異世界遺跡巡り ~ロマンを求めて異世界冒険~

小狸日

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******(カイン)

俺達が住む寄宿舎は、今まで住んでいた家より立派で、風呂という設備まで用意されていた。
ここまで贅沢に湯を使う設備は初めてだ。
用意されていた石鹸で全身を洗うと自分の体がどれだけ汚れていたのかを思い知らされる。
今後、工場の仕事をするためには必ず風呂に入ることを徹底するようにと言われた理由が、今なら良く分かる。
しかし、風呂というのは本当に気持ち良い。
これなら、全員言われなくても入りたがるだろう。
柔らかいベットで朝までぐっすり眠り、旅の疲れもすっかり取ることが出来た。

今日から、新しい仕事が始まる。
仕事を始める前に拓殿とニック殿に呼ばれ、俺とベックがが生産ラインで働く仲間の代表と言われた。

「今まで通り、仲間をまとめてもらい、
 問題点や改善点などの意見が有れば、ある程度まとめて報告してください。」

ベックと「「任せてください」」と返事をしたが、大丈夫だろうか。
不安はあるが、拓殿に信頼されているのであれば、頑張るしかない。

ブルネリ公爵を始め商人の方々が見守る中、作業が始まった。
俺とベックは材料を粉にする作業を行いながら、周りの様子を確認する。
荷物を持って動くと、ぶつかりそうな場所が有ったので拓殿に伝えると
ニック殿と話し合い、物の配置を変えて修正してくれた。

用意してくれた昼ごはんを食べながら、働いた感想を聞いていくと全員が喜んでいた。
ニック殿や商人の方々は席を外し、俺たちだけで話が弾む。
ただ、中には粉にした材料が見分けにくかったとの意見もあったが、「注意しろ」と言われて終わる話だろう。

「カインさん、ベックさん、休み時間で申し訳ないが、少し良いですか。」

昼食の後、ニック殿に呼ばれて別の部屋に通された。

「この工場で働いて、皆さんの様子はどうですか。」

ニック殿の問いかけに、全員が喜んでいることを伝えた後に粉にした材料が見分け難いという意見が出たことを話させてもらった。
すると、直ぐに拓殿を呼んで、その事について話し合うと

「午後の作業は1時間遅らせて開始します。
 その指摘をしてくれた方を呼んでもらえますか。」

指摘したのは女性なのだが、余計な事を言ったのではないかと緊張していた。
拓殿なら大丈夫だとは思うが、何かあれば俺達も庇うつもりでいた。
直ぐに現場に連れて行かれ話を聞いた後、

「それぞれの材料を入れる器の色を変えましょう。
 作る量が増えれば、間違え易くなりますよね。そこまで考え付かなかった。」

拓殿はそう言うと、一度席を外し色の付いた数種類の器を持ってきて取り替える。
器には文字が書いてあるが、自分達は誰も文字を読めない事を伝えると、ニック殿が教育をすると言う。

「本当に、教育を受けさせてもらえるのですか。」

「カレー粉の製造量を減らせませんので、休みの時間を使うことになりますが
 技術の蓄積が出来ないと拓殿からの要望です。
 大丈夫でしょうか。」

思わず、ベックと顔を見合わせてしまった。

「大丈夫です。こちらこそよろしくお願いします。」

教育を受けられるなんて、こんな嬉しいことはない。
とりあえず、材料の名前だけでも全て覚える必要があった。
後で、直ぐに皆に伝えないと。

「後、子供達の事ですが。」
「はい、何でしょうか。」
「今、私達は孤児院や果樹園の子供達に定期的に勉強を教えています。
 皆さんの子供達にも、参加してもらいたいと思っていますがどうでしょう。
 後で、お子さんを持つ方々に意見を聞いておいてもらえますか。」
「いえ、聞くまでも無くお願いします。本当にありがとうございます。」

子供にまで勉強を教えてもらえるなんて、こんなに有りがたい話は無い。
ただ、親にも確認をしてから改めて回答を頂きたいと言われてしまった。
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