上 下
311 / 744

311ムーサー

しおりを挟む
そんな事が有るのだろうか。

「それは2000年前の知識を使えばという事なのかな、ムーサー。」

俺の言葉にナターシャの顔色が変わる。

「一体、お前達は何者。何故その名前を知っている。」

この反応、関係者で有る事は間違いない。もしかして本当に本人なのだろうか。
リッチの様にアンデットとして生きている訳では無さそうだ。
本人だとすると2000年生きている事になるが、普通の人間にしか見えない。

「お前は、ムーサー本人で良いのか。」

「質問しているのは私よ。お前達は何者なの。」

駄目だな。俺では、この手の女から答えを導き出す事は出来ないだろう。
捕まえるしかないか。
俺達が答え無いと分かると、周りからニタニタ笑っている武装した男達が出てきた。
闇の魔力で気配を隠していたみたいだ。

「もしかして、俺達は誘き寄せられたのか。」

「彼等は操られている訳ではなさそうだね。」

浩司と俺の会話を聞いた男の1人が

「悪いな、お前達を殺すだけで良い金になるんだよ。」

ナターシャにしか用が無いというのに、何でこんなのが出てくるんだ。

「浩司、こいつらの相手を任せても良いか。ヤマト、ナターシャを捕まえるのを手伝って。」

「任せろ。でも拓ちゃんを殺そうと企んだんだ。生死は問わないでくれよ。」

浩司の魔力が膨れ上がり、

「ライトニング」

男達の上に雷が降りそそぎ、男達が倒れる中、俺はナターシャに攻撃を仕掛けた。

「ここまでの攻撃力を持っていたなんて想定外だったわ。」

「お前に言われたくないよ。」

攻撃を仕掛けたにもかかわらず、俺はナターシャの攻撃を防ぐのに精一杯だ。
背後からヤマトがエアカッターを放つが全て避けられてしまう。

「幾ら、広範囲の攻撃が出来ても体術でなら対応出来そうね。」

距離を取ろうとしてもナターシャが離れず攻撃をおこなってくる。
強い。と言うより、俺が弱すぎるのか。
着ぐるみで防げているが、全く攻撃が当たらない。

『浩司、声を出さずに儂の言うタイミングで雷を落とすんじゃ。拓なら心配無い。』

グリムの掛け声で俺とナターシャに雷が落ちた。
俺はシールドで守ったが、ナターシャは突然の雷を避けきる事が出来なかった。
その隙に俺はナターシャと距離を取ると、大量のレイアローを打ち込んでいく。

「こんな大量のレイアローなんて。本当に人間なの。」

レイアローを止めた後には血だらけになったナターシャが立っていた。
ナターシャが何かを唱えると彼女は闇に覆われる。

『まただにゃ。前と同じ様に逃げられてしまうにゃ。』

バラン将軍の推測では、ナターシャは気配を周囲に同化させて姿を完全に隠してしまう。
見つける事が出来ないのなら、俺は光と闇の2対の短剣を地面に刺して結界を発動させてこの付近一体を囲む「夜桜」
闇が消えるとナターシャの姿が無くなっていた。

「ヤマト来い。頼む浩司。」

俺とヤマトは自分達の周りに2重に夜桜を発動させると浩司が結界の中を炎で充満させる。
炎の中からナターシャの悲鳴が聞こえてくる。
浩司の魔法を止め俺はダークバインドで火傷を負ったナターシャを捕えた。
転がっていた男達も炎に巻き込まれたが、この女が捕まえられればどうでもいい。

戦いの魔力を感じて兵士か冒険者がやってくる。
ナターシャの動きをダークマインドで封じていると、いきなりナターシャの魔力が膨れ上がるのを感じた。

『魔力暴走じゃ。拓、シールドで囲むんじゃ。』

ダークバインドを解き、直ぐにシールドで囲むと空に向かって光の柱が立った。
ナターシャから、何も話しを聞き出す事が出来なかった。その事をリッチに謝ると

『仕方が無いそうにゃ。それに、本人かどうか判断がつかないそうにゃ。』

2000年前の人間が生きているなんて有るだろうか。
そっくりでも、ナターシャはムーサーの血筋と考えた方が自然だろう。
永遠の命なんて考えただけでもゾッとする。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結

異世界でゆるゆる生活を満喫す 

葉月ゆな
ファンタジー
辺境伯家の三男坊。数か月前の高熱で前世は日本人だったこと、社会人でブラック企業に勤めていたことを思い出す。どうして亡くなったのかは記憶にない。ただもう前世のように働いて働いて夢も希望もなかった日々は送らない。 もふもふと魔法の世界で楽しく生きる、この生活を絶対死守するのだと誓っている。 家族に助けられ、面倒ごとは優秀な他人に任せる主人公。でも頼られるといやとはいえない。 ざまぁや成り上がりはなく、思いつくままに好きに行動する日常生活ゆるゆるファンタジーライフのご都合主義です。

異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい

ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。 強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。 ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。

母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)

いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。 全く親父の奴!勝手に消えやがって! 親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。 俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。 母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。 なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな? なら、出ていくよ! 俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ! これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。 カクヨム様にて先行掲載中です。 不定期更新です。

~クラス召喚~ 経験豊富な俺は1人で歩みます

無味無臭
ファンタジー
久しぶりに異世界転生を体験した。だけど周りはビギナーばかり。これでは俺が巻き込まれて死んでしまう。自称プロフェッショナルな俺はそれがイヤで他の奴と離れて生活を送る事にした。天使には魔王を討伐しろ言われたけど、それは面倒なので止めておきます。私はゆっくりのんびり異世界生活を送りたいのです。たまには自分の好きな人生をお願いします。

『特別』を願った僕の転生先は放置された第7皇子!?

mio
ファンタジー
 特別になることを望む『平凡』な大学生・弥登陽斗はある日突然亡くなる。  神様に『特別』になりたい願いを叶えてやると言われ、生まれ変わった先は異世界の第7皇子!? しかも母親はなんだかさびれた離宮に追いやられているし、騎士団に入っている兄はなかなか会うことができない。それでも穏やかな日々。 そんな生活も母の死を境に変わっていく。なぜか絡んでくる異母兄弟をあしらいつつ、兄の元で剣に魔法に、いろいろと学んでいくことに。兄と兄の部下との新たな日常に、以前とはまた違った幸せを感じていた。 日常を壊し、強制的に終わらせたとある不幸が起こるまでは。    神様、一つ言わせてください。僕が言っていた特別はこういうことではないと思うんですけど!?  他サイトでも投稿しております。

処理中です...