上 下
297 / 744

297新規開発品3

しおりを挟む
******(レオ)

「本格的に凝るのはその後だ。」という拓ちゃんの言葉に驚いた。
完成したと思っていたが、ベースが出来ただけで本番はこれからなのか。
新しく出来たカレーライスを皆が食べ終わり、浩司と拓ちゃんが具の種類や味、考えているカレーライス以外のバリエーション等を色々と話してくれた。
それをノートに記録し、今まで作ってきた試作品の結果を見ていると味のイメージが広がっていく。
考え付くレシピのアイディアを忘れない様に全て書き込んでおく。

「もう遅いぞ。そろそろ寝たらどうだ。」

ガラに声を掛けられるまで気が付かなかったが、もう深夜になっていた。

「もう、こんな時間か。試してみたいアイディアを忘れない内にもう少し書き留めておくよ。」

「そう言えば、食事の後に拓と浩司がカレーについて熱弁してたよな。」

「本当に、あの2人は凄いよ。
 言われた事と、今までやって来た事を見直すと、新しい味のヒントが色んな所に隠れている。」

「今回はレオがカレーを完成させたんだろ。」

「浩司と拓ちゃんの求めている味がイメージ出来たからな。
 このノートを見ろよ。カレーのレシピを考えるのに、ここまで細かく研究しているんだ。
 これが有ったから、俺でも完成させることが出来たんだよ。」

ガラは渡したノートを見ると、研究資料とも言えそうな記述に感心している。
細かいコメントまで書いて有り、分かりやすい。

「拓が新しい料理を作る時は、必ずレオを呼んでいるよな。
 驚かせる事が好きなのに、料理だけはレオに隠した事が無い。
 浩司もデザートの作り方だけでなく、デコレーションの仕方を惜しげも無く説明するし。
 自分経ちの知っているレシピを全て教えようとしているな。」

「俺もそう思う。本当に何でだろうな。」

「気になるなら、本人達に聞いてみたらどうだ。」

俺の何を気に入ってくれているのだろうか。
出会ってから、数え切れないほどのレシピを教えてもらった。
情けない話、何度も聞いてみたいと思いつつ、怖くて聞けなかった。
もし、俺が獣人ということで情けで教えてくれていると言われたらどうしたらいいか。
あの2人なら、そんな事は無いと思うが口に出せない。

「今日、カレーが出来上がった時、世界一の料理人って言われていただろ。
 拓の奴、それ本気で思っているぞ。」

「本当にそうなのか。俺の料理は教えてもらった事ばかりだ。
 それなのに、世界一なんてあり得るのか。」

そう言った俺に、ガラは

「拓が認めたんだから自信を持てよ」

と笑っていた。こいつは、昔からそうだ。前向きで俺の不安を笑い飛ばす。

「なぁ、レオが料理人を目指すように、俺はAランクの冒険者を目指そうと思う。
 俺達がOZとして活動を続けて行くには、その位目指した方が良いだろ。
 俺がそれだけの実力を付けられるのかは分からないけどな。
 じゃあ、先に寝るな。」

ガラは、それだけを言って自分の部屋へ戻って行った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

転生受験生の教科書チート生活 ~その知識、学校で習いましたよ?~

hisa
ファンタジー
 受験生の少年が、大学受験前にいきなり異世界に転生してしまった。  自称天使に与えられたチートは、社会に出たら役に立たないことで定評のある、学校の教科書。  戦争で下級貴族に成り上がった脳筋親父の英才教育をくぐり抜けて、少年は知識チートで生きていけるのか?  教科書の力で、目指せ異世界成り上がり!! ※なろうとカクヨムにそれぞれ別のスピンオフがあるのでそちらもよろしく! ※第5章に突入しました。 ※小説家になろう96万PV突破! ※カクヨム68万PV突破! ※令和4年10月2日タイトルを『転生した受験生の異世界成り上がり 〜生まれは脳筋な下級貴族家ですが、教科書の知識だけで成り上がってやります〜』から変更しました

~クラス召喚~ 経験豊富な俺は1人で歩みます

無味無臭
ファンタジー
久しぶりに異世界転生を体験した。だけど周りはビギナーばかり。これでは俺が巻き込まれて死んでしまう。自称プロフェッショナルな俺はそれがイヤで他の奴と離れて生活を送る事にした。天使には魔王を討伐しろ言われたけど、それは面倒なので止めておきます。私はゆっくりのんびり異世界生活を送りたいのです。たまには自分の好きな人生をお願いします。

公爵家三男に転生しましたが・・・

キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが… 色々と本当に色々とありまして・・・ 転生しました。 前世は女性でしたが異世界では男! 記憶持ち葛藤をご覧下さい。 作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
結婚式の日の夜。夫のイアンは妻のケイトに向かって「お前を愛するつもりはない」と言い放つ。 ケイトは知っていた。イアンには他に好きな女性がいるのだ。この結婚は家のため。そうわかっていたはずなのに――。 ※短いお話です。 ※恋愛要素が薄いのでファンタジーです。おまけ程度です。

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので

sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。 早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。 なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。 ※魔法と剣の世界です。 ※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

追放シーフの成り上がり

白銀六花
ファンタジー
王都のギルドでSS級まで上り詰めた冒険者パーティー【オリオン】の一員として日々活躍するディーノ。 前衛のシーフとしてモンスターを翻弄し、回避しながらダメージを蓄積させていき、最後はパーティー全員でトドメを刺す。 これがディーノの所属するオリオンの戦い方だ。 ところが、SS級モンスター相手に命がけで戦うディーノに対し、ほぼ無傷で戦闘を終えるパーティーメンバー。 ディーノのスキル【ギフト】によってパーティーメンバーのステータスを上昇させ、パーティー内でも誰よりも戦闘に貢献していたはずなのに…… 「お前、俺達の実力についてこれなくなってるんじゃねぇの?」とパーティーを追放される。 ディーノを追放し、新たな仲間とパーティーを再結成した元仲間達。 新生パーティー【ブレイブ】でクエストに出るも、以前とは違い命がけの戦闘を繰り広げ、クエストには失敗を繰り返す。 理由もわからず怒りに震え、新入りを役立たずと怒鳴りちらす元仲間達。 そしてソロの冒険者として活動し始めるとディーノは、自分のスキルを見直す事となり、S級冒険者として活躍していく事となる。 ディーノもまさか、パーティーに所属していた事で弱くなっていたなどと気付く事もなかったのだ。 それと同じく、自分がパーティーに所属していた事で仲間を弱いままにしてしまった事にも気付いてしまう。 自由気ままなソロ冒険者生活を楽しむディーノ。 そこに元仲間が会いに来て「戻って来い」? 戻る気などさらさら無いディーノはあっさりと断り、一人自由な生活を……と、思えば何故かブレイブの新人が頼って来た。

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

処理中です...