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244勇者への裏切り
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「先ほどは、すまなかった。
アンデットになってから人間と会うのは初めての為、勝手が分からなかった。」
「魔力酔いみたいですから、外で休んでいれば問題無いでしょう。で、話したい事とは何ですか。」
「外で浄化の魔法を連続で使い続けていたのは、お主で良いのか。」
「確かに連続で使っていましたが」
もしかして、仲間を浄化されたことを怒っているのか。
「では頼む。ここに居るアンデット達を浄化してもらえないだろうか。
お主の浄化の魔法は、心地良い魔力だった。私の仲間への呪いを断ち切り安らかに眠らせて欲しい。」
「この状態は、呪いで人がアンデットになったと言うんですか。」
「そうだ。私達は、勇者様への裏切りの代償としてアンデットになった。
アンデットになった我々は、自分達では死ぬ事が出来ない。我が願いを叶えて頂けないだろうか。」
「勇者だって。じゃあ、貴方は勇者の事を知っているのか。」
「良く知っている。私達は、あの方のお陰で生き抜く事が出来た。」
「しかし、勇者は人々の統治に失敗して争いになったんじゃ・・・」
「違う。出鱈目だ。」
リッチの体から凄まじい魔力が放出され、俺と浩司は強い圧力を感じた。
「すまない。しかし、勇者様の事が、その様に伝わっているのか。」
俺は天地見聞録の内容を説明する事にした。
勇者が救った人々を治めるが、勇者の厳しい統治に人々が不満を抱き始める。
徐々に溝が深くなり、勇者と人々は争う事にまでなり、天使と魔人は勇者と敵対する立場を取る。
長い争いの末、勇者は元の世界に追いやられ、天使と魔人もこの世界から姿を消す。
元の世界に戻った勇者の後を追ったとも解釈されているという事を
「そうか。確かに勇者様は我々を治め、我々はそれに対して不満を抱き始めた。
勇者様は我々を慈悲深く接していて下さった。それなのに何故。
あの時、アブラムやムーサーの言葉を受け入れていれば・・・」
アブラムとムーサーとはリッチの元仲間だそうだ。
魔獣がはびこる世界で、狩られる立場の人間。
人間が持っている力は、ガイアの門が開く前に作られた魔道具と魔法陣の知識。
それも、強力な武器は少なかった。
そんな我々を、勇者様は遺跡の力を使い導いてくれた。
魔人様には我々に戦う術を教て頂き
天使様は我々に呪文による魔法を教えて下さった。
呪文による魔法を使えたのは人間だけで獣人は使う事が出来なかったが、共に手を取り、魔獣を退け、壁を作り、人間が安全に住める場所が出来た。
家を作り、畑を耕し、我々は村を、町を造った。
ムハンマの神殿は、元は光魔法が使える者達が集まった病院だった。
それが、人が集まるようになり、施設が整えられ、いつの間にかムハンマの神殿と呼ばれるようになっていた。
私は魔力が強い事もあり、神官長と呼ばれる立場になった。
そして、生と死、魂について研究するようになり、治療師の他にも研究者が集まる様になった。
ある日、地方で勇者様に対する小さな反乱が起きた。
「勇者が力を独り占めしているから、いつまで経っても魔獣を絶滅させられない。」
それが、反乱を起こした人達の言い分だった。
勇者様の持つ魔道具が有れば、魔獣を絶滅させられると。
確かに、勇者様の魔道具は強い力を秘めていた。
しかし、勇者様は人々の為にその力を使い、自分の為に使う事は無かった。
反乱を起こしている人達はそれを見ていないので、その様な事を言っているのだと思っていた。
反乱が起きる度に、我々が中心となり収めていったが
何時の頃からか、我々の生活が厳しいのは勇者様の所為ではないかと思う様になっていた。
今思い出しても、滑稽な考えだ。
「そんな事、有る訳が無い。勇者様は我々の為に力を使ってくれている。」
研究者として神殿にやって来たアブラムとムーサーが何度も言っていた。
しかし、彼等に言われれば言われるほど疑う様になっていった。
そして最大規模の反乱が起きた。
魔人様や天子様は傷つけ会わない様に勇者様と我々市民の間にたちはだかった。
しかし勇者様は、我々に対し力を振るう事は無かった。
我々だけが、攻撃を仕掛けて続けた。
もう、我々を説得する事は無理だと悟った勇者様は魔人様と天子様と共に、何処かへと去って行った。
柱が交わりし場所に星は輝き
光と闇が交わり、天と地が繋がり、全てが始まりし場所への道を示す
昔、勇者様が仰られていた、帰るべき場所。
全てが始まりし場所に帰ったと噂が流れた。
しかし、その場所が何処に在るのか誰も知る者は居ない。
我々は争いの中で勇者様から魔道具を奪っていた。
その魔道具は、我々では手に負えない重症の患者の治療に使われていた。
私達には扱えきれないと言われ、勇者様だけが使っていた。
何でも、人の魂に干渉する力を持っているという話だった。
やはり、アブラムとムーサーが触らない様に言ってきた。
しかし、言われれば言われるほど反発し、ついに私は魔道具を起動させてしまった。
その結果、凄まじい魔力が放出され、神殿全体を魔法陣が覆った。
その中に居た我々は、全身が分解される様な痛みと共に気を失い、目覚めた時にはアンデットとなっていた。
