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335慢心

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前衛で戦っていたハックが腕に怪我をしたが、無事に退治する事が出来た。

「やったぞ。俺達、ケルベロスを倒したんだ。」

「ケルベロスを倒すなんて、私達って凄いわ。」

ハックとリタが喜んでいるが、これは危険かも知れない。
アニスが何か考えていたが

「今回ケルベロスを倒せたのは拓と浩司のお陰だと思う。
 僕達だけでも、こちらの冒険者と一緒でも、この2人が居なければ全滅していたと思う。」

「確かに、拓と浩司のサポートは凄いと思うけど、攻撃は俺とリタでしていたじゃないか。」

アニスの意見にハックが反論する。

「2人が居なければ攻撃も出来ずに終わってたよ。
 私のサポートでは攻撃する間を作る事は出来なかった。」

「そうね。悔しいけど、アニスの言う通りだと思う。
 確かに私達への攻撃は拓が全て防いでいたし、私達の攻撃のタイミングは浩司の魔法が作ってくれていたわ。
 あれが無ければ私の攻撃が出来ない所か、生きていないと思う。」

「それが、パーティの役割分担だろ。」

「その1部の役割が凄くてパーティの底上げをしているって事だよ。
 結局、ケルベロスとの戦って僕達がこうしていられるのも2人が居たからだ。」

アニスがハックにそう言うと、俺達を見た。

「あの戦いでも余裕が有った様に思えるんだけど。
 どう考えてもDランクの能力じゃ無いよね。2人共、何者なの。」

何者って言われても、ただのCランク冒険者試験の受講生でしかないのだが。

「こいつ等は面倒がって試験を受けて来なかった只の実力者だ。
 仲間の足を引っ張らない様に、やっと重い腰を上げた無精者だ。
 悔しいが、実力なら今の俺達よりも上だ。
 アニスは、なかなか良い観察力を持っているな。
 あのままケルベロスを倒したのが自分達の実力だと思っていたら、いつか大怪我をしていただろう。」

ゴルゴの口の悪さが炸裂だ。それも俺が否定できない言葉で。
しかし『今の俺達』と言ったという事は、

『どうやら、お前達が目標になっているみたいじゃな。』

多分、グリムの言う通りなのだろう。
アニスやゴルゴの言った意味を理解し皆から礼を言われた。
ちなみに、ケルベロスの討伐は俺達臨時チームの手柄にして良いらしい。
あくまでも、ゴルゴ達はあくまでもギルドの依頼を受けた監視員の立場で倒した魔獣の権利は無いそうだ。

「今回はイレギュラーな状態なので助けに入ったが、後は町まで自分達だけで行くんだな。」

それだけ言うと、ゴルゴ達は立ち去った。
ただし離れた所から監視しているだけで、本当に居なくなった訳ではない。
俺達は、ケルベロスの討伐証明部位と魔石を取り出した。
そして、最後にケルベロスの死体を焼いた。
ケルベロスの皮は良い素材になるので持ち帰りたかったが、このパーティでは仕方が無い。

その後は、魔獣と遭遇する事も無く7日目に目的地の村にたどり着いた。
ピエール達は、ずっと早くたどり着いていると思ったが、メンバーの1人が道に迷い俺達より数時間前にたどり着いたそうだ。
俺達のギルドカードの確認を終えて、合同合宿が終了となった。

「無事に目的地にたどり着いて何よりだ。これで、今回の試験は終了だ。
 合否については、移動中の行動についても吟味して後日ギルド会館で発表される。
 今夜はこの町に泊り、明日の朝、馬車でラグテルの町に戻る。
 宿に案内するので着いてきてくれ。」

ギルド職員の後を付いて行くと、空家に案内された。
食事はギルドの方々が用意してくれていたのだが・・・
試験も終わり普通の食事にありつけると思ったが、堅いパンと塩味のスープ。

早くラグテルの町に帰って、レオの食事を腹いっぱい食べたい。
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