異世界遺跡巡り ～ロマンを求めて異世界冒険～

485ダリア

******（ドク）

今日の患者は後２人で終わりか。
患者が少ないのが気になり外に出てみると、小屋の横で診察している人が居る。

「ドクさんという方が気になって会い見来てみましたが、ダリア、貴方でしたか。」

「本当に、ダリアなのか。久しぶりだな。」

そこには、ピースとトリスの懐かしい顔が有った。
私がもぐりの医者になる前に、互いに切磋琢磨した仲間。
しかし私達は、服従の魔法にかかった少年を助けようとして失敗した後
彼を恐怖の中で死なせた事で、自分の無力さを知り医者を辞めた。
スラム街に辿りついた時、多くの人が治療も出来ずに困っているのを目にして治療を行なったら
スラム街の人間に頼られるようになり、そのまま居ついてしまった。

「昔の事は全て捨てたと思っていたのに、また２人と会うとは人生というのは何が有るか分からないね。」
「昔話は後にして、診察を終わらせてしまいましょう。」

ピースの言う通り先ずは診察を終わらせるのが先だね。


******（拓）

診察は終わるとシンクさん達はスラム街の見周りに戻り、診察の受け付けをしていた人も帰った。
俺達は奥の部屋に通され、あの後のチンピラ達の話を伺った。
ピース医師、トリス練成術師、ダリアさんの話が弾み、俺達は横でその話を聞いていた。
服従の魔法の話になると

「服従の魔法を解除する事が出来る様にもなった。
　それに、服従の魔法を使っていた魔道師も捕まえられましたよ。」

そう言う、ピース医師に

「そうか、２人はあの魔法を解除する事が出来たのかい。私の様に逃げた人間とは違うね。」
「助けられなかった少年の事を忘れるのは駄目だが、引きずるのはもっと駄目だ。
　それに、私達も教えてもらったんだ。
　世間では色々と褒め称えられているが、私もピースも何も出来ない無力な人間だ。」

ダリアさんの言葉に、トリス練成術師が思わず大きな声で話す。

「だが、その技術を伝える事は出来る。ダリアも一緒に行わないか。」

ピース医師がそう言うと、トリス練成術師が水晶の玉をダリアさんに渡した。
水晶の玉は、体内に溜まった濁った気の成分を吸い取る為の魔道具だ。

「水晶の玉の噂は聞いていたが、やはり２人が係わっていたのかい。
　作ったのはトリスか。国一番の練成術師と呼ばれるだけの事はある。」

ダリアさんの言葉に、トリス練成術師が笑っていた。

「それを作ったのは私だが、技術は教わった。
　私も自分の実力の程度を知った１人だというのに国一番なんて笑える。
　それでも、その立場が人の手助けになるので、その名を使っているだけだよ。」

「自分の実力が足りないのは、３人全員が感じている事ですよ。
　ですが、凡人も努力をすることで、前に進めます。
　先ずは、水晶の玉の使い方を覚えてみませんか。」

アークのメンバーを練習台にして、ピース医師による水晶の玉の指導が始まった。
ピース医師、トリス練成術師の同僚だけあり、ダリアさんは直ぐに水晶の玉を使える様になった。
また会いに来ると言って帰ろうとすると、

「ここら辺は、道が込み入っているからね。
　少し寄り道をするけど、スラムの外まで送るよ。」

ダリアさんは、店で使う薬を作らせている所へ様子を見に行くので、その後に俺達を送ってもらう。
トリス練成術師とアルが薬を作っている所に興味が有ると言うと、特別に中を見せてくれた。
トリス練成術師の方が技術を持っているので、見られても問題は無いそうだ。

ポーションの作り方を見せてもらうと、トリス練成術師が幾つかの問題点を指摘していた。
しかし、俺が気になっているのは薬作りより働いている人達だ。
足を失っている人や、手を失っている人達が働いていた。
元冒険者で、普通に生活が出来ない人達がここで働いていた。

「冒険者には障害保証なんて無いからな。俺達も明日は我が身だな。」

浩司が真面目な感じで話す。障害者か・・・