聖な場所としているので、正当な理由が無ければ立ち入り禁止だ。
 原因が遺跡に有ると分かれば許可が降りると思う。」

遺跡は湖の中に浮かぶ小島にある。
問題は湖から禁足地帯に設定され、遺跡に渡らなければ原因かどうかも判断が付かないだろう。
この状態で調査を行っても、危険なだけで原因は分からないかも知れない。
せめて、遺跡に立ち入る許可だけでも出してもらいたいものだ。

俺が遺跡周辺の詳細な地図を見ながら悩んでいると

「今領主様より使いが来て、今なら原因を調査する目的なら遺跡に入る許可が下りた。」

とギルドマスターが伝えに来てくれた。
タイミングが良すぎる。これは拓が何かをしたな。
変なことをしていないか、心配になってくる。

皆の所に戻り遺跡調査の許可について聞いてみると、やはり拓が絡んでいた。
薬の製法が分かっていて無視できる拓ではないし、エチゴさんの判断で動いているのなら問題は無いだろう。
調べてきた情報を皆で共有することに

「冒険者が闇の魔力を持つ魔獣を見かけた記録を見ると、異常は数年前から始まっているみたいだ。
 初めの頃は北の方で多く目撃されている。
 これは南側にジャポの町があり、北側には深い森が有る為だと思うが、そこから調査を行ったほうが良いだろう。
 後は、遺跡だな。拓のお陰で内部調査の許可が出たので問題ない。
 正直、細かい事は現地で調べてみないと何とも言えないな。」

手に入れた気配を消す魔道具は5つしかないので5チームに分かれて気配を消して移動することにした。
拓と浩司、ヤマトは周囲の監視を行うために別行動をしてもらう。
出発は明日。皆が自分の武器の手入れをしていると

「ガラ殿。ガラ殿と話をしたいと獣人の方々が来られていますがどうしましょうか。」

馬車で囲った内側には入れたくないので外に出ると、獣人が7人集まっていたが、俺の知らない顔ぶれだった。

「俺に話が有るとの事だが何か用か。」

代表だろうネコ族の男が前に出た。

「俺はトウという。俺達は冒険者でパーティを組んでいる。
 昨日、今日とギルド会館でガラさんが遺跡周辺の事を調べているのを見た。
 遺跡周辺の調査を行うなら、俺達にも手伝わせて貰えないか。」

俺達に引っ付いて、手柄を上げたい訳では無さそうだな。

「俺が調査をするとして、何故お前達が手伝いを買って出るんだ。」
「俺達は、他の町で人間に嫌がらせを受けてこの町まで流れて来たが、この町の人達は普通に受け入れくれた。
 町の人達に恩返しをしたいが、俺達の実力では調査なんて不可能だ。
 だからガラさんが調査を行うなら、手伝わせて欲しい。」

理由は分かったが、かと言って彼等の実力では足手まといになりかねない。
どう答えれば良いかと悩んでいると

「手伝ってもらわないか。
 但し、お前達では実際の調査だと足手まといになる。
 遺跡のある湖までの道案内と、調査をしている間、馬車の警備を頼んでも良いか。」

そう言いながら、ジークが俺の所にやってくると小声で
「無下にするのも何だから、その程度なら皆、了解している。」
と後ろの方を指しながら教えてくれた。
やはり、気配を消して俺達の事を伺っていたのか。

「なら、各馬車に1名づつ付いてもらいたい。
 今の内容で、この中の3人に手伝っても良いだろうか。
 明日の朝、出発する。準備を整えて、出発までに来て欲しい。」

そう言うと、トウが

「恩に着る。明日の朝、準備をして来させてもらう。」

と言うと、全員が頭を下げ礼を言うと戻って行った。

「良い町だね。何とかして原因を突き止めないと。」

驚いた。いきなり隣に拓が立っていた。
ガゼルス将軍は、良く気配を消した拓を相手に戦えると思う。
ヨギ魔道師に新しい気配の消し方を教わってから、俺では気配を捉える事が難しくなった。
Aランク冒険者の肩書なんて、大した事が無いな。
俺は拓や浩司に追いつく事は出来るのだろうか。
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