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270ジェニファーさんの3文芝居

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ロダン侯爵の従者だけでは、治療で使っている魔道具への魔力供給は大変で、クリームやアークが自主的に手伝ってくれるのだが・・・

「レオさん、私達はロダン侯爵に色々とお世話になった事が有ります。
 なので、魔力供給は完璧に行いたいと思っています。
 完璧な魔力供給の為には、完璧な食事が必要ではないでしょうか。」

またしてもジェニファーさんの3文芝居が始まった。
いつの間にか白衣を着ているので今回は医者の役なのだろうか?
更にメガネまで・・・こんな小道具を何時用意しているのだろう?
それにしても、完璧な食事って何を強請る気だ?

ロビン「そうね。やはり栄養は必要ね。私も魔力を供給しながら気になっていたわ。」

トム「拓君。確か、鰻重は栄養が豊富なんだよね。何でも夏バテにも効果が絶大とか。」

ニコラス「そうか、夏バテにも効くなら、魔力供給にも効果が有りそうだな。」

ジーク「それにロダン侯爵も回復してきた。ここは鰻重で体力を付けてもらった方が良くないだろうか。」

アークのメンバからは「そうだな」「確かに効果が有りそうだ」「良い考えじゃないか」等とワザとらしい相槌。
今回はクリーム、アーク全員での3文芝居だった。それも、思いっきり下手。

『こいつ等は、本当に優秀な冒険者なのにゃ。とっても、情けないにゃ。』

『そうじゃな。幾らなんでもこれは無いじゃろう。
 演技もそうじゃが、誰が脚本を考えたんじゃ。人として恥ずかしいぞ。』

ヤマトとグリムから完全なる駄目出し。
脚本を考えたのはジェニファーさんだろう。他の人達も、良くこんな脚本に乗ったよな。
ロダン侯爵の従者の方々も、余りにも酷い3文芝居にどう反応して良いのか分からないみたいだ。

「皆、大変だよな。良し、今夜は全員に鰻重を用意するので楽しみにしてくれ。」

レオが優しい事を言うので、皆が喜んで大変だ。
きっと、こうやって甘やかすことで、ジェニファーさんの3文芝居が悪化して行くのだろう。

「おい、喜んでくれるのは嬉しいが、病人が居る事を忘れるなよ。」

直ぐにレオにたしなめられる。この人達、本当にAランクの冒険者なのだろうか。
他の冒険者から憧れを持って見られている様には全く見えない。


全員、徐々に体調が良くなり、ルーカスさんの毒が体から完全に抜けた。
もう少し様子を見て問題が無ければクリームの護衛で先に領地へ戻り、復興の指揮をとる。
既にギリス教は追い出し、復興への下地は整えてある。
他の従者の人達も一緒に戻る事になり、移動の馬車はブルネリ公爵が用意してくれた。
クリームの護衛費用もブルネリ公爵から出ている。
ルーカスさんとの打ち合わせも終わり、家に戻って来た所で

「クリームの皆さん、これを受け取ってもらえますか。」

渡したのは拡張バッグ。以前倒したジャイアントコングの皮で造ってある。
拡張バッグの性能を確認すると

「待ってくれ、こんな凄いのはもらう事が出来ない。」

当然の様に、ジークさんが断ってくる。しかし

「もちろん、俺にも下心が有って渡します。
 魔獣の骨をもっと欲しいのと、クリームが旅先で見つけた珍しい食材を持って来て欲しいです。
 一応、それなりの容量はあるので、ある程度の食材を入れるスペース位は確保できると思います。
 骨は、ラグテルの町に居る時だけで良いのでどうでしょう。
 食材はお土産として購入費はクリーム持ちって事で。」

クリームが俺に礼を言って受け取ったので、5人しか使えない様に所有者の縛りの魔法をかける。

「レオが移動中の食事を用意してくれているので、後で受け取って下さい。
 ロダン侯爵の従者の分もあるので量が多いですが、その拡張バッグなら問題無いですから。」

ロダン侯爵の様態も落ち着き、従者の人達も先に戻って領地の復興に尽力することになっている。
しかし、クリームのメンバーは俺の拡張バッグよりレオの料理の方が喜び方が凄い。
世間の常識だと、拡張バッグの方が特殊なはずなのに・・・
デザートも作っていたけど、すべて奪ってしまおうか。

「いや、拓が用意してくれた拡張バッグの方が凄いのは分かっているんだ。
 ただ凄過ぎて、レオの料理の方が現実味が有ると言うか…」

俺は何も言っていないのに、何故ジークさんが言い訳めいた事を言うのだろう。

「拓ちゃん、顔に出過ぎ。俺だって拓ちゃんの考えている事くらい分かるよ。」

横で見ていた浩司が、俺のほっぺたを引っ張りながら笑っている。
何時も俺の考えが読まれているよな。少し、ポーカーフェイスが出来るように練習した方が良いか。

「拓ちゃんは、そのまま分かり易い方が良いよ。その方が嬉しいしな。」

浩司は俺を見て笑っている。
またしても、浩司に考えを読まれた。本当は俺の考えが聞えているんじゃないだろうか。


そして、いよいよ出発の日が来たが

「結局、ルーカスさんの臭いはとれなかったね。」

ギリギリまで、体を洗い続けていたが、薬草の臭いがとれず、近付くと臭い。
本人は鼻が慣れてしまい分からないみたいだ。

「食事は十分に余裕があります。予定を変更して、町に寄らずに帰る事にしましょう。
 なに、移動の間に臭いは落ちますよ。」

ジークさんはそう言うが、今の状態を見るに、1ヶ月は臭いは取れないんじゃないだろうか。
健康なので問題はないし、クリームも旅の間になれるだろう。
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