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393毒

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「なぁ、拓ちゃん。本当に、またこれを着るのか。」

浩司に渡したのは前回のパレードで着こんだ剣君の着ぐるみ。
俺は既に斧ちゃんの着ぐるみを着こんでいる。
パレードの護衛を行うアークやクリームは前回と同様に鎧の表面をコーティングして輝く鎧にし、光る剣や杖を持っている。
サリナ姫やブルネリ公爵も光る鎧に身を包み、光る剣を帯剣していた。

「去年は目立たなかったけど、今年は俺達の方が可愛らしさで人気を根こそぎ奪うよ。」

前回は殆ど見向きもされなかったが、今回はバージョンアップさせて着ぐるみ全体が光る様にし
ひそかにダンスも練習した。

浩司と俺はパレードの先頭馬車に乗って光った姿で市民に愛嬌を振りまく。
ブルネリ公爵、サリナ姫、バラン将軍は主役なので俺達より目立つのは仕方がない。
しかし、それ以外は俺達の下になる予定だったのだが…
ロダン侯爵領の人達が光る衣装を着た男性陣の演武、女性陣の舞いまでバージョンアップしていて、せっかくの光る着ぐるみへの視線を奪う。
更に邪魔なのはアーク、クリーム。
何時練習していたのか、全員で揃った演武を舞っていた。それがロダン侯爵領の人達と息が合っているので凄くカッコいい。
煩い位の黄色い声援が飛んでいる。
今回も、剣君と斧ちゃんは座っても問題なさそうな状態になってしまった。

『その、何といえば良いのか。またしても完全に持って行かれたな。
 しかし、一番の目的は護衛じゃろう。周囲に敵が居ないかしっかりと見張るんじゃぞ。』

グリムに言われるまでも無く、不貞腐れずに探索魔法でしっかりと周囲を調べ続けた。
バラキエ侯爵は昨夜の内に屋敷を抜け出したみたいで、気が付いた時には屋敷には居なかった。

パレードが半分位進んだ時、建物の高い位置から強い風と共に何かが撒かれたのが分かった。
撒かれた物は黒いオーラを纏い碌な物では無いのは分かるが、風に乗って広範囲に広がっていた。

『浩司、風魔法を使って撒かれた物質を集めるんじゃ。
 ヤマトは、闇魔法で出来る限り浩司の魔力を隠すんじゃ。』

グリムは俺の感覚を共有しているみたいだ。
俺は出来る限り撒かれた物質を把握する為、探索魔法を強化した。
グリムの指示に従い浩司が俺の感じていた黒いオーラを見事に捕えると空の一角に集めきった。
ヤマトも何とか浩司の魔法を隠し通す事が出来たみたいだ。

『浩司は魔法を使い限界じゃ。拓、あれをシールドで囲むんじゃ。』

俺がシールドを張った所で、ガラが俺達の所にやってきた。
他のメンバーも俺達の魔力を感じていたが、パレードをそのまま続けている。

「俺達は何をすれば良い。」

「俺がエアウォークで移動するから、浩司とヤマトの事を頼む。」

「任せろ。」

浩司だけでなくヤマトも浩司の強力な魔力の気配を隠し続け完全に動けなくなっていた。
俺は闇の魔力で自分自身を覆い気配を完全に消し、エアウォークで移動し、シールド毎瓶に密封してアイテムボックスに収納した。
そのまま周辺を探索魔法で調べると近くに人の気配。その方へ向かうと

「バラキエ侯爵。一体、こんな所で何をしているんです。」

そこにはバラキエ侯爵が・・・急いでいたのが分かる。

「私は、ここで魔法の気配を感じて来ただけだ。お前こそ、何しにここに来たんだ。」

「この付近に、貴方以外には居ない。もう一度聞きます。貴方は ここで何をしているんです。」

「魔法の気配を感じて来たと言っているだろう。他に何の目的が有ると言うんだ。」

「とりあえず、ブルネリ公爵邸まで同行願います。
 悪いですが、俺に貴族の立ち場なんて何の意味も有りませんよ。」

バラキエ侯爵は、そのまま大人しく付いて来てくれた。
一応、持ち物を調べさせてもらったが、何も持っていない。
ただ、不思議なのはオーラが奇麗なままだった。
バラキエ侯爵を屋敷まで連れて行き、警備の人に引き渡すとパレードの方へ移動した。
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