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272窯
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経済が回らなくなり、商人も冒険者も来なくなってしまった。
領地を視察した後、休む間もなく直ぐに対策会議が行われている。
町の状況を聞いて俺なりに準備してきた対応策をOZのメンバーに提案してみると、エチゴさんが商人としてロダン侯爵と話をまとめてくれる事になった。
会議が休憩に入ったとき、会議に出席していたセバスチャンに説明を行うと、エチゴさんが話す時間を設けてくれた。
俺が用意したのは火の魔道具
前に、ピース医師とトリス練成術師に呪詛返しの腕輪を作った時に、ブルネリ公爵から頂いた物の中に入っていた魔石を使って作った物だ。
エチゴさんが話をまとめてくれ、魔道具の性能を試す事になった。
直ぐに、陶器を作る職人が呼ばれ、窯に魔道具の設置を行う。
「若い技術者だが、大丈夫か。」
俺を見た職人は心配しているみたいだが、窯に魔道具の設置作業を始めると納得してくれたみたいだ。
「名前は何という。」
「拓です。」
俺の名前を聞いた職人の動きが止まってしまった。どうしたのかと思っていたが
「すまない。俺は陶器職人のまとめ役をしているゲオルグだ。宜しく頼む。」
お互いに挨拶を済ますと、魔道具の動作を確認しゲオルグ親方の要求に合わせるように調整を行っていく。
設定が終わった所で、実際に職人に魔道具も魔力供給を行ってもらうと10人位でローテーションを組めば問題なさそうだった。
直ぐに職人達は陶器の準備を始めてもらったが、乾燥は俺が錬成術で行うとしても、実際に焼いて結果を出すまで10日はかかる。
その上、動作確認の試し焼きの予定のはずが
「すまない、拓殿。動作確認と言っておいたんだが、張り切ってしまって。
1年以上干されていたんで、儂も強く言えなくてな。」
全員が、本気で作品作りを行い始めてしまい焼く物の準備に4.5日はかかってしまうらしい。
そんな事を言っているゲオルグ親方自身も真剣に作品に取り組んでいる。
部屋の中は張り詰めた空気となっているので、完成したら呼んでもらう事にした。
1週間経ち、やっとゲオルグ親方か完成したとの連絡があった。
練成術で乾燥させ、素焼きを行い釉薬がけをして本焼き。
問題が起きた時に対応する為、窯を使っている間は、俺も直ぐ側で生活をする。
そして、いよいよ出来上がった陶器を取り出す日がやってきた。
窯の周りには職人だけでなく、ロダン侯爵やルーカスさん、セバスチャン、クリームのメンバーも集まっている。
臭いが抜けるまで隔離されているモーゼスさんとジークフリートさんも、この日位はと目の部分以外を完全に覆った怪しげな服装で参加している。
ただ可哀そうに、それでも彼等の周辺には他人は近付こうとはしない。
「よし、窯から取り出すぞ。」
ゲオルグ親方の掛け声で陶器の取り出すと、窯の何処に置いたかチェックしながら、1点1点、陶器の完成度を確認している。
そして、全ての陶器の確認を終えると
「窯の全ての場所に炎が回っている。製品全てが合格だ。」
「「「お~~~」」」
その場にいた全員から喜びの声が上がった。職人の中には泣いている人も居る。
ゲオルグ親方がロダン侯爵の前に来て礼をした。
「ロダン様、この魔道具を使った窯を使用出来る様に、取り計らって頂けないでしょうか。
どうか宜しくお願い致します。」
「ゲオルグ、分かっている。頭を上げてくれ。
エチゴ殿、この魔道具を使用する為の契約を正式に取り交わしたいのだが宜しいだろうか。」
エチゴさんが契約書を取り出すと、この場で契約が交わされた。
成功を見越して、契約を交わす準備をしていたみたいだ。
エチゴさんからの要求事項は4つ
1.今度ロダン伯爵領で作られる陶磁器の販売をエチゴ屋が優先的に取り扱う事が出来る。
ただし、独占販売ではない。
2.売り上げの3割をエチゴ屋、7割をロダン侯爵の取り分とする。
ブルネリ公爵領までの商品輸送にかかる費用はロダン侯爵が引き受ける。
双方の合意が取れた場合には、この限りでは無い
3.魔道具の使用料として年間 白金貨1枚を別途支払う。
期限は5年間とし、それ以降はロダン侯爵に譲渡するものとする。
4.500個の陶磁器を無料で提供する事。
この内容で、ロダン侯爵が受け取るのは火の魔道具5つ。
ロダン侯爵にとっては破格の好条件と言える。
取り分も一般的な割合で、相手の足元を見る様なマネはしていない。
魔道具の使用料も、結局は分割購入でしかない。しかも、性能を考えると入手する事自体が難しい魔道具だ。
使用できる窯の数は減ってしまうが、燃料を気にせずに稼働できるなら今まで以上の生産量を確保できる。
