異世界遺跡巡り ~ロマンを求めて異世界冒険~

小狸日

文字の大きさ
上 下
554 / 761

554指摘事項

しおりを挟む
******(カイン)

俺達が住む寄宿舎は、今まで住んでいた家より立派で、風呂という設備まで用意されていた。
ここまで贅沢に湯を使う設備は初めてだ。
用意されていた石鹸で全身を洗うと自分の体がどれだけ汚れていたのかを思い知らされる。
今後、工場の仕事をするためには必ず風呂に入ることを徹底するようにと言われた理由が、今なら良く分かる。
しかし、風呂というのは本当に気持ち良い。
これなら、全員言われなくても入りたがるだろう。
柔らかいベットで朝までぐっすり眠り、旅の疲れもすっかり取ることが出来た。

今日から、新しい仕事が始まる。
仕事を始める前に拓殿とニック殿に呼ばれ、俺とベックがが生産ラインで働く仲間の代表と言われた。

「今まで通り、仲間をまとめてもらい、
 問題点や改善点などの意見が有れば、ある程度まとめて報告してください。」

ベックと「「任せてください」」と返事をしたが、大丈夫だろうか。
不安はあるが、拓殿に信頼されているのであれば、頑張るしかない。

ブルネリ公爵を始め商人の方々が見守る中、作業が始まった。
俺とベックは材料を粉にする作業を行いながら、周りの様子を確認する。
荷物を持って動くと、ぶつかりそうな場所が有ったので拓殿に伝えると
ニック殿と話し合い、物の配置を変えて修正してくれた。

用意してくれた昼ごはんを食べながら、働いた感想を聞いていくと全員が喜んでいた。
ニック殿や商人の方々は席を外し、俺たちだけで話が弾む。
ただ、中には粉にした材料が見分けにくかったとの意見もあったが、「注意しろ」と言われて終わる話だろう。

「カインさん、ベックさん、休み時間で申し訳ないが、少し良いですか。」

昼食の後、ニック殿に呼ばれて別の部屋に通された。

「この工場で働いて、皆さんの様子はどうですか。」

ニック殿の問いかけに、全員が喜んでいることを伝えた後に粉にした材料が見分け難いという意見が出たことを話させてもらった。
すると、直ぐに拓殿を呼んで、その事について話し合うと

「午後の作業は1時間遅らせて開始します。
 その指摘をしてくれた方を呼んでもらえますか。」

指摘したのは女性なのだが、余計な事を言ったのではないかと緊張していた。
拓殿なら大丈夫だとは思うが、何かあれば俺達も庇うつもりでいた。
直ぐに現場に連れて行かれ話を聞いた後、

「それぞれの材料を入れる器の色を変えましょう。
 作る量が増えれば、間違え易くなりますよね。そこまで考え付かなかった。」

拓殿はそう言うと、一度席を外し色の付いた数種類の器を持ってきて取り替える。
器には文字が書いてあるが、自分達は誰も文字を読めない事を伝えると、ニック殿が教育をすると言う。

「本当に、教育を受けさせてもらえるのですか。」

「カレー粉の製造量を減らせませんので、休みの時間を使うことになりますが
 技術の蓄積が出来ないと拓殿からの要望です。
 大丈夫でしょうか。」

思わず、ベックと顔を見合わせてしまった。

「大丈夫です。こちらこそよろしくお願いします。」

教育を受けられるなんて、こんな嬉しいことはない。
とりあえず、材料の名前だけでも全て覚える必要があった。
後で、直ぐに皆に伝えないと。

「後、子供達の事ですが。」
「はい、何でしょうか。」
「今、私達は孤児院や果樹園の子供達に定期的に勉強を教えています。
 皆さんの子供達にも、参加してもらいたいと思っていますがどうでしょう。
 後で、お子さんを持つ方々に意見を聞いておいてもらえますか。」
「いえ、聞くまでも無くお願いします。本当にありがとうございます。」

子供にまで勉強を教えてもらえるなんて、こんなに有りがたい話は無い。
ただ、親にも確認をしてから改めて回答を頂きたいと言われてしまった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

転生社畜、転生先でも社畜ジョブ「書記」でブラック労働し、20年。前人未到のジョブレベルカンストからの大覚醒成り上がり!

nineyu
ファンタジー
 男は絶望していた。  使い潰され、いびられ、社畜生活に疲れ、気がつけば死に場所を求めて樹海を歩いていた。  しかし、樹海の先は異世界で、転生の影響か体も若返っていた!  リスタートと思い、自由に暮らしたいと思うも、手に入れていたスキルは前世の影響らしく、気がつけば変わらない社畜生活に、、  そんな不幸な男の転機はそこから20年。  累計四十年の社畜ジョブが、遂に覚醒する!!

