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468嬉しそうな小言

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******(ピース医師)

しかし、浩司殿の「これ以上の魔法治療は難しいそうです。」という言葉が気になる。
「難しいそうです」とは、浩司殿は誰と話をしていたということだ。
疲れ切った拓殿が話している素振りは見えなかった。この治療でもう一人誰かが居たのだろうか。
拓殿の枕元にヤマトが周囲を警戒する様な感じで座っている。

「もしかして、ヤマトが治療の手伝いをしていたのか。」

ヤマトの頭を撫でると「にゃぁ」と答える。
それはないか。では誰と・・・

そんな事を考えている時ではなかった。それに彼等が言わないのなら聞く必要は無い。
静かに部屋の扉を閉め、患者の元に戻る。
拓殿が希望を見せてくれたのなら、私は自分の出来る事をやるだけだ。
患者に負担を強いてしまうが、容態を維持するだけなら私にも出来る。


病室に戻ると入口の前には警備員や事務の人間が押しかけて、ヨギ魔導師が扉の前に立って中に入るのと止めていた。
拓殿が放出した強大な魔力を感じ、魔力暴走でも起こしたのかと考えていたみたいだ。
何も言わない訳にもいかず、どう説明をするか考えていると、ヨギ魔道師が大量の魔力を使う新しい治療を試したと説明していた。

「元宮廷魔導師筆頭というのも役に立つものだな。
 しかし、あの出鱈目な魔力放出は何だ。
 あれだけの魔力を放出するなら事前に1言欲しいものだ。」

集まってきた人達を追い返した後、ヨギ魔導師の嬉しそうな小言が続いた。


******(拓)

目が覚めると、頭がボーっとしていた。
窓から、朝日が差し込み部屋が明るい。
枕の直ぐ横で浩司がベットにうつ伏して寝ていて、反対側ではヤマトが居た。

『体調はどうにゃ。あれだけの魔力を使った影響は出て無いかにゃ。』

頭がボーっとするだけで特には問題は無いみたいだ。

『拓もグリムも良くやったと、リッチが言っているにゃ。
 グリムの魔力同調が出来なかった魔力を外に捨てる方法は凄いと感心しているにゃ。
 あの繊細な魔力制御は拓の今までの特訓の成せる結果にゃ。』

完全に魔力同調を行うには俺の技術は未だ未熟だった。
そこでグリムが行ったのが、同調しきれなかった魔力を体の外に捨てる事・・・
皆が居なければ助ける事が出来なかった。

『助けることが出来た。この事が一番重要じゃ。
 今の拓の技術と大量の魔力が無ければ儂のサポートなんぞ意味が無い。
  あの兵士を治したのは拓、お前だ。
 後2人も治療すると宣言したんじゃ。しっかり休んで魔力を回復させるんじゃな。』

「そうだよな。皆に力を貸してもらって助けられたんだ、今度は毒から助ける事が出来た。」

グリムに言われ、俺はジッと自分の手を見続けていた。


後2人の解毒を行う必要があるが、流石に2日間は静かにしていないと次の治療は出来ないだろう。
それに、腕輪に貯めた魔力も半分以上使っているので、蓄えないと助ける事が出来ない。
しばらくして浩司が起きると、「助けられて良かったな。」と言って頭を撫でられる。

俺としては、このままキスへの流れと思っていたが、

「しかし、『安心して反省して下さい』はどうかな。まぁ、拓ちゃんらしい必ず滑る一言だけどな。」

そう言って、浩司の大笑い。滑る一言と言っておきながら大笑いしやがって。
少し頭に来たので、アイテムボックスからサンドイッチを取り出し見せびらかす様に1人で食べると

「拓ちゃん、許して。俺にも、頂戴。」

目の前でヒラヒラとしているとパクっと食いついてきた。
満足げに食べる浩司は可愛いかも知れない。
もう一度、同じ事をやると、同じようにパクっと食いついてきた。
3度目になると、流石に「おいっ」と突っ込みが入ったので、ヤマト分も取り出して皆で朝の食事にした。
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