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232露天風呂

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次の日の朝、兵士の方々に見送られた俺達は馬車に乗って移動している。
バラン将軍が3台用意してくれ、兵士の方が馬車を操作してくれている。
兵士の方の分も食事の用意させてもらうと

「ありがとうございます。本当に嬉しいです。
 うちの部隊は全員レオさんの料理のファンばかりです。
 私もレオさんの本を買わせて頂きました。
 今回、全員が同行したがって大変だったんですよ。」

ファンか。そう言われて照れているレオ。
レオの料理を美味しそうに食べている兵士。
見ていると本当に嬉しくなってくる。
アイテムボックスに入っているデザートも御馳走する事にした。

5日間街道を馬車で進んだ後は、荒れ果てた獣道の様な道を進む事になる。
ここからは馬車は使えず、歩きとなり、馬車は引き返すことになる。
帰りの道中、少しは楽しめるようにと、日持ちするお菓子を渡しておいた。

「ここからは、クリームが先頭を行く。」

ジークさんの指示で進んでいくと昼過ぎには川にぶつかった。
死者の洞窟は、この川を下って行った所にある。
今夜はここで宿泊の予定だが、岩場か、石がゴロゴロと転がった河原で平らな場所が無い。

「おっ、ここは俺の出番だな。新しい魔道具の力を見せてやるぜ。」

アルは、俺が新たに土の魔道結晶を使い作ったリング状の魔道具を付けている。
アルが両腕を回しながら岩場に向かうと、両手をついて魔法を発動させる。

「ロックブレイク」

岩の上面が破壊され、小さな塊となっていた。更に

「石つぶて」

小さな塊を飛ばすと、平らな岩場が現れた。
テントの張る場所が確保できたみたいだ。
皆がアルの魔法に感心する中、まだまだと言って河原に降りていくと

「ホール」

河原に大きな穴を掘り、穴の周りをロックウォールで補強していく。

「次は俺の番か。マニピュレイト」

レオがそう言うと川から水の塊を浮かすと、そのままアルが作った穴に入れる。
後は温めれば露天風呂の完成だ。
満足気な2人に出来栄えを求められ、確認させてもらうと残念ながら水が濁っている。

「良く短期間で新しい魔道具を使いこなせる様になったね。正直、驚いた。
 アルは風呂の床にもロックウォールを使った方が良いかな。
 この魔法は、水平方向にも使えるから。
 レオは、水を入れる時、もっと優しく操作しないと濁るよ。
 それに、ここは野外だから魔力温存の為に1回に操作する水の量は減らした方が良い。」

俺は、ロックウォールで露天風呂の床を作り、錬成術を使った浄化で水の汚れを取り除いた。
最後に、ロックウォールで女性用として風呂を分断した。
アルとレオは俺が風呂を分けたのを見て、女性の対応を忘れていた事に気が付いた。
もしかして、計画的に分けて無かったのか?

夕食の後、周囲に魔獣が居ない事を確認して皆で風呂に浸かっている。
鍛えた裸の集団。ここは天国ではないだろうか。
もう少し小さい風呂にして密着度を上げて欲しかったな。

「それにしても、アルとレオはあんな魔法も使えるんだな。しかし、魔力の方は大丈夫なのか。」

ジークさんが2人の魔法に感心しつつ体調を気にしてくれていた。

「正直、張り切りすぎた。新しい魔法を使える様になって嬉しくてついな。」

アルが両腕につけている土の魔道結晶で作った魔道具を触りながら答える。

「それに、拓ちゃんがOZの欠点を埋める為と言って用意してくれたんだ。
 理由はともかく、使いこなさない訳にはいかないだろ。」

レオが同じ様に自分の両腕の魔道具をいじりながら答えている。

「土と水の魔法を強化しなければいけないOZの欠点って何だ。
 レオもアルも魔道具を使いこなして、充分に戦えると思うが。
 どうしたんだ拓、何か気になる事でも有るのか?」

その時、俺は皆の体に意識が向いてしまいロウガさんの話を全く聞いていなかった。
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