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488スラム街の外

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******(片足を失った冒険者)

「トリスも言っていたように、焦らなくても良いんだよ。
 人間は、自分と違うと否定するもんだ。」

トリス練成術師のお陰で、俺は新しい足でまた歩けるようになった。
そして、数段効果の高いポーションが作れる様にもなった。
今までは、スラム街の人達に安く売っていたが
これなら それなりの値段になると言われ、俺達がギルドに売りに行く。

ドクさんは・・・本名はダリアさんだったか・・・この義足や義手を見て偏見を持つ人が出てくる事を心配している。
未だ、この姿でスラム街の外に出たことは無かった。

「多分そういう人もいるだろうけど、俺達には他に出来る事は無いですから。」

俺には、トリス練成術師が期待した義手と義足を広め事でしか恩返しは出来ない。

「大丈夫です。酷い状態なんて慣れてます。」


俺達はあえて義手や義足を見える様にしてギルド会館に向かった。
俺達を見て変な目で見る人も居るが、今までの事を考えたら大した事では無い。

ギルド会館の中に入ると、俺達を見て変な奴等が来たと見られているのが分かる。
あからさまに馬鹿にした感じの冒険者が近付いて来たが、

「ダリアさんの所で薬を作っている奴等だよな。もう、義手と義足を使いこなせているのか。」
「トリス練成術師は、本当に面白い事を考えるよな。」

彼等より先にアークの人達が声を掛けて来た。
そして、トリス練成術師という言葉に周りの冒険者達が反応したかと思うと、場の空気が変わった。

「あのトリス練成術士が係わっているのかよ。」「義手や義足って何だ。」「俺達にも見せろよ。」

直ぐに、俺達は周りに居た冒険者達に取り囲まれた。偏見とは違う、純粋な興味だ。
初めに俺達に近付いてきた冒険者もバツが悪そうな顔をしている。
暫くしてギルドの人間がやって来ると、集まっていた冒険者達を解散させ俺達はポーションを買い取ってもらうため列に並んだ。

しかし、問題はその後だった。
ポーションの会計が終わり、ロビーに戻ると待っていたのは、この町の練成術師達。
何故かアークが練成術師の方々を整理し、ギルドの会議室を用意していた。

「それを受け取る時、周囲に広める様に言われているんだろ。会議室を用意してくれたから、そこで話すと良い。」
「拓の奴、絶対にやっている事の影響力を軽く考えているよな。」
「でも、今回はトリス練成術師だろ。」
「あの人は根本的に拓に近いと思うぞ。特に最近、常識が毒されていると思う。」
「しかし、彼等がギルドに来るとまでは思わなかったんじゃないか。」

「「「大変だと思うが頑張れよ。」」」

そう言われて、俺達はギルドの会議室に通された。
トリス練成術師からは、俺達が迷惑でなければ全てを見せて問題ないと言われている。
俺達は練成術師達の前で義手や義足を動かし、実際に触ってもらった。

「こんな事を考え付くとは、さすがはトリス練成術師だ。」
「このコアに描かれている魔法陣は何だ。こんなのは初めて見る。」
「俺も初めて見るが、多分 回転をさせる魔道具だ。大した力が出ないと聞いていたが、これなら丁度良いな。」
「そんなのが有ったのか。複雑な魔方陣だが、これなら描けるな。」
「この動かし方は面白い。このワイヤーを引いて手が握られるのか。」
「おい、接合部分を見てみろ。ただ足に嵌めているだけなのに抜けないぞ。」
「なんだ、この弾力のある素材は。完全に密着しているのか。」

俺達が解放されるまで、2時間以上掛かった。更に

「俺の仲間にも見せたい。また時間を作ってくれないか。
 勿論、場所は俺達の方で用意するし講演料も支払う。今回みたいに義手を操作してもらいたい。」
「なら、俺の方でも頼む。」

週に1度はポーションを売りに来る予定だと伝えると、その場で会議室を押さえていた。
講演料として金を差し出されたが、断った。
義手や義足を広めることで、金をもらう訳にはいかない。
これは義手や義足を受け取る代わりに、俺達が行うべき事だったからだ。
それなら、その代わりだとポーション作成に使う薬草を大量に渡された。
全てが終わり、ロビーに出るとアークの人達が

「お疲れ様。」
「近い内に美味い物でも持っていくから、頑張ってくれよな。」
「じゃぁ、先に行くな。」

そう言って、ギルド会館を出て行った。わざわざ待っていてくれたのだろう。
それにしても、トリス練成術師は、ここまで凄い人達だったのか。
それなのに随分と気さくな人だったな。

遅くなって、ダリアさんも心配しているかもしれない。
早く帰って安心してもらおう。
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