上 下
432 / 744

432拡張ボックス

しおりを挟む
******(バラン将軍)

「拓殿、俺には2つの箱はミスリルで出来ている様に見えるのだが。
 それも、ブルネリ公爵に薬を保管する為に渡したのと同じに思える。」
「バラン将軍は極めて正しい記憶力を持っています。
 2つとも、ブルネリ公爵に渡したのと同じサイズの拡張ボックスですから。
 ただ、使用目的が違うので、上部の蓋に装飾を施しています。」

拓殿に言われて上を見ると、片方には、OZ、アーク、クリームのマークであるOZの文字、船、ケーキのマークが描かれていた。
もう片方に描かれていたのは、剣と盾の騎士団のマーク。その下には『バラン騎士団』と書かれている。

「中は広いですから、収穫した光苔を入れても余裕が有ります。
 余った分は薬を入れたり食料を入れたりと自由に使って下さい。」

光苔の保存箱と言いつつ、基本的に私達が使用する為に用意してくれた箱という事か。
まったく、拓殿やOZには借りばかり作ってしまうな。
しかし、ポーションや薬を劣化させずに保管できるのは本当に有り難い。
OZ、アーク、クリームのメンバーを全員呼んで所有者の縛りを行った後、安全な設置場所として私やオリバー隊長が使用している部屋の近くに連れて行った。
用事の無い部下が来れば目立つし、OZ、アーク、クリームにあてがった部屋も近いので良いと思ったのだが

「私達の箱を設置するには良いかと思いますが、騎士団のもこんな所に設置で良いのですか?
 食材や作りたての料理をそのまま保存できるので調理場の方が役に立ちますよ。」

拓殿は何を言っているのだ。まさか、拓殿達はこれだけの拡張ボックスを料理の保存に使っているとでもいうのか。
他のメンバーを見ると、拓殿と浩司殿以外の全員に目を逸らされてしまった。

「料理の保存も良いと思うが、薬や非常時の食材の保管に使いたいと思う。
 それに、ここは人数が多く料理当番が決まっていて保存する必要は無いからな。」

私の説明に拓殿と浩司殿が「なるほど」と納得しているのを見ると、本当に料理の保管に拡張ボックスを使っているのだろう。
価値観が違い過ぎて、自分の考えに自信が持てなくなってくる。
拓殿に拡張ボックスを固定してもらうと、今夜は用事が有ると言ってOZのメンバー全員で寄宿舎を出て行った。
アークとクリームのメンバーもやる事が有るらしく、各自の部屋に戻った。

部屋に残された私とオリバー隊長は『バラン騎士団』と書かれた拡張ボックスを見ていた。
これ程の魔道具を渡されるなんて、誰も考えられないだろう。
この展開に付いて行くだけで頭が一杯になり忘れていたが、

「オリバー、毒と呪いに対して反応する魔道具の受け取りを断って悪かった。
 あの魔道具が有れば、この先多くの団員が危険を避けれる事は分かっている。
 しかし、これ以上 拓殿の好意に甘える訳にはいかない。」
「将軍の判断は正しいと思います。
 ただ、私の方が拓殿と長く行動を共にした事も有り、彼の考えが少し分かる気がします。
 申し訳ありませんが、私の方でも対応すべき事が出来ましたので、今夜はこれで失礼させて頂きます。」

オリバー隊長はそう言うと、部屋を出て行った。

次の日、拡張ボックスの事を部下にどうやって話せば良いか考えながら廊下を歩いていると、オリバー隊長が言っていた拓殿の考えが私にも理解出来た。
近くに居た兵士を捕まえて問い正す。

「このポスターはどうしたんだ。」
「はっ、今朝方 アーク、クリームのメンバーが貼っていました。
 張る場所については、オリバー大隊長の許可をもらっている聞いております。」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

~クラス召喚~ 経験豊富な俺は1人で歩みます

無味無臭
ファンタジー
久しぶりに異世界転生を体験した。だけど周りはビギナーばかり。これでは俺が巻き込まれて死んでしまう。自称プロフェッショナルな俺はそれがイヤで他の奴と離れて生活を送る事にした。天使には魔王を討伐しろ言われたけど、それは面倒なので止めておきます。私はゆっくりのんびり異世界生活を送りたいのです。たまには自分の好きな人生をお願いします。

転生受験生の教科書チート生活 ~その知識、学校で習いましたよ?~

hisa
ファンタジー
 受験生の少年が、大学受験前にいきなり異世界に転生してしまった。  自称天使に与えられたチートは、社会に出たら役に立たないことで定評のある、学校の教科書。  戦争で下級貴族に成り上がった脳筋親父の英才教育をくぐり抜けて、少年は知識チートで生きていけるのか?  教科書の力で、目指せ異世界成り上がり!! ※なろうとカクヨムにそれぞれ別のスピンオフがあるのでそちらもよろしく! ※第5章に突入しました。 ※小説家になろう96万PV突破! ※カクヨム68万PV突破! ※令和4年10月2日タイトルを『転生した受験生の異世界成り上がり 〜生まれは脳筋な下級貴族家ですが、教科書の知識だけで成り上がってやります〜』から変更しました

公爵家三男に転生しましたが・・・

キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが… 色々と本当に色々とありまして・・・ 転生しました。 前世は女性でしたが異世界では男! 記憶持ち葛藤をご覧下さい。 作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

転生幼女は幸せを得る。

泡沫 ウィルベル
ファンタジー
私は死んだはずだった。だけど何故か赤ちゃんに!? 今度こそ、幸せになろうと誓ったはずなのに、求められてたのは魔法の素質がある跡取りの男の子だった。私は4歳で家を出され、森に捨てられた!?幸せなんてきっと無いんだ。そんな私に幸せをくれたのは王太子だった−−

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので

sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。 早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。 なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。 ※魔法と剣の世界です。 ※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結

処理中です...