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「何でアニスがこんな所に居るんだ。」

「変な動きを感じたから、覗きに来たんだよ。
 そうしたら2人を見かけたんで声を掛けようとしたら・・・屋敷が崩壊したんだ。」

その時、崩壊した屋敷から抜け出す人の姿が有った。
黒い長い髪の女性・・・ナターシャだ。ナターシャが生きていた。
俺達が追い掛けようとすると危険だと言ってアニスが邪魔をする。
アニスには悪いが、無理やり振り切りナターシャの後を追ったが、見つける事は出来なかった。

ピース医師達はとっさに光魔法でシールドを張り全員助かったが、屋敷の人間は全員亡くなっていた。
遺跡は完全に潰れていた。
ピース医師の話では地下から異常な発熱を感じたらしいので証拠も隠滅された上での破壊だろう。

「ナターシャなら、この国から抜け出すのも簡単だろうな。証拠も証人もなしか。」

バラン将軍の所の騎士団寄宿舎でOZ、アーク、クリームで今後の対応を考えていたが、浩司の言う通り完全に行き詰っている。
ブルネリ公爵やバラン将軍も国に対して働きかけているが、上手く行っていない。

「とりあえず、ナターシャが毒を作るのに利用していた遺跡は破壊できたんだ。
 それだけでも成果としては大きな物だ。
 拓や浩司はアニスと、その後会っていないんだろ。
 安全の為に止めようとしたのを振り切ったんだ、謝ってきたらどうだ。」

ガラの言う通り、アニスには謝らないといけない。
アニスの泊っている宿については、エチゴさんが調べてくれていた。


******

「危険な所に飛び込むなんて、本当に心配したよ。」

俺達がアニスに謝ると、それ以上の突っ込まないでくれた。

「しかし、屋敷が崩壊するなんて怖いね。
 マクニス王国の封鎖が解けたら、この町を出ようと思うんだ。
 浩司や拓はどうするの。」

今回の屋敷崩壊が気になるので、もう少し滞在してからラグテルの町に帰る事を伝えた。

「確かに気になるね。
 マクニス王国の封鎖が解ける時には、その辺の報告が有るんじゃないかな。
 ラグテルも良い町だったよね。僕もラグテルの町に行くから、一緒に行かない。」

「今回は、OZだけでなく、アークやクリームに合わせて裏街道を通るから厳しいかな。」

馬車が有ると言うのに、皆が自転車に乗りたいと言うので他の人を入れたくないだけなのだが、アニスは「そっか」と言うだけでそれ以上何も言ってこない。
単独で冒険者をしているからだろうか。彼女は、本当にサバサバした性格をしている。
またラグテルの町で会ったら宜しくと言ってアニスと別れた。


結局、俺達にやれる事も無く、俺は自転車作りをしている。但し、ギアは付いていない。
トリス練成術師に確認した所、自転車を広めること自体は問題ないとの事だったので
ブルネリ公爵、バラン将軍の部隊に5台づつ渡す事にした。
サリナ姫にもと思ったが、姫としての立場上止めて欲しいとの事。
確かに姫が自転車に乗っている姿はイメージに合わない。
他に、パウロさんに4台渡し、パウロさんからヨーゼフさんに2台渡して貰えるように取り計らってもらった。
そして、商人達の間で自転車を流行らう様にお願いしておいた。

『にゃんで、貴族でなく商人の間で流行らせるのにゃ。』

「貴族の間だけで流行ったら、貴族外の人が乗りづらくなるからね。
 それに商人で流行ればOZにはエチゴさんが居るから、乗りやすくなるよ。」

自転車で面倒なのは、チェーンの部分とタイヤの素材だ。
自転車と一緒に、簡単にまとめた資料を渡したので、しばらくすれば自分達でも作れるようになるだろう。



マクニス王国の封鎖が解けるのと合わせて、屋敷の崩壊は地下に毒ガスが溜まった空間が有った為だと公表された。
毒については、完全に浄化されたとして避難勧告は解除された。
結局、ナターシャの行方は分からず、屋敷の人間は全員死亡。
崩壊した屋敷を探索してみたが何も見つける事は出来なかった。
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