201 / 745
201手紙
しおりを挟む
この町に滞在している間に、カミーラ船長に小包が届いていた。
中に入っていたのは、町を救った仮面の男(俺の事だが)に渡したはずの指輪と手紙が入っていた。
――――――
カミーラ船長
貴女にお願いしたい事があり、手紙を書かせて頂きました
巨大船を売った時に受け取った品に、同封した指輪が入っていました。
どうやら、この指輪には強い感情が込められており、私に不運を招いている様です。
かといって、この様な物を邪険に扱う訳にもいきません。
元の持ち主を探し、返して頂けないでしょうか。
お手数を掛けますが、宜しくお願いします。
――――――
指輪は、夫を亡くした女性の物だった。
夫から送られた大切な指輪だったが、巨大船の費用にと差し出していた。
この手紙の話が港町に広まり、町を救った仮面の男が生きている事が分かり祭りの様な騒ぎになった。
もちろん、手紙を出したのは俺だ。
ブルネリ公爵にお願いし、遠くの町から届いた様に細工をしてもらった。
仮面の男の件も落ち着き、冷凍庫の準備も終わった俺達はラグテルの町に帰る事にした。
ブルネリ公爵とバラン将軍は、もう少しこの町に留まるらしい。
帰りもオリバー隊長が馬車で送ってくれるが、クリームのメンバーは貴族の護衛のためマクニス王国へ向かう。
ブルネリ公爵からイルミネーションの警備の依頼を受けているらしく、また会えるそうだ。
バラン将軍経由で渡す予定だったイルミネーションで使う光の魔道具は、ブルネリ公爵邸に寄って預けることにする。
サリナ姫と計画を立て、着々と新しいイルミネーションの準備が進められているらしい。
バラン将軍も関わっているのだろう。いつもの笑顔ではなく、何か企んでいる悪ガキの様な顔をしている。
出発の日、ルドルフ料理長から数冊の本を渡された。
中を見てみると、彼が作ってきた料理のレシピが書かれている。
「こんな大切な物を頂いても本当に良いのですか。」
「何を言っている。俺の方こそ色々と教わっているんだ。
新しいアイディアが浮かんで、今、料理をするのが凄く楽しい。
本当に感謝している。受け取ってくれると嬉しい。
俺の手書きなんで、字は汚いけどな。」
こんな素晴らしい贈り物を頂けるとは思わなかった。
「ヤマトもブルネリ公爵様の屋敷に来いよ。色んな美味い物を食べさせてやるからな。」
そう言って、俺が抱いているヤマトを優しくなでる。
寒天を作っている間、ルドルフ料理長とレオは寒天や魚を使った料理を色々と試していた。
よく徹夜で試行錯誤を繰り返しいた。
ヤマトは2人と一緒にいて、ずっと試食をしていたらしい。
ルドルフ料理長は、美味しそうに食べるヤマトを見て気に入ったみたいだ。
また、イルミネーションで会う約束をして俺達は港町を後にした。
******(ブルネリ公爵)
「セバスチャン、我々貴族は民に何を与えなければいけないか分かるか。」
「衣食住でしょうか。」
「確かに生きる為には必要だ。しかし、それだけでは足りない。
人が人として生きる為には夢が必要だ。
夢を抱く事ができれば、人は希望を持ち未来を切り開く事が出来る。」
セバスチャンが頷く。
「ニックにしてもそうだ。
彼は獣人差別をどうにかしたいと思い私の所に来たが、何も出来ずにもがいていた。
しかし今、教育という方法で子供達と一緒に差別と闘っている。
ルドルフ料理長にしても、新しい料理を知り、新しい味を模索している。
おまけに、自分の料理技術を広めて良いと彼等に伝える事までした。
皆、OZに影響を受け新しい夢に向かって進んでいる。
本当に素晴らしい。公爵という立場で無ければ、彼等と行動を共にしたいものだ。」
「しかし、公爵であれば、その夢を守ることが出来るのではないでしょうか。」
「そうだな。私が公爵という立場だからこそ出来る事は多い。
そして、守ることで信頼を築くことができる。
しかし、服従の魔法の解除から始まり
イルミネーション、水晶の玉、教育、料理技術の普及、大型船に食材の工場。
全く、次から次へと・・・
この先、ゆっくり休む暇も無いかも知れないぞ。」
「お陰で、毎日が充実しております。」
セバスチャンらしい言葉だ。
私も、忙しくても毎日が嬉しく充実している。
拓殿に振り回されるのは楽しいものだな。
中に入っていたのは、町を救った仮面の男(俺の事だが)に渡したはずの指輪と手紙が入っていた。
――――――
カミーラ船長
貴女にお願いしたい事があり、手紙を書かせて頂きました
巨大船を売った時に受け取った品に、同封した指輪が入っていました。
どうやら、この指輪には強い感情が込められており、私に不運を招いている様です。
かといって、この様な物を邪険に扱う訳にもいきません。