魔道具を発動させた私は、リッチとなり、こうして長い間ここに留まっている。
アンデットになってから人間と会うのは初めての為、勝手が分からなかった。」
「魔力酔いみたいですから、外で休んでいれば問題無いでしょう。で、話したい事とは何ですか。」
「外で浄化の魔法を連続で使い続けていたのは、お主で良いのか。」
「確かに連続で使っていましたが」
もしかして、仲間を浄化されたことを怒っているのか。
「では頼む。ここに居るアンデット達を浄化してもらえないだろうか。
お主の浄化の魔法は、心地良い魔力だった。私の仲間への呪いを断ち切り安らかに眠らせて欲しい。」
「この状態は、呪いで人がアンデットになったと言うんですか。」
「そうだ。私達は、勇者様への裏切りの代償としてアンデットになった。
アンデットになった我々は、自分達では死ぬ事が出来ない。我が願いを叶えて頂けないだろうか。」
「勇者だって。じゃあ、貴方は勇者の事を知っているのか。」
「良く知っている。私達は、あの方のお陰で生き抜く事が出来た。」
「しかし、勇者は人々の統治に失敗して争いになったんじゃ・・・」
「違う。出鱈目だ。」
リッチの体から凄まじい魔力が放出され、俺と浩司は強い圧力を感じた。
「すまない。しかし、勇者様の事が、その様に伝わっているのか。」
俺は天地見聞録の内容を説明する事にした。
勇者が救った人々を治めるが、勇者の厳しい統治に人々が不満を抱き始める。
徐々に溝が深くなり、勇者と人々は争う事にまでなり、天使と魔人は勇者と敵対する立場を取る。
長い争いの末、勇者は元の世界に追いやられ、天使と魔人もこの世界から姿を消す。
元の世界に戻った勇者の後を追ったとも解釈されているという事を
「そうか。確かに勇者様は我々を治め、我々はそれに対して不満を抱き始めた。
勇者様は我々を慈悲深く接していて下さった。それなのに何故。
あの時、アブラムやムーサーの言葉を受け入れていれば・・・」
アブラムとムーサーとはリッチの元仲間だそうだ。
魔獣がはびこる世界で、狩られる立場の人間。
人間が持っている力は、ガイアの門が開く前に作られた魔道具と魔法陣の知識。
それも、強力な武器は少なかった。
そんな我々を、勇者様は遺跡の力を使い導いてくれた。
魔人様には我々に戦う術を教て頂き
天使様は我々に呪文による魔法を教えて下さった。
呪文による魔法を使えたのは人間だけで獣人は使う事が出来なかったが、共に手を取り、魔獣を退け、壁を作り、人間が安全に住める場所が出来た。
家を作り、畑を耕し、我々は村を、町を造った。
ムハンマの神殿は、元は光魔法が使える者達が集まった病院だった。
それが、人が集まるようになり、施設が整えられ、いつの間にかムハンマの神殿と呼ばれるようになっていた。
私は魔力が強い事もあり、神官長と呼ばれる立場になった。
そして、生と死、魂について研究するようになり、治療師の他にも研究者が集まる様になった。
ある日、地方で勇者様に対する小さな反乱が起きた。
「勇者が力を独り占めしているから、いつまで経っても魔獣を絶滅させられない。」
それが、反乱を起こした人達の言い分だった。
勇者様の持つ魔道具が有れば、魔獣を絶滅させられると。
確かに、勇者様の魔道具は強い力を秘めていた。
しかし、勇者様は人々の為にその力を使い、自分の為に使う事は無かった。
反乱を起こしている人達はそれを見ていないので、その様な事を言っているのだと思っていた。
反乱が起きる度に、我々が中心となり収めていったが
何時の頃からか、我々の生活が厳しいのは勇者様の所為ではないかと思う様になっていた。
今思い出しても、滑稽な考えだ。
「そんな事、有る訳が無い。勇者様は我々の為に力を使ってくれている。」
研究者として神殿にやって来たアブラムとムーサーが何度も言っていた。
しかし、彼等に言われれば言われるほど疑う様になっていった。
そして最大規模の反乱が起きた。
魔人様や天子様は傷つけ会わない様に勇者様と我々市民の間にたちはだかった。
しかし勇者様は、我々に対し力を振るう事は無かった。
我々だけが、攻撃を仕掛けて続けた。
もう、我々を説得する事は無理だと悟った勇者様は魔人様と天子様と共に、何処かへと去って行った。
柱が交わりし場所に星は輝き
光と闇が交わり、天と地が繋がり、全てが始まりし場所への道を示す
昔、勇者様が仰られていた、帰るべき場所。
全てが始まりし場所に帰ったと噂が流れた。
しかし、その場所が何処に在るのか誰も知る者は居ない。
我々は争いの中で勇者様から魔道具を奪っていた。
その魔道具は、我々では手に負えない重症の患者の治療に使われていた。
私達には扱えきれないと言われ、勇者様だけが使っていた。
何でも、人の魂に干渉する力を持っているという話だった。
やはり、アブラムとムーサーが触らない様に言ってきた。
しかし、言われれば言われるほど反発し、ついに私は魔道具を起動させてしまった。
その結果、凄まじい魔力が放出され、神殿全体を魔法陣が覆った。
その中に居た我々は、全身が分解される様な痛みと共に気を失い、目覚めた時にはアンデットとなっていた。
魔道具を発動させた私は、リッチとなり、こうして長い間ここに留まっている。
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