交わした契約書を見て、職人達から大きな歓声が上がった。
領地を視察した後、休む間もなく直ぐに対策会議が行われている。
町の状況を聞いて俺なりに準備してきた対応策をOZのメンバーに提案してみると、エチゴさんが商人としてロダン侯爵と話をまとめてくれる事になった。
会議が休憩に入ったとき、会議に出席していたセバスチャンに説明を行うと、エチゴさんが話す時間を設けてくれた。
俺が用意したのは火の魔道具
前に、ピース医師とトリス練成術師に呪詛返しの腕輪を作った時に、ブルネリ公爵から頂いた物の中に入っていた魔石を使って作った物だ。
エチゴさんが話をまとめてくれ、魔道具の性能を試す事になった。
直ぐに、陶器を作る職人が呼ばれ、窯に魔道具の設置を行う。
「若い技術者だが、大丈夫か。」
俺を見た職人は心配しているみたいだが、窯に魔道具の設置作業を始めると納得してくれたみたいだ。
「名前は何という。」
「拓です。」
俺の名前を聞いた職人の動きが止まってしまった。どうしたのかと思っていたが
「すまない。俺は陶器職人のまとめ役をしているゲオルグだ。宜しく頼む。」
お互いに挨拶を済ますと、魔道具の動作を確認しゲオルグ親方の要求に合わせるように調整を行っていく。
設定が終わった所で、実際に職人に魔道具も魔力供給を行ってもらうと10人位でローテーションを組めば問題なさそうだった。
直ぐに職人達は陶器の準備を始めてもらったが、乾燥は俺が錬成術で行うとしても、実際に焼いて結果を出すまで10日はかかる。
その上、動作確認の試し焼きの予定のはずが
「すまない、拓殿。動作確認と言っておいたんだが、張り切ってしまって。
1年以上干されていたんで、儂も強く言えなくてな。」
全員が、本気で作品作りを行い始めてしまい焼く物の準備に4.5日はかかってしまうらしい。
そんな事を言っているゲオルグ親方自身も真剣に作品に取り組んでいる。
部屋の中は張り詰めた空気となっているので、完成したら呼んでもらう事にした。
1週間経ち、やっとゲオルグ親方か完成したとの連絡があった。
練成術で乾燥させ、素焼きを行い釉薬がけをして本焼き。
問題が起きた時に対応する為、窯を使っている間は、俺も直ぐ側で生活をする。
そして、いよいよ出来上がった陶器を取り出す日がやってきた。
窯の周りには職人だけでなく、ロダン侯爵やルーカスさん、セバスチャン、クリームのメンバーも集まっている。
臭いが抜けるまで隔離されているモーゼスさんとジークフリートさんも、この日位はと目の部分以外を完全に覆った怪しげな服装で参加している。
ただ可哀そうに、それでも彼等の周辺には他人は近付こうとはしない。
「よし、窯から取り出すぞ。」
ゲオルグ親方の掛け声で陶器の取り出すと、窯の何処に置いたかチェックしながら、1点1点、陶器の完成度を確認している。
そして、全ての陶器の確認を終えると
「窯の全ての場所に炎が回っている。製品全てが合格だ。」
「「「お~~~」」」
その場にいた全員から喜びの声が上がった。職人の中には泣いている人も居る。
ゲオルグ親方がロダン侯爵の前に来て礼をした。
「ロダン様、この魔道具を使った窯を使用出来る様に、取り計らって頂けないでしょうか。
どうか宜しくお願い致します。」
「ゲオルグ、分かっている。頭を上げてくれ。
エチゴ殿、この魔道具を使用する為の契約を正式に取り交わしたいのだが宜しいだろうか。」
エチゴさんが契約書を取り出すと、この場で契約が交わされた。
成功を見越して、契約を交わす準備をしていたみたいだ。
エチゴさんからの要求事項は4つ
1.今度ロダン伯爵領で作られる陶磁器の販売をエチゴ屋が優先的に取り扱う事が出来る。
ただし、独占販売ではない。
2.売り上げの3割をエチゴ屋、7割をロダン侯爵の取り分とする。
ブルネリ公爵領までの商品輸送にかかる費用はロダン侯爵が引き受ける。
双方の合意が取れた場合には、この限りでは無い
3.魔道具の使用料として年間 白金貨1枚を別途支払う。
期限は5年間とし、それ以降はロダン侯爵に譲渡するものとする。
4.500個の陶磁器を無料で提供する事。
この内容で、ロダン侯爵が受け取るのは火の魔道具5つ。
ロダン侯爵にとっては破格の好条件と言える。
取り分も一般的な割合で、相手の足元を見る様なマネはしていない。
魔道具の使用料も、結局は分割購入でしかない。しかも、性能を考えると入手する事自体が難しい魔道具だ。
使用できる窯の数は減ってしまうが、燃料を気にせずに稼働できるなら今まで以上の生産量を確保できる。
交わした契約書を見て、職人達から大きな歓声が上がった。
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