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342 / 744

342遭遇率

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「怪我は無いか。」

エドガーさんが、全員に声を掛ける。
俺達は、その後も何度も魔獣の攻撃を受けている。
アニスも周辺の探索を怠らないが、ダークウルフの様な気配を隠す相手や空からの攻撃など気が付くのが遅くなることが多い。
風雅のメンバーも気が付かない場合は、俺が警告を発している。

しかし、魔獣に襲われる回数が多過ぎる。
エドガーさん、ガラ、風雅のメンバーが色々調べているが、原因を見つけられずにいた。
夜の見張りが終わり、浩司と2人でテントで横になっていると

「なぁ、拓ちゃん。魔獣を呼び寄せる香りが有るんじゃないか。
 以前、魔獣を引き寄せる液体を作っていただろ。
 それに、広範囲に風魔法が使われているみたいだしな。」

「俺もそう思ったけど、何も無いんだよ。獣寄せの実の汁は使われてない。
 それから、浩司が感じる風魔法はアニスだよ。
 探索方法を模索しているみたい。頑張り屋さんだよね。」

アニスには色々と聞かれたが、エドガーさんと同様に危険に対する感覚が鋭いと答えておいた。
アニスが何をしているのかは分からないが、上手く行けば良いと思う。
流石に、俺の光の魔力を使った探索は、普通と違い過ぎて参考にならないだろう。

「グリムは何か気付いたこと有るか。」

『残念じゃが、何も無い。
 魔獣を呼び寄せる臭いは色々と有るが、この隊では感じられん。
 しかし、偶然と言うには魔獣との遭遇率が高すぎるじゃろう。』

全ての事象には原因が有ると思う。
俺達が知らない何かが有ると考えた方が良いだろう。
人間には感じ取れない魔獣を惹きつける臭いがあるとか…と言っても、知らなければ手の打ちようが無い。

こんな回りくどく、グリムですら知らない手段を知っている人間・・・
ふと、死んだナターシャの顔が頭をよぎる。
2000年前に生きていたムーサーとそっくりの女。
ブルネリ公爵領で発見された死体は本当にナターシャ本人なのだろうか。
あれは替え玉だとすると

「ナターシャが生きていて、仕掛けて来ている事はないか。」

自分の中に浮かんだ考えを言葉に出してみた。

「それって、ナターシャが俺達に仕返しをしようとしているって事か。
 確かに、あの女にしてはあっけない終わり方だったしな。生きていても不思議じゃない。」

浩司も、ナターシャが生きている可能性が有ると考えているみたいだ。

『仮に生きているとしても、今回の件はナターシャとは関係ないじゃろう。
 あの女は拓と浩司の力を身を持って知っておる。
 こんな魔獣で倒せるとは考えないはずじゃ。』

確かに、襲ってくるのは俺と浩司の戦力で十分戦える魔獣だ。
襲われる間隔も時間が有り、俺達を疲れさせる魂胆が有るとは思えない。
結局、魔獣の素材を大量に入手し俺達はエバの村に到着した。
もしかすると、この街道に現れる全種類の魔獣に遭遇したのではないだろうか。

この町の滞在中の2日間は俺達は自由に行動して良い事になっている。
着いて直ぐに魔獣の素材を売り払い、冒険者達で分配した。
町で売るより安くなってしまうが、パウロさんの厚意で村まで持って来れただけでも有り難い。
ただ魔石については、

「知り合いが錬成術師を目指しているので出来れば俺に買わせて貰えないか。」

と言って、店の提示した買値で俺が買い取らせてもらった。
そんな知り合いが居る訳も無く、使用するのは当然俺だ。
皆と一緒に居てアイテムボックスを使う訳にはいかない為、ガラと浩司のバッグにも入れさせてもらった。
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