元の持ち主を探し、返して頂けないでしょうか。
お手数を掛けますが、宜しくお願いします。
――――――
指輪は、夫を亡くした女性の物だった。
夫から送られた大切な指輪だったが、巨大船の費用にと差し出していた。
この手紙の話が港町に広まり、町を救った仮面の男が生きている事が分かり祭りの様な騒ぎになった。
もちろん、手紙を出したのは俺だ。
ブルネリ公爵にお願いし、遠くの町から届いた様に細工をしてもらった。
仮面の男の件も落ち着き、冷凍庫の準備も終わった俺達はラグテルの町に帰る事にした。
ブルネリ公爵とバラン将軍は、もう少しこの町に留まるらしい。
帰りもオリバー隊長が馬車で送ってくれるが、クリームのメンバーは貴族の護衛のためマクニス王国へ向かう。
ブルネリ公爵からイルミネーションの警備の依頼を受けているらしく、また会えるそうだ。
バラン将軍経由で渡す予定だったイルミネーションで使う光の魔道具は、ブルネリ公爵邸に寄って預けることにする。
サリナ姫と計画を立て、着々と新しいイルミネーションの準備が進められているらしい。
バラン将軍も関わっているのだろう。いつもの笑顔ではなく、何か企んでいる悪ガキの様な顔をしている。
出発の日、ルドルフ料理長から数冊の本を渡された。
中を見てみると、彼が作ってきた料理のレシピが書かれている。
「こんな大切な物を頂いても本当に良いのですか。」
「何を言っている。俺の方こそ色々と教わっているんだ。
新しいアイディアが浮かんで、今、料理をするのが凄く楽しい。
本当に感謝している。受け取ってくれると嬉しい。
俺の手書きなんで、字は汚いけどな。」
こんな素晴らしい贈り物を頂けるとは思わなかった。
「ヤマトもブルネリ公爵様の屋敷に来いよ。色んな美味い物を食べさせてやるからな。」
そう言って、俺が抱いているヤマトを優しくなでる。
寒天を作っている間、ルドルフ料理長とレオは寒天や魚を使った料理を色々と試していた。
よく徹夜で試行錯誤を繰り返しいた。
ヤマトは2人と一緒にいて、ずっと試食をしていたらしい。
ルドルフ料理長は、美味しそうに食べるヤマトを見て気に入ったみたいだ。
また、イルミネーションで会う約束をして俺達は港町を後にした。
******(ブルネリ公爵)
「セバスチャン、我々貴族は民に何を与えなければいけないか分かるか。」
「衣食住でしょうか。」
「確かに生きる為には必要だ。しかし、それだけでは足りない。
人が人として生きる為には夢が必要だ。
夢を抱く事ができれば、人は希望を持ち未来を切り開く事が出来る。」
セバスチャンが頷く。
「ニックにしてもそうだ。
彼は獣人差別をどうにかしたいと思い私の所に来たが、何も出来ずにもがいていた。
しかし今、教育という方法で子供達と一緒に差別と闘っている。
ルドルフ料理長にしても、新しい料理を知り、新しい味を模索している。
おまけに、自分の料理技術を広めて良いと彼等に伝える事までした。
皆、OZに影響を受け新しい夢に向かって進んでいる。
本当に素晴らしい。公爵という立場で無ければ、彼等と行動を共にしたいものだ。」
「しかし、公爵であれば、その夢を守ることが出来るのではないでしょうか。」
「そうだな。私が公爵という立場だからこそ出来る事は多い。
そして、守ることで信頼を築くことができる。
しかし、服従の魔法の解除から始まり
イルミネーション、水晶の玉、教育、料理技術の普及、大型船に食材の工場。
全く、次から次へと・・・
この先、ゆっくり休む暇も無いかも知れないぞ。」
「お陰で、毎日が充実しております。」
セバスチャンらしい言葉だ。
私も、忙しくても毎日が嬉しく充実している。
拓殿に振り回されるのは楽しいものだな。
3
お気に入りに追加
182
あなたにおすすめの小説
お布団から始まる異世界転生 ~寝ればたちまちスキルアップ、しかも回復機能付き!?~
雨杜屋敷
ファンタジー
目覚めるとそこは異世界で、俺は道端でお布団にくるまっていた
思わぬ″状態″で、異世界転生してしまった俺こと倉井礼二。
だがしかし!
そう、俺には″お布団″がある。
いや、お布団″しか″ねーじゃん!
と思っていたら、とあるスキルと組み合わせる事で
とんだチートアイテムになると気づき、
しかも一緒に寝た相手にもその効果が発生すると判明してしまい…。
スキル次第で何者にでもなれる世界で、
ファンタジー好きの”元おじさん”が、
①個性的な住人たちと紡ぐ平穏(?)な日々
②生活費の為に、お仕事を頑張る日々
③お布団と睡眠スキルを駆使して経験値稼ぎの日々
④たしなむ程度の冒険者としての日々
⑤元おじさんの成長 等を綴っていきます。
そんな物語です。
(※カクヨムにて重複掲載中です)
はずれスキル『模倣』で廃村スローライフ!