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

レベル上限5の解体士 解体しかできない役立たずだったけど5レベルになったら世界が変わりました

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
前世で不慮な事故で死んだ僕、今の名はティル 異世界に転生できたのはいいけど、チートは持っていなかったから大変だった 孤児として孤児院で育った僕は育ての親のシスター、エレステナさんに何かできないかといつも思っていた そう思っていたある日、いつも働いていた冒険者ギルドの解体室で魔物の解体をしていると、まだ死んでいない魔物が混ざっていた その魔物を解体して絶命させると5レベルとなり上限に達したんだ。普通の人は上限が99と言われているのに僕は5おかしな話だ。 5レベルになったら世界が変わりました

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

スキル【僕だけの農場】はチートでした~辺境領地を世界で一番住みやすい国にします~

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
旧題:スキル【僕だけの農場】はチートでした なのでお父様の領地を改造していきます!! 僕は異世界転生してしまう 大好きな農場ゲームで、やっと大好きな女の子と結婚まで行ったら過労で死んでしまった 仕事とゲームで過労になってしまったようだ とても可哀そうだと神様が僕だけの農場というスキル、チートを授けてくれた 転生先は貴族と恵まれていると思ったら砂漠と海の領地で作物も育たないダメな領地だった 住民はとてもいい人達で両親もいい人、僕はこの領地をチートの力で一番にしてみせる ◇ HOTランキング一位獲得! 皆さま本当にありがとうございます! 無事に書籍化となり絶賛発売中です よかったら手に取っていただけると嬉しいです これからも日々勉強していきたいと思います ◇ 僕だけの農場二巻発売ということで少しだけウィンたちが前へと進むこととなりました 毎日投稿とはいきませんが少しずつ進んでいきます

元外科医の俺が異世界で何が出来るだろうか?~現代医療の技術で異世界チート無双~

冒険者ギルド酒場 チューイ
ファンタジー
魔法は奇跡の力。そんな魔法と現在医療の知識と技術を持った俺が異世界でチートする。神奈川県の大和市にある冒険者ギルド酒場の冒険者タカミの話を小説にしてみました。  俺の名前は、加山タカミ。48歳独身。現在、救命救急の医師として現役バリバリ最前線で馬車馬のごとく働いている。俺の両親は、俺が幼いころバスの転落事故で俺をかばって亡くなった。その時の無念を糧に猛勉強して医師になった。俺を育ててくれた、ばーちゃんとじーちゃんも既に亡くなってしまっている。つまり、俺は天涯孤独なわけだ。職場でも患者第一主義で同僚との付き合いは仕事以外にほとんどなかった。しかし、医師としての技量は他の医師と比較しても評価は高い。別に自分以外の人が嫌いというわけでもない。つまり、ボッチ時間が長かったのである意味コミ障気味になっている。今日も相変わらず忙しい日常を過ごしている。 そんなある日、俺は一人の少女を庇って事故にあう。そして、気が付いてみれば・・・ 「俺、死んでるじゃん・・・」 目の前に現れたのは結構”チャラ”そうな自称 創造神。彼とのやり取りで俺は異世界に転生する事になった。 新たな家族と仲間と出会い、翻弄しながら異世界での生活を始める。しかし、医療水準の低い異世界。俺の新たな運命が始まった。  元外科医の加山タカミが持つ医療知識と技術で本来持つ宿命を異世界で発揮する。自分の宿命とは何か翻弄しながら異世界でチート無双する様子の物語。冒険者ギルド酒場 大和支部の冒険者の英雄譚。

処理中です...