異世界遺跡巡り ~ロマンを求めて異世界冒険~

小狸日

文字の大きさ
上 下
236 / 759

236かば焼き

しおりを挟む
錬成術でまな板と千枚通しみたいなのを作り、レオに渡すと1匹目から器用に捌いてくれた。
後は捌いた身を竹串に通してもらっておく。
人数分を下ごしらえを行ってもらい、残りは綺麗な水の中に入れ泥抜きをすることにした。
俺は、バーベキューコンロを取り出し、じっくり焼けるように火力を弱めに調整し、網をセットすると、醤油、酒、ミリン、砂糖を使って蒲焼のタレを用意する。

「では、1人1匹づつとしてヤマトの分を入れて17匹分を焼いてみようか。」

「拓ちゃん、こんなヌルの調理は初めてなんだが、一気に焼いて大丈夫か。」

レオが心配そうに言ってくるが、

「大丈夫。失敗しても皆一緒なら怖くない。さぁ、行ってみよう!」

全員に突っ込まれながらも焼き始めた。
じっくり焼いたヌルにタレを付けて焼き始めると何とも美味そうな香りがしてくる。
団扇を取りだし、焼を眺めている集団の方へ煙が行くようにあおぐ。
匂いだけで涎を垂らしそうな姿がとても面白い。
実際は、火の魔道具で火力を得ているので、団扇は必要ない。

『拓、ほどほどにしといた方が良いぞ。食べ物の恨みは恐ろしいかなら。』

確かに、このメンバーの食い意地は凄いから、遊びはこの程度にした方が良いかもしれない。
特にジークさん。その傷のある顔は睨んでいる様にしか見えない。
ヌルは親の敵なんですかと突っ込みたい位だ。
焼くのは任せて、付け合わせに俺はウナギの肝で澄まし汁を用意する事にした。
テーブルの上には鰻重ならぬヌル重が並んでいる。

「「「頂きます」」」

この香り、じっくりと焼いたふっくら感、そして甘いタレ
少し泥臭さが残っているが久しぶりの鰻重。美味しい。
この世界の人は、何故かば焼きという手法に辿り着かなかったのだろう。

「これがヌルなのかよ。調理しだいでこんなに美味くなるんだな。」

「今までのヌル料理は何だったのかと疑問に思ってしまうな。」

「拓に煙を嗅がされも、食べるのを我慢した甲斐があったな。」

「やはり拓だけは普通のヌル料理を食べさせた方が良かったんじゃないか。」

「そうだな。それを知るためのヌル料理だったんだからな。それにしても美味いな。」

俺に対する恨みの様な言葉が聞こえてくるが、聞かなかった事にしよう。
何も無理して不味い料理を食べたくは無い。

「成程、開いてじっくり焼く事で、無駄な脂が落ちて美味しくなったのか。」

レオが今回の調理方法を検討しているみたいだ。

「残りは綺麗な水の中にいれて泥抜きをしているから、臭みが取れて更に美味しくなるよ。
 ちなみにヌルは栄養が豊富で、夏に体力が落ちた時には効果があると言われている。」

「もっと美味くなるのか。もしかして、皆に煙の匂いを嗅がせたのも意味が有るのか。」

「あれは・・・そう、匂いで食欲増進を狙ったんだ。」

俺の悪戯に対する言い訳を「成程。」と真面目に取られてしまった。
嘘ではないので否定する必要は無いが、少し気まずく、レオの邪魔にならない様にヤマトを呼んで一緒に食べる事にした。

『やはり、お前達の食事は美味いにゃ。元の大きさなら何人分でも食べれたのに残念だにゃ。』

ヤマトは何をいっているんだ。そんなに大量に作っていられる分けがないだろう。
でも、美味しそうに食べてくれるなら良かった。
ジェニファーさんとロビンさんも、完食。全員満足したが、未だ食べたそうだ。

「とりあえず、少し場所を変えて罠を仕掛けておいた方が良くないか。」

「そうだな。とりあえず、下ごしらえまでして拓のアイテムボックスに保管してもらうべきだな。」

ロウガさんとジークさんは、何を言っているのやら。
そうと決まればと言って、食器を片づけて川に向かって行った。


次の日からは、4艘のカヌーをオールで繋げ、それを足場に板をセットした。
そこで、捕まえた大量のヌルを捌きながら川を下って行く。

これから死者の洞窟に向かうと言うのに、こんな状態で本当に大丈夫なのだろうか。
このメンバー、やる時はやる人達だとは分かっているが、非常に心配だ。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

異世界成り上がり物語~転生したけど男?!どう言う事!?~

ファンタジー
 高梨洋子(25)は帰り道で車に撥ねられた瞬間、意識は一瞬で別の場所へ…。 見覚えの無い部屋で目が覚め「アレク?!気付いたのか!?」との声に え?ちょっと待て…さっきまで日本に居たのに…。 確か「死んだ」筈・・・アレクって誰!? ズキン・・・と頭に痛みが走ると現在と過去の記憶が一気に流れ込み・・・ 気付けば異世界のイケメンに転生した彼女。 誰も知らない・・・いや彼の母しか知らない秘密が有った!? 女性の記憶に翻弄されながらも成り上がって行く男性の話 保険でR15 タイトル変更の可能性あり

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

これダメなクラス召喚だわ!物を掌握するチートスキルで自由気ままな異世界旅

聖斗煉
ファンタジー
クラス全体で異世界に呼び出された高校生の主人公が魔王軍と戦うように懇願される。しかし、主人公にはしょっぱい能力しか与えられなかった。ところがである。実は能力は騙されて弱いものと思い込まされていた。ダンジョンに閉じ込められて死にかけたときに、本当は物を掌握するスキルだったことを知るーー。

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

神に異世界へ転生させられたので……自由に生きていく

霜月 祈叶 (霜月藍)
ファンタジー
小説漫画アニメではお馴染みの神の失敗で死んだ。 だから異世界で自由に生きていこうと決めた鈴村茉莉。 どう足掻いても異世界のせいかテンプレ発生。ゴブリン、オーク……盗賊。 でも目立ちたくない。目指せフリーダムライフ!

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

レベル上限5の解体士 解体しかできない役立たずだったけど5レベルになったら世界が変わりました

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
前世で不慮な事故で死んだ僕、今の名はティル 異世界に転生できたのはいいけど、チートは持っていなかったから大変だった 孤児として孤児院で育った僕は育ての親のシスター、エレステナさんに何かできないかといつも思っていた そう思っていたある日、いつも働いていた冒険者ギルドの解体室で魔物の解体をしていると、まだ死んでいない魔物が混ざっていた その魔物を解体して絶命させると5レベルとなり上限に達したんだ。普通の人は上限が99と言われているのに僕は5おかしな話だ。 5レベルになったら世界が変わりました

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

処理中です...