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176寿司

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その日の夕方、島の調査から戻ってきた兵士たちから報告が有った。
先ず、遭遇した魔獣だが、最高でもDランク。チームで当れば問題無く倒せる。
しかし、魔法が使いづらいみたいだ。
近場で使う分には問題無いが、火や水を遠くに飛ばすと威力が急激に落ちる。
その現象は遺跡に近付くほど強くなっていた。

『もしかして、遺跡の機能が生きているのか。
 状況から魔力を吸収、もしくは発散させている感じじゃな。』

「2000年以上、動作し続ける装置か。発見出来たら、凄い事だよ。
 動作している装置を見れば、色々と分かる事も有るだろうし。」

遺跡までのルート、遺跡周辺でのテントを張る場所は確保出来ている。
明日、更に周辺の調査を行い問題が無いことを確認出来れば、明後日から遺跡の調査を開始する。

夜は予定通り寿司パーティだ。
とりあえず、浩司の前に俺とオリバー隊長、ガラの前にレオ、アルの前にはエチゴさんが座っている。
先ず、浩司が寿司を握ってみる。

「じゃあ、俺が一番初めの味見をするね。」

そう言って、俺が浩司の握った寿司を醤油に付けて食べてみた。

「美味しいね。ただ、もう少しシャリを柔らかく握った方が良いかな。」

「成程な・・・じゃあ、これでどうだ。」

なかなか良い感じだ。やっぱり浩司って器用だよな。

「ほう、シャリという米と魚が良く合う。これだけで刺身とは全く違う料理だな。」

オリバー隊長も寿司を食べて嬉しそうだ。
浩司の握りを見てガラとアルが握り始めた。
ガラ、それって何。どうしてそんな形になるの。
アル、幾らなんでも大き過ぎる。通常の2倍はあるよね。
それでも、レオとエチゴさんは美味しそうに食べている。
形はどうあれ、自分のために握ってくれるのは嬉しい。
余計かもしれないが、少し別の方法を試してもらった方が良いだろう。

「ガラ、アル、押し寿司を作る道具を用意しみたけど使ってみない。
 器にシャリを乗せて更に上にネタを乗せて上から軽く押して形を作ってみて。」

ガラとアルが俺の言うとおりに押し寿司を作っていく。

「最後に型枠がら外して包丁で一口サイズに切ったら出来上がりだよ。」

「レオ、見てくれよ。これなら俺でも出来るぞ。」

「エチゴさん、待っていて下さい。これなら完璧です。」

2人とも嬉しそうだな。作る方も美味しいものを食べさせたいよね。

「握りと違って、シャリとシャリの間に挟んだり出来るし、型枠を変えれば色々な形状に出来るよ。
 俺達にも押し寿司を食べさせて。」

「おう、任せておけ。創作意欲がわいてきた。」

何だろう、アルからとても危険な感じがする。

「アル、良ければ、その魚とシソの葉を組み合わせて作って貰えないか。」

「エチゴさん、分かりました。少し待っていて下さい。」

さすがエチゴさん、アルの扱い方を御存じの様だ。
レオもガラに対して注文を出していく。
その内、自分で作って自分で食べ始めると、作る寿司に迷惑な個性が出始める。
シャリは少なく、色んなネタを乗せまくったアルスペシャル。

「アル、なかなかやるな。すげー豪華じゃないか。」

型枠を縦に重ねてシャリとネタを何層にも重ねた通常の3倍の高さのガラスペシャル。

「ガラもやるな。その重ね方にセンスを感じるぞ。」

2人で互いの寿司を褒めあっている。
何で、そんな物を褒めあえるんだ。この2人のセンスって特殊すぎる。

「待った、待った。
 アル、それって寿司じゃなくて、ただの刺身の重ね合わせだよ。
 せっかくのネタをゴチャゴチャして勿体ない。
 ガラのだってそう。それに、そんなに高さが有ったら食べ難いだろ。」

俺の言葉にガラとアルが顔を見合わせて笑い始めた。

「拓、頭はもっと柔軟にしておいた方が良いぞ。
 食べやすさも必要だが、この美しさが分からないのか。」

「そうだ、そうだ。拓は子供なのに頭が固すぎだ。
 これは、ゴチャゴチャではなく、豪華と言うんだ。
 浩司だって、そう思うだろ。」

アルに振られ浩司ですら言葉に詰まり、苦笑いで誤魔化している。
この2人のセンスにはついていけない。でも、自分達で美味しく食べれるなら問題ないか。
しかし、俺や浩司では出来ない発想だ。
意外と、こういう人が新しい料理を生み出すのかも知れない。
もしかして天才とは、こういう人なのだろうか・・・それは無いか。

残った分は、大きな葉に包んで押し寿司弁当にすると、結構な量になった。
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