上 下
360 / 744

360証明書

しおりを挟む
ポトリ教授に急かされ、未だ日が出る前から俺達は次の遺跡へと進んだ。
ただし、この先は馬車が通れるような道はない為、一度村に戻り馬車を預けてからの出発となる。
遺跡に近付くにつれ、強い魔獣が出現するようになってきた。
ヨギ魔道師、ポトリ教授が居るので、レオとアルは魔法を使っていない。
2人が魔法を使う事に慣れてしまい、強い魔獣に苦戦している。
しかし、ジャイアントコングの攻撃を受けた時、レオが

「ウォーターアロー」

と魔法を使ってしまった。
獣人が強力な魔法を使える魔道具を持っているとなると問題になる。
しかし俺の不安とは異なり、ヨギ魔道師は「ほう」と言ってレオの着けている腕輪を見ると

「この見た目に騙されていたが、素晴らしい魔道具を着けていたんだな。
 しかし、完全に使いこなすには、もう少しという所か。
 そうすると、アルの腕輪も魔道具なのだろう。」

ヨギ魔道師が楽しそうにアルの魔道具の腕輪も見ている。
アルに土魔法を使わせると

「2人とも良い筋をしている。
 しかし、獣人がこれだけの魔道具を持っているのを知られると、欲ボケ貴族共が黙っていないか。」

やはりレオとアルが、上級魔法を使える魔道具を持っている事がばれれば手段を択ばない人が出てくるか。
その夜、レオとアルに立派な用紙を渡していた。

「何か有った時には、それを使うと良い。少しは効力があるだろう。
 戻ったら、ブルネリにも一筆書かせよう。
 あれでも公爵だからな。現役を退いた私より力は有る。」

用紙は、魔道具がレオとアルの物であるという証明書でヨギ魔導士のサインが入っていた。
持っている事に疑いを掛けられた時に使えと言ってくれる。
差別、偏見がある世界で身を守る手段を与えてくれたのだろう。
レオ、アルだけでなく、OZのメンバー全員で礼を言うと

「何、この様な旅に連れてきて貰った礼だ。気にしなくて良い。
 それに、その魔道具は2人に合わせて作られている様な感じだからな。
 他の馬鹿どもに使わせる様な勿体ない真似はさせられない。」

そう言って、笑っていた。

『拓が魔道具に込めた気持ちでも感じたのじゃろう。
 儂に憧れ、宮廷魔道師のトップだっただけの事は有る。』

グリムを崇拝して影響を受けたのは危険思想だけだろう。
しかし、俺の気持ちが伝わったと言うなら製作者としては嬉しい事だ。
お陰で、レオもアルも魔法を使い、今までと同じ連携を取れるようになった。


最後の遺跡の場所に着いたはずだが、広範囲を探索魔法で調べても建造物らしき物は引っかからない。
目印が何も無いので探索する範囲を広げる必要が有るか、埋もれてしまっているのかも知れない。
夜になると、ポトリ教授が拡張バッグから機材を取り出して星の観測を始めた。
何をしているのかと尋ねてみると

「これは、星の位置から自分達が何処に居るのかを調べているんですよ。
 自分の目的地を見失わない様にします。」

調べ終わると自分達の居る場所を地図で教えてくれ、進む方向を調整していく。
そうして、たどり着いた場所は草と木しか無い場所だった。

「場所はこの辺で良いはずですなんですが。
 遺跡は完全に潰れてしまったか、土に埋もれてしまったかも知れませんね。
 土の下に埋もれていないか調べてみましょう。」

ポトリ教授が手を下に向けて土の魔力で探索を開始したので、俺も同じ様に探索を始めた。
初日は何も発見する事は出来ず、天幕で休んでいると、ポトリ教授は星を使って細かい位置確認をしていた。
警護を兼ねて側で見ているが、本当に嬉しそうに装置をいじっている。

次の日は、少し先の方を調べる事にした。
土の魔力を深い所まで浸透させて調べていると、

「ポトリ教授、来て下さい。ここの下に遺跡が埋まっています。」

深い場所に全く魔力を通さない構造物が存在している。
この魔力を通さない感覚は孤島の勇者の遺跡と同じだ。
直ぐにポトリ教授が探索魔法で調べ構造物を確認したが、深過ぎて長時間の調査は出来ない。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

~クラス召喚~ 経験豊富な俺は1人で歩みます

無味無臭
ファンタジー
久しぶりに異世界転生を体験した。だけど周りはビギナーばかり。これでは俺が巻き込まれて死んでしまう。自称プロフェッショナルな俺はそれがイヤで他の奴と離れて生活を送る事にした。天使には魔王を討伐しろ言われたけど、それは面倒なので止めておきます。私はゆっくりのんびり異世界生活を送りたいのです。たまには自分の好きな人生をお願いします。

公爵家三男に転生しましたが・・・

キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが… 色々と本当に色々とありまして・・・ 転生しました。 前世は女性でしたが異世界では男! 記憶持ち葛藤をご覧下さい。 作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

転生幼女は幸せを得る。

泡沫 ウィルベル
ファンタジー
私は死んだはずだった。だけど何故か赤ちゃんに!? 今度こそ、幸せになろうと誓ったはずなのに、求められてたのは魔法の素質がある跡取りの男の子だった。私は4歳で家を出され、森に捨てられた!?幸せなんてきっと無いんだ。そんな私に幸せをくれたのは王太子だった−−

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので

sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。 早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。 なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。 ※魔法と剣の世界です。 ※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

追放シーフの成り上がり

白銀六花
ファンタジー
王都のギルドでSS級まで上り詰めた冒険者パーティー【オリオン】の一員として日々活躍するディーノ。 前衛のシーフとしてモンスターを翻弄し、回避しながらダメージを蓄積させていき、最後はパーティー全員でトドメを刺す。 これがディーノの所属するオリオンの戦い方だ。 ところが、SS級モンスター相手に命がけで戦うディーノに対し、ほぼ無傷で戦闘を終えるパーティーメンバー。 ディーノのスキル【ギフト】によってパーティーメンバーのステータスを上昇させ、パーティー内でも誰よりも戦闘に貢献していたはずなのに…… 「お前、俺達の実力についてこれなくなってるんじゃねぇの?」とパーティーを追放される。 ディーノを追放し、新たな仲間とパーティーを再結成した元仲間達。 新生パーティー【ブレイブ】でクエストに出るも、以前とは違い命がけの戦闘を繰り広げ、クエストには失敗を繰り返す。 理由もわからず怒りに震え、新入りを役立たずと怒鳴りちらす元仲間達。 そしてソロの冒険者として活動し始めるとディーノは、自分のスキルを見直す事となり、S級冒険者として活躍していく事となる。 ディーノもまさか、パーティーに所属していた事で弱くなっていたなどと気付く事もなかったのだ。 それと同じく、自分がパーティーに所属していた事で仲間を弱いままにしてしまった事にも気付いてしまう。 自由気ままなソロ冒険者生活を楽しむディーノ。 そこに元仲間が会いに来て「戻って来い」? 戻る気などさらさら無いディーノはあっさりと断り、一人自由な生活を……と、思えば何故かブレイブの新人が頼って来た。

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

処理中です...