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228お茶目なジェニファーさん

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クリームのメンバーはトリス錬成術師、ブルネリ公爵に礼を述べた後、俺の前に来くると

「拓殿、本当に感謝する。」

そう言って、俺に頭を下げる。

「・・・」

ジークさんの改まった言葉。何故、ばれたんだろう。

「このミスリルの防具に浸みこませてある魔力には拓の匂いがするからな。直ぐに分かった。」

魔力の匂いって何だ?
手の平に魔力を集めて匂いを嗅いでみるが何も感じない。

「いや、本当に匂いがするわけではないんだが・・・
 何と言うか、ある程度付き合っていると誰の魔力かが何となく分かるんだ。
 特に、この防具に浸みこんだ魔力は強力だからな。」

『魔力で人の判断が出来るのか。その様な事例は聞いた事が有ったが本当じゃったんだな。』

グリムの知識を上回るって凄いな。
魔力探査犬、ジーク・・・難事件を解決って感じか。

「変な事を考えているみたいだが、その反応を見ると間違い無いな。」

そう言うと、全員が俺に白金貨5枚づつ渡してくる。

「防具を用意してくれたお礼だ。」

全部で白金貨25枚。
以前、アンデットを退治してタダで手に入れた防具のリメイクで白金貨25枚。

「いやいや、25枚って貰い過ぎです。有り得ない。」

「俺達がミスリルの防具を買う為に溜めていた金だ。全財産でもこれだけしかないが、受け取って欲しい。」

礼を言って、受け取らせてもらった。
それにしても、これだけの金を払えるなんてAランクの冒険者って凄いな。

「拓、さっそく防具を着けさせてもらっても良いか。」

ジークさんが俺聞いてくるが、その目は防具に釘付けだ。
もちろん、良いに決まっている。
嬉しそうに防具を着け始める中、ジェニファーさんだけが防具を着けるのを躊躇っている。
何か有るのかと気になって見て気が付いてしまった。

「ジェニファーさん、申し訳ありませんが、その防具を着ける前に付き合ってもらえませんか。」

急いで、防具ごとジェニファーさんを部屋から連れ出し、別の部屋へ移動した。
ジェニファーさんの防具を見せてもらい、改めて確認すると

胸のサイズが合っていない。

この防具をジェニファーさんに合わせると、胸の部分に巨大な空間が広がる。
確か、メイドの方に服を用意する為と言って正確に測ってもらうようにお願いした筈なんだが・・・

この何も言えない困った様子から推測するに、サイズを大きく書いてもらったのか。
測って貰った数字を見た時、着やせするのかと思ったが、盛っていたとは。
ジェニファーさんも可愛い所が有るよな。

「どうやら、調べてもらったサイズを読み間違えてしまったみたいですね。
 その防具を治してしまいましょうか。」

「えっ、だってミスリルなのよ。」

「何とかなりますよ。」

俺の魔力を浸みこませたミスリルなので、簡単に変形する事が出来る。
ジェニファーさんが驚く横で、練成術を使い胸のサイズに合わせてみたが・・・だいぶ見た目が変わってしまった。
後は、何をしていたかの言い訳か。

「ジェニファーさん、クリームのマークなんて有りますか。」

教えてもらったマークはショートケーキ。
誤魔化せる自信は無いが、胸にショートケーキのワンポイントを描いて皆の所に戻ると

「何やっていたんだよ。えっ、お前その胸」

直ぐに、既に防具を身に付けたニコラスさんが声をかけてきた。
クリームの探索係として優秀な彼なら、防具の違いは直ぐに気が付くだろう。
いや、彼で無くても、ここまで見た目が変わってしまえば気付かない方が難しい位だ。
あのジェニファーさんが身構えてしまっている。

「ケーキのマークが入っているじゃないか。一体どうしたんだよ。」

えっ、突っ込み所はソコ。
もしかして、形状が変わっているのに気が付いていない。
皆、自分の防具に夢中で相手のは見ていなかったみたいだ。
ジェニファーさんが話し辛そうなので、俺が代わりに答える事にした。

「ジェニファーさんが防具を着ける前だったので、試しにワンポイント入れてみたんです。
 女性なら可愛いと思って。」

ニコラスさんが、羨ましそうにしていたのでニコラスさんの防具にもケーキを描くことにした。

「ありがとうな。俺達のトレードマークなんだ。」

ニコラスさんが嬉しそうだ。この程度の事で済んでよかった。
クリーム以外の人は胸のサイズが変わった事に気が付いたみたいだが、さすがに、その事を口に出す様な人は居ない。
その後、羨ましがるクリームの他のメンバーだけでなく、アークの防具にも船のマークを描く事になった。


ちなみに、アークは全員無事にAランクとなり、ブルネリ公爵のはからいでお祝いのパーティが行われた。
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