上 下
537 / 712

537救出2

しおりを挟む
直ぐに浩司達の攻撃に加わったが、ナターシャと魔道師の男は逃げ出そうとしている。

「逃がすか、ファイヤーアロー。」

浩司が大量の炎の矢で攻撃を仕掛けるのに合わせて、俺は闇の魔力で覆ったレイアローを放つ。
浩司のファイヤーアローはシールドで防がれたが、俺のレイアローの幾つかは魔道師の男に当たった。
しかし、相手の服の魔法耐性が強いのか大した攻撃を与えられない。
ただ、いつくかのレイアローが仮面を壊し、男の素顔を露わにする。

『何じゃと、何故お前がおるんじゃ。』

その顔を見たグリムが叫ぶ。
男は20代位だろうか。どこかの王子かと思えるような綺麗な顔をしていた。
グリムの声は、俺や浩司、ヤマトにしか聞こえないはずだが

『お前が一緒に居るのか。面白い事も有るものじゃな。』

魔道師の男の声が頭に響く。俺達が一瞬攻撃の手を緩めた所で相手からファイヤーランスとライトニングの2重攻撃を受け、防いでいる間に完全に逃げられてしまった。
2人を追いかけたいが、ハイオーガが居る所に、サリナ姫達を置いて行く事は出来ない。

ハイオーガ2体だけなら

「浩司、ヤマト、2人を連れて逃げるぞ。」

俺はアイテムボックスから火の魔法陣を描いた魔石を取り出すと魔力を込めて投げつける。
炎が2体のハイオーガを包み、倒すことは出来なくても足止めにはなる。
サリナ姫とヨハン王子を掴んで、エアウォークでその場を逃げ出だした。


街道を戻る形で走り続け、十分に距離を取ったところで

「2人とも大丈夫ですか。」

サリナ姫とヨハン王子の状態を確認させてもらう。

「特に何もされていないわ。大丈夫。助けに来てくれてありがとう。」
「俺も大丈夫。初めの戦いの影響だ。しかし、本当に助かった。この体では、サリナさんを逃がす事も出来なかった。」

俺はヨハン王子の体を確認しながら

「すみません。俺が無理をさせて動けない状態にしてしまいました。」

ヨハン王子に謝った。

「何を言っている。拓がやらなければ、初めの攻撃で魔獣にやられていた。むしろ、炎帝剣を使いこなせない俺に問題が有る。」
「今更ですけど、よく炎帝剣を取られなかったですね。」

今でも炎帝剣はヨハン王子が所持している。

「この剣は俺の許可なしに他の人が触る事も出来ないからな。
 奴等も取ろうとしたが剣が発熱し、持つ事が出来ずに諦めていた。」

以前、俺に見せてくれた時、ヨハン王子の許可が無いと触れないと言っていたが手続き的な事ではなく、実際に触れられなかったのか。
古の技術というのは凄い。
しおりを挟む

処理中です...