上 下
343 / 744

343ケーマ

しおりを挟む
皆と別れて、ガラと浩司と一緒に向かった先は

「お前、拓じゃないのか。そうだよ、拓だよな。」

以前に、遺跡を見に来た時に知り合ったケーマの家。
夕方で、少し前にケーマも狩りから帰ってきたばかりだそうだ。
ケーマの母親も俺達の事を覚えてくれ、ケーマが兄と慕っているアドニスさんにも声を掛けて一緒に夕食にでもと誘われた。
パウロさんに許可をもらいに、ガラが戻ると言うので俺達は残って料理の手伝いをする事にした。

バッグから出す振りをして、アイテムボックスから酒、醤油、ミリンを取り出す。
直ぐにアドニスさんが肉を持ってやって来た。
久しぶりに会って挨拶をした後、肉や野菜を串に刺して焼く下準備を手伝ってもらい、浩司にはペンタというイースト菌の代わりを渡してパン生地を作ってもらう。
俺は鶏がらを用意してもらい、ネギ、ショウガを入れて水から煮こんで灰汁取り。
ガラが野菜を買って戻ってきたので、野菜や肉を煮込んでスープにする。
野菜の付け合わせに果物のドレッシングを作り、マヨネーズも用意しておく。
パンが良い感じで発酵した所で、ピザを作る。
皆で一枚づつ、好きな様にトッピングをする事にした。
ガラは相変わらず独創的な組み合わせを作り始めると、アドニスさんに悪影響を与えていた。
浩司の魔法でカマドを熱してもらい皆のピザを焼きながら、アドニスさんに用意してもらった串を焼く。
テーブルの上に並んだ御馳走。

「「「美味しい」」」

食事って、こういうものだよな。
旅の間の食べ物は、ただのエネルギー補給だと思う。

「結局、拓さんにやってもらったけど、本当に凄いわ。
 町だと、こんな食事が食べれるのかしら。
 こんなに美味しいのは初めてよ。」

ケーマの母親も喜んでくれ、ケーマは無言で料理に被りついている。
アドニスさんも料理を楽しんでくれている。
そして意外だったのは、ガラとアドニスさんのピザが美味しかった事だ。
食事と共に、お酒が進んでいる。それを見ていたケーマが

「そう言えば、拓は二日酔いになる薬は作れたのか。
 前に会った時、俺に酷い二日酔いになる薬の事を聞いてたよな。」

「「・・・」」

ガラと浩司の無言の視線が俺に突き刺さる。
あの後も、色々と探してはいるが、見つける事が出来ないでいた。
しかし、ケーマも余計な事を言ってくれる。

「嫌だな、ケーマ君。君は誰かと間違えているんじゃないかな。」

そう言ってもガラと浩司の視線が痛い。

「ガラと浩司は、酒を飲む時は気を抜けないな。」

アドニスさんはそう言って、笑っている。
直ぐに話題を変えて最近のケーマの状況を聞くと、アドニスさんの下で狩人見習いとして活動していた。
狩りの腕はそれなりで、問題なく獲物を捕えられているそうだ。

この2日間、ケーマに案内してもらい森を探検したり、遺跡を探索して過ごした。
遺跡の近くの崩した洞窟にも行ったが、ケーマは気にして無い様だ。
洞窟の奥に遺跡時代の家が埋まっていたが、昔、遺跡発掘で村が荒れたという事も有り、アドニスさんの依頼で俺が崩した。
正直、ケーマが気にして無くて良かった。

俺達が遊んでいる間、ハック、リタ、アニスは風雅のメンバーと訓練をしていたそうだ。
一応、遺跡にも誘っていたが、10キロも離れた場所まで行く気は無かった。
パウロさんの商売も終わり、俺達はラグテルの町に帰る事になった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

~クラス召喚~ 経験豊富な俺は1人で歩みます

無味無臭
ファンタジー
久しぶりに異世界転生を体験した。だけど周りはビギナーばかり。これでは俺が巻き込まれて死んでしまう。自称プロフェッショナルな俺はそれがイヤで他の奴と離れて生活を送る事にした。天使には魔王を討伐しろ言われたけど、それは面倒なので止めておきます。私はゆっくりのんびり異世界生活を送りたいのです。たまには自分の好きな人生をお願いします。

公爵家三男に転生しましたが・・・

キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが… 色々と本当に色々とありまして・・・ 転生しました。 前世は女性でしたが異世界では男! 記憶持ち葛藤をご覧下さい。 作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

転生幼女は幸せを得る。

泡沫 ウィルベル
ファンタジー
私は死んだはずだった。だけど何故か赤ちゃんに!? 今度こそ、幸せになろうと誓ったはずなのに、求められてたのは魔法の素質がある跡取りの男の子だった。私は4歳で家を出され、森に捨てられた!?幸せなんてきっと無いんだ。そんな私に幸せをくれたのは王太子だった−−

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので

sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。 早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。 なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。 ※魔法と剣の世界です。 ※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

追放シーフの成り上がり

白銀六花
ファンタジー
王都のギルドでSS級まで上り詰めた冒険者パーティー【オリオン】の一員として日々活躍するディーノ。 前衛のシーフとしてモンスターを翻弄し、回避しながらダメージを蓄積させていき、最後はパーティー全員でトドメを刺す。 これがディーノの所属するオリオンの戦い方だ。 ところが、SS級モンスター相手に命がけで戦うディーノに対し、ほぼ無傷で戦闘を終えるパーティーメンバー。 ディーノのスキル【ギフト】によってパーティーメンバーのステータスを上昇させ、パーティー内でも誰よりも戦闘に貢献していたはずなのに…… 「お前、俺達の実力についてこれなくなってるんじゃねぇの?」とパーティーを追放される。 ディーノを追放し、新たな仲間とパーティーを再結成した元仲間達。 新生パーティー【ブレイブ】でクエストに出るも、以前とは違い命がけの戦闘を繰り広げ、クエストには失敗を繰り返す。 理由もわからず怒りに震え、新入りを役立たずと怒鳴りちらす元仲間達。 そしてソロの冒険者として活動し始めるとディーノは、自分のスキルを見直す事となり、S級冒険者として活躍していく事となる。 ディーノもまさか、パーティーに所属していた事で弱くなっていたなどと気付く事もなかったのだ。 それと同じく、自分がパーティーに所属していた事で仲間を弱いままにしてしまった事にも気付いてしまう。 自由気ままなソロ冒険者生活を楽しむディーノ。 そこに元仲間が会いに来て「戻って来い」? 戻る気などさらさら無いディーノはあっさりと断り、一人自由な生活を……と、思えば何故かブレイブの新人が頼って来た。

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

処理中です...