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219昇級

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「予想はしていたけど、嫌になるわ。アークだって十分Aランクの実力を持っているのよ。」

「この戦力で戦って、3戦目で負けてしまうなんてね。
 もう少し粘れるつもりだったけど、自信が無くなってしまうわ。」

クリームのジェニファーさんが悔しがっている。
ロビンさんに関しては、何時もの通り微笑んでいるが、悔しがっているみたいだ。

「これでも浩司君や拓君は魔力を抑えているんだよね。
 拓君だけでなくヤマトまで離れた相手の気配を消してくるなんて。
 初めてで、ここまで使いこなして連携がとれるなんて驚きだよ。」

クリームのトムさんの言葉に全員が頷いていた。
正直、連携に関しては司令塔としてのグリムのお陰だ。
徐々に見学する人達が増え、練習が終わると周りから盛大な拍手が上がった。
いつの間にか、屋敷の仕事か心配になるほどの観客が居た。

日中は十分体を動かし、夜は何時もの屋上からイルミネーションを楽しんでいる。
今日は、ロゼ夫人やトーマスも一緒だ。
体調もかなり良くなり、イルミネーション位は楽しんでもらおうとブルネリ公爵の配慮だ。
トーマスが俺達の試合をロゼ夫人に楽しそうに話しているが、誇張が入りすぎだ。
その内、警備の休み時間になったクリームも上ってくると、ジークさんが声を掛けてきた。

「OZはロゼ夫人の完治を待って、帰ってしまうんだよな。
 もっと残って、訓練に付き合って欲しかったが仕方がないか。」

「今回は、凄く勉強になりました。お陰で、色々な攻撃方法を試させてもらいました。
 こんな練習は、滅多に出来ませんからね。」

「攻撃方法の試しね。全く、こっちは必死で持っている手札を全て出しているのに。
 で、何時頃、俺達の所まで昇格する予定なんだ。」

「えっ、昇格って」

「Aランクに何時頃なるつもりか聞いているんだが。」

「俺と浩司には、そんな予定は無いですよ。レオとアルも、あまりランクに拘っていない事を言ってたし。」

ガラや、エチゴさんの方を見ると、この2人も考えていなかったみたいだ。

「は~、これだけの力を持ちながら、のん気なパーティだな。
 アークにも声を掛けているんだが、死者の洞窟の調査依頼を受けてみる気は無いか。
 Bランク以上の依頼だが、俺達と組めばランクはどうにかなる。」

「死者と言う事は、アンデットが居ますよね。何故、そんな恐ろしい所に。」

「アンデットが巣くう洞窟を発見し、死者の洞窟と名付けられたんだが
 洞窟の調査を行ったが全滅し、何十年も放置されてきたんだ。
 しかし、街道の交通量が増えたんで10年前にCランクの冒険者が調査に行ったが全滅。
 その後も、何度か調査を行われたが原因どころか、洞窟内部の状態も調べられてない。
 そこで、俺達に調査依頼の打診が来たって訳だ。
 ただ、受けるにしても休憩時の警備も考えて10名以上の仲間が欲しい。
 返事は帰るまでで良いので考えておいてもらえないだろうか。」

調べてみると、死者の洞窟は古代地図に遺跡が示されている場所だった。
もしかすると、古代の魔道具が関係しているのかも知れない。
ガラ達は受けても良いと思っていて、どうするかは俺次第だった。
正直、暗い洞窟に死人の集団と、まさにホラーな環境に乗り気がしない。
しかし、新しい遺跡の探索が出来るかもしれない。
危険なら直ぐに退却することを条件に依頼を受けることにした。


ラグテルの町に帰る前日、ブルネリ公爵より支払いが行われた。

イルミネーションの魔道具一式:白金貨5枚
ロゼ夫人の治療:白金貨1枚
(これは、クロイツ伯爵から支払いがあったそうだ。)
バラン将軍の部下から、お菓子の詰め合わせ
(何でも、今回のイルミネーションに携わることが出来たお礼との事。)

そして、港町での大型船を売った時に町の人達から受け取った品物の買い取り:白金貨200枚
カミーラ船長は、大型船3隻をブルネリ公爵に渡す代わりに、今後の交易の力添えを依頼したらしい。
既に十分な料金は受け取っているので断ろうとしたが、大型船による収入を考えたら大した金額では無いと言われ受け取る事にした。
お金に対する感覚がズレてしまいそうだ。
ロゼ夫人の治療費は皆で分け、その他は俺が受け取る事になりアイテムボックスに入れておいた。
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