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250料理の技術

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ヤマトが俺の所に来てサリナ姫が少し残念そうにしているが、それよりも気になるのは出された菓子。

「チョコレートが出てくると言う事は、もう市場に出はじめたのですか。」

待ち望んでいたチョコレートだった。
ガラとアルは酒に合うと言って、つまみとして食べ、浩司はチョコレートのお菓子を作りまくり、レオは隠し味として色々と試す。
エチゴさんですら、おやつと言っては嬉しそうに食べている。
そんな状態だったので頂いたチョコは直ぐに無くなり、出たら直ぐに買おうと考えていた所だった。

「未だ市場には出回っていないわね。
 チョコレートを出して頂けたのは、クロイツ伯爵が輸入を行っているからよ。」

と、サリナ姫から新しい情報が出てきた。

「OZの皆さんは、チョコレートを気に入ってくれているそうですね。
 妻を直して頂いたお礼として、定期的にチョコレートを渡したいと思いますが如何ですか。」

その提案に飛びつきたかったが、それは良くないな。

「その提案は嬉しいですが、それでは受け取り過ぎです。
 良ければ、定期的に売って頂けないでしょうか。」

ロゼ夫人が口に手を当て笑っている。

「拓さんが売ってくれるように言われるなんて、本当にサリナ様の言われる通りですね。」

「分かりました。皆さんが欲しい量を優先的に売らせてもらいます。」

クロイツ伯爵に価格を伺うと、多分卸値に近い値段で売ってくれるみたいだ。
ロゼ夫人の体調を確認して夕飯前に帰るつもりだったが

「是非、一緒に夕飯を如何ですか。今日は、私達の一番気に行っている料理を用意してます。」

お勧めの食事が出て来るとは、サリナ姫から俺達の事を聞いているのだろう。
バラン将軍が横でいつもの通り笑っているのを見ると、情報源はバラン将軍かもしれないな。
夕食までの間に、ロゼさんの体を調べさせてもらう事にした。
部屋に移動すると、ブルネリ公爵の屋敷で会ったメイドが待機していた。
水晶の球を使い、体の魔力を整えてみると以前とは違い、濁った気は殆ど出て来ない。

「良かった、問題ないですね。」

「ありがとうございます。優秀なお医者様に見て頂けて助かりましたわ。」

「そうですね。ピース医師に診察して頂けるなら安心です。」

ロゼ夫人が困った様に俺を見るが、特に何を言うわけでもなかった。
メイドの女性もニコニコしているだけで、何も言わない。
何か変な事を言ってしまったのだろうか。

食事の時間になり食堂に行くと、俺の横にヤマトの席まで用意してくれていた。
お勧めの夕食は魚メインの料理だ。
シンプルだけど美味しい。
シンプルな料理を美味しく作れるのは料理人の腕だ。
俺には知っている料理レシピを教える事が出来ても、伝えられる技術が無い。

「如何ですか。今日の料理は口に合いましたか。」

「凄く美味しいです。こんなに美味しい魚料理が食べられるとは思いませんでした。」

「気に入って頂けて良かった。」

食事の後、料理人の方が挨拶に来てくれた。
レオの本を読んでいて、今日の料理は是非ともレオに味わってもらいたかったそうだ。
俺達にお辞儀をして調理場へと帰って行った。


夕食も終わり、城の入り口までサリナ姫を送り届けたあと、騎士団寄宿舎へ歩きながらレオに話しかける

「本格的に料理人を目指すなら、誰かに付いて学んだ方が良くないか。
 ブルネリ公爵の所で、料理人を雇う気は無いか聞いてみようか。」

「もしかして、料理技術を身につけた方が良いと思っているのか。」

「そう、俺達が教えられるのはレシピの知識しか無いから。
 今日みたいな料理を作れるようになるには本格的な技術を持っている人に付いた方が良いと思う。」

「ありがとう、拓ちゃん。でも、その気は無いよ。
 以前、ルドルフ料理長に自分の元で働いてみないかと誘われた事が有ったんだ。」

「そんな、凄いチャンスがあったのか。」

「そうだな。信じられない程の凄いチャンスだと思う。でも断ったよ。
 俺は、拓ちゃんと浩司から教わった料理を元に技術を磨く。ルドルフ料理長にそう言ったら、
 『師匠は拓殿か。だったら、一緒に料理を作らないか。それなら師匠を裏切る事にはならないだろ。』
 と言ってくれたよ。本当に凄い人だよな。」

そっか。ルドルフ料理長がそんな事を言ってくれたんだ。本当にありがたいな。

「ほう、あのルドルフ料理長にそんな事を言われるなんて凄いな。
 そう言えば、今回の死者の洞窟についてはブルネリ公爵も気にされていた。
 報告しにブルネリ公爵の所に行ってみてはどうだ。
 行くなら、私の方からブルネリ公爵に連絡を入れておこう。」

バラン将軍の提案を受け入れ、3日後にブルネリ公爵の所に行く事にした。
俺は、その3日の間にバラン将軍の部下の持っている剣のブローチを集めて改造を始めた。
バラン将軍の部下が軍服に付けているため、ブローチがバラン将軍の部隊のトレードマークになっているらしい。
製作者としては、部下の兵士の方々が付けている玩具に毛が生えた程度のブローチを何とかしたかった。
バラン将軍は断ろうとしてきたが、これは製作者としてのプライドの問題なのでゴリ押しさせてもらう。
ついでに金の線を入れて、少し高級感を出してみる。

「それにしても、拓ちゃんって拘るな。まぁ、拘るから技術者なのか。」

浩司が呆れている様に言うくせに、嬉しそうに俺の作業を眺めている。
やりたい事を終えた時には、ブルネリ公爵から、OZが来るのを歓迎するとの報告を頂いていた。
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