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281黒死病

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「2人は何の用事でブルネリ公爵の所に行く予定だったんだ?」

浩司が尋ねると、スミスさんとアドルさんがお互いの顔をみて答えてくれた。

「俺達の村で病気が流行り、ブルネリ公爵にお願いをしに行く所だった。
 あの方なら、もしかしたら俺達を助けてくれるかも知れない。」

患者の状態を聞くと、目の色が赤くなると発熱、嘔吐、下痢が始まり、最後は強い痛みが全身を襲い殆どの人が無くなっている。

『黒死病の症状じゃな。感染力の高い厄介な病気じゃ。
 悪化すれば薬は効かず、助かるのは極わずかじゃ。
 服装と、ペンダントの魔道具によるシールドで自分への感染は防げるじゃろう。
 症状が酷くなる前なら拓の持っている薬で有る程度の対応は出来るはずじゃ。』

最悪、薬で感染が広がらない様に抑える事は出来るか。
助かる人が居るという事は、脱水症状を何とかできれば生き残れるかも知れない。

「拓ちゃんは先に行ってろよ。俺は、この人達をブルネリさんの所に案内したら直ぐに行く。
 脱水症状になっているなら普通の水じゃだめだ。水に塩を砂糖を混ぜた方が良い。」

浩司が経口保水液の作り方を教えてくれた。真夏にラグビーを行う時に用意していたそうだ。
俺は頷くと地図を取り出し

「村の場所を教えて下さい。俺はこれでも薬の知識が有ります。
 もしかすると、少しは役に立つかもしれません。」

2人に村の場所を教えてもらい、俺は先に村に行く事にした。

『にゃら、吾輩は拓に付いて行くにゃ。1人だと心配だからにゃ。』

ヤマトが俺の頭の上に登って来る。
俺とグリムとヤマトは人気のない場所まで移動すると、エアウォークで一気に街道に沿って森の上を駆け抜けた。

「たぶん、あの村だね。村全体の空気が濁っているよ。」

村の門の所までやって来たが、閉まったままだ。

「止まれ。お前は誰だ」

見張り台からネコ族の男が声をかけてきた。

「スミスさんとアドルさんに聞いて、手伝えるかも知れないので来た冒険者の拓と言います。」

「2人はブルネリ公爵と連絡が付いたのか。」

「俺が会ったのは、マクニス王国まで5日位かかる街道です。」

「そうか。拓殿、気持ちは嬉しいが、このまま帰ってくれ。君の様な子供を危険に侵す訳にはいかない。」

「病気から身を守る服装を用意しています。
 薬の知識があるので少しは役に立てます。」

ネコ族の男は少し考え、門を開いてくれた。
俺は中に入る前にマスク、手袋を付けた。ヤマトには中の状況が分かるまで、外で待機してもらう。
入り口の所にいた獣人に連れて行ってもらったのは、村の中央にある建物だ。
中は大勢の病人が嘔吐と下痢で酷い状態になっている。

『これは酷い。周りの者に感染しない様に、発病者をこの建物に閉じ込めたんじゃ。』

グリムの指示に従い、患者の1人を確認すると、やはり黒死病だった。
嘔吐物や便に触れて体内に取り込まれれば、感染が広まってしまう。

「村長、もしくは、村の代表者は居ますか。」

病気について説明し、
村の外れの区画に立入禁止区域を用意してもらい嘔吐物や便を破棄する穴を掘ってもらう様に指示を出した。
亡くなった方は直ぐに埋めて貰い、健康な人達には体を綺麗に洗ってもらう。

その間に、俺は水分補給用に水に塩と砂糖を混ぜて経口保水液を作っておく。
準備が出来た所で重病患者から、体を洗って立入禁止区域へと運んでもらう。
手伝ってくれる人達にもマスクと手袋を付けてもらった。

「そこに用意した飲み物を飲ませてください。汚物は全て穴に捨てるように。
 必ず部屋を綺麗な状態に維持するよう気を付けて。
 症状の軽い人には薬を飲ませて休ませて。治ったと思っても2週間は別の場所に隔離を。
 その間の汚物も全て穴に捨てて下さい。
 床が汚れた場合は、直ぐにこちらの薬で拭いてください。
 感染する危険が有るので、絶対に放置しない様に。」

皆に指示を出した後、重病患者から処置を始めた。
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