さとう
ファンタジー
異世界にクラス丸ごと召喚され、一人一つずつスキルを与えられたけど……俺、有馬慧(ありまけい)のスキルは『模倣』でした。おかげで、クラスのカースト上位連中が持つ『勇者』や『聖女』や『賢者』をコピーしまくったが……自分たちが活躍できないとの理由でカースト上位連中にハメられ、なんと追放されてしまう。
しかも、追放先はとっくの昔に滅んだ廃村……しかもしかも、せっかくコピーしたスキルは初期化されてしまった。
とりあえず、廃村でしばらく暮らすことを決意したのだが、俺に前に『女神の遣い』とかいう猫が現れこう言った。
『女神様、あんたに頼みたいことあるんだって』
これは……異世界召喚の真実を知った俺、有馬慧が送る廃村スローライフ。そして、魔王討伐とかやってるクラスメイトたちがいかに小さいことで騒いでいるのかを知る物語。
これダメなクラス召喚だわ!物を掌握するチートスキルで自由気ままな異世界旅
聖斗煉
ファンタジー
クラス全体で異世界に呼び出された高校生の主人公が魔王軍と戦うように懇願される。しかし、主人公にはしょっぱい能力しか与えられなかった。ところがである。実は能力は騙されて弱いものと思い込まされていた。ダンジョンに閉じ込められて死にかけたときに、本当は物を掌握するスキルだったことを知るーー。
平民として生まれた男、努力でスキルと魔法が使える様になる。〜イージーな世界に生まれ変わった。
モンド
ファンタジー
1人の男が異世界に転生した。
日本に住んでいた頃の記憶を持ったまま、男は前世でサラリーマンとして長年働いてきた経験から。
今度生まれ変われるなら、自由に旅をしながら生きてみたいと思い描いていたのだ。
そんな彼が、15歳の成人の儀式の際に過去の記憶を思い出して旅立つことにした。
特に使命や野心のない男は、好きなように生きることにした。
気がついたら異世界に転生していた。
みみっく
ファンタジー
社畜として会社に愛されこき使われ日々のストレスとムリが原因で深夜の休憩中に死んでしまい。
気がついたら異世界に転生していた。
普通に愛情を受けて育てられ、普通に育ち屋敷を抜け出して子供達が集まる広場へ遊びに行くと自分の異常な身体能力に気が付き始めた・・・
冒険がメインでは無く、冒険とほのぼのとした感じの日常と恋愛を書いていけたらと思って書いています。
戦闘もありますが少しだけです。
おいでませ異世界!アラフォーのオッサンが異世界の主神の気まぐれで異世界へ。
ゴンべえ
ファンタジー
独身生活を謳歌していた井手口孝介は異世界の主神リュシーファの出来心で個人的に恥ずかしい死を遂げた。
全面的な非を認めて謝罪するリュシーファによって異世界転生したエルロンド(井手口孝介)は伯爵家の五男として生まれ変わる。
もちろん負い目を感じるリュシーファに様々な要求を通した上で。
貴族に転生した井手口孝介はエルロンドとして新たな人生を歩み、現代の知識を用いて異世界に様々な改革をもたらす!かもしれない。
思いつきで適当に書いてます。
不定期更新です。
前世の記憶で異世界を発展させます!~のんびり開発で世界最強~
櫻木零
ファンタジー
20XX年。特にこれといった長所もない主人公『朝比奈陽翔』は二人の幼なじみと充実した毎日をおくっていた。しかしある日、朝起きてみるとそこは異世界だった!?異世界アリストタパスでは陽翔はグランと名付けられ、生活をおくっていた。陽翔として住んでいた日本より生活水準が低く、人々は充実した生活をおくっていたが元の日本の暮らしを知っている陽翔は耐えられなかった。「生活水準が低いなら前世の知識で発展させよう!」グランは異世界にはなかったものをチートともいえる能力をつかい世に送り出していく。そんなこの物語はまあまあ地頭のいい少年グランの異世界建国?冒険譚である。小説家になろう様、カクヨム様、ノベマ様、ツギクル様でも掲載させていただいております。そちらもよろしくお願いします。
捨てられ従魔とゆる暮らし
KUZUME
ファンタジー
旧題:捨てられ従魔の保護施設!
冒険者として、運送業者として、日々の生活に職業として溶け込む従魔術師。
けれど、世間では様々な理由で飼育しきれなくなった従魔を身勝手に放置していく問題に悩まされていた。
そんな時、従魔術師達の間である噂が流れる。
クリノリン王国、南の田舎地方──の、ルルビ村の東の外れ。
一風変わった造りの家には、とある変わった従魔術師が酔狂にも捨てられた従魔を引き取って暮らしているという。
─魔物を飼うなら最後まで責任持て!
─正しい知識と計画性!
─うちは、便利屋じゃなぁぁぁい!
今日もルルビ村の東の外れの家では、とある従魔術師の叫びと多種多様な魔物達の鳴き声がぎゃあぎゃあと元気良く響き渡る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる