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201手紙

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この町に滞在している間に、カミーラ船長に小包が届いていた。
中に入っていたのは、町を救った仮面の男(俺の事だが)に渡したはずの指輪と手紙が入っていた。

――――――

カミーラ船長

貴女にお願いしたい事があり、手紙を書かせて頂きました

巨大船を売った時に受け取った品に、同封した指輪が入っていました。
どうやら、この指輪には強い感情が込められており、私に不運を招いている様です。
かといって、この様な物を邪険に扱う訳にもいきません。

元の持ち主を探し、返して頂けないでしょうか。
お手数を掛けますが、宜しくお願いします。

――――――

指輪は、夫を亡くした女性の物だった。
夫から送られた大切な指輪だったが、巨大船の費用にと差し出していた。
この手紙の話が港町に広まり、町を救った仮面の男が生きている事が分かり祭りの様な騒ぎになった。
もちろん、手紙を出したのは俺だ。
ブルネリ公爵にお願いし、遠くの町から届いた様に細工をしてもらった。


仮面の男の件も落ち着き、冷凍庫の準備も終わった俺達はラグテルの町に帰る事にした。
ブルネリ公爵とバラン将軍は、もう少しこの町に留まるらしい。
帰りもオリバー隊長が馬車で送ってくれるが、クリームのメンバーは貴族の護衛のためマクニス王国へ向かう。
ブルネリ公爵からイルミネーションの警備の依頼を受けているらしく、また会えるそうだ。
バラン将軍経由で渡す予定だったイルミネーションで使う光の魔道具は、ブルネリ公爵邸に寄って預けることにする。
サリナ姫と計画を立て、着々と新しいイルミネーションの準備が進められているらしい。
バラン将軍も関わっているのだろう。いつもの笑顔ではなく、何か企んでいる悪ガキの様な顔をしている。

出発の日、ルドルフ料理長から数冊の本を渡された。
中を見てみると、彼が作ってきた料理のレシピが書かれている。

「こんな大切な物を頂いても本当に良いのですか。」

「何を言っている。俺の方こそ色々と教わっているんだ。
 新しいアイディアが浮かんで、今、料理をするのが凄く楽しい。
 本当に感謝している。受け取ってくれると嬉しい。
 俺の手書きなんで、字は汚いけどな。」

こんな素晴らしい贈り物を頂けるとは思わなかった。

「ヤマトもブルネリ公爵様の屋敷に来いよ。色んな美味い物を食べさせてやるからな。」

そう言って、俺が抱いているヤマトを優しくなでる。
寒天を作っている間、ルドルフ料理長とレオは寒天や魚を使った料理を色々と試していた。
よく徹夜で試行錯誤を繰り返しいた。
ヤマトは2人と一緒にいて、ずっと試食をしていたらしい。
ルドルフ料理長は、美味しそうに食べるヤマトを見て気に入ったみたいだ。

また、イルミネーションで会う約束をして俺達は港町を後にした。


******(ブルネリ公爵)

「セバスチャン、我々貴族は民に何を与えなければいけないか分かるか。」

「衣食住でしょうか。」

「確かに生きる為には必要だ。しかし、それだけでは足りない。
 人が人として生きる為には夢が必要だ。
 夢を抱く事ができれば、人は希望を持ち未来を切り開く事が出来る。」

セバスチャンが頷く。

「ニックにしてもそうだ。
 彼は獣人差別をどうにかしたいと思い私の所に来たが、何も出来ずにもがいていた。
 しかし今、教育という方法で子供達と一緒に差別と闘っている。
 ルドルフ料理長にしても、新しい料理を知り、新しい味を模索している。
 おまけに、自分の料理技術を広めて良いと彼等に伝える事までした。
 皆、OZに影響を受け新しい夢に向かって進んでいる。
 本当に素晴らしい。公爵という立場で無ければ、彼等と行動を共にしたいものだ。」

「しかし、公爵であれば、その夢を守ることが出来るのではないでしょうか。」

「そうだな。私が公爵という立場だからこそ出来る事は多い。
 そして、守ることで信頼を築くことができる。
 しかし、服従の魔法の解除から始まり
 イルミネーション、水晶の玉、教育、料理技術の普及、大型船に食材の工場。
 全く、次から次へと・・・
 この先、ゆっくり休む暇も無いかも知れないぞ。」

「お陰で、毎日が充実しております。」

セバスチャンらしい言葉だ。
私も、忙しくても毎日が嬉しく充実している。
拓殿に振り回されるのは楽しいものだな。
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