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156出版

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「オリバーさん、それにクリームの皆さん、お久しぶりです。」

オリバーさんとクリームのメンバーが馬車でラグテルの町にやってきた。
ブルネリ公爵からレオ宛ての積み荷が搭載されている。

「これって、もしかして、」

「そうです。今度、レオ殿が出版される本です。」

周りへの影響を配慮し、内容をブルネリ公爵にも確認し修正を行っていた所
ブルネリ公爵領でも販売する代わりに、製本をブルネリ公爵側で格安でやってくれることになった。
来年からオープンするエチゴさんの支店で扱う事にしたらしい。

「凄い、本当にレオの本が出来上がったんだ。何だか感動するな。
 あれ、レオどうしたの。」

俺が喜んでいる間、レオは荷台の本を見て固まっている。

「いや、勿論嬉しいが、こうして見ても現実感が無くてな。」

「何を言っている。ほら、早く自分で中身を確認しろよ。」

ガラに背中を押され、震える手で本のページをめくっていく。
丁寧に、1ページづつ、しっかりと目を通している。

「本当に良く出来ています。ありがとうございました。」

エチゴ屋では明日から本に合わせてピーラーとスライサーも販売するらしい。
レオ、エチゴさん、アルは馬車と一緒に店に行くことになった。
店を閉めてから準備を行い、明日は店頭で販売を行うため今日は店の方に泊まることになっている。

エチゴ屋のオープンは5:00と早い。
これは、冒険者が出発する時間に合わせているからだ。
俺と浩司とガラは店の前でオープン1時間前から待っている。
10分前にはニックさん、オリバーさん、アークやクリームのメンバーもやってきた。
店を開けようとエチゴさんが出てくると、俺達を見て驚いたが、直ぐに笑って

「今店を開けますので、もう少しお待ち下さい。レシピ本は左側に置いてありますよ。」

売場には、レオとアルが既に待機していて俺達の姿を見ると本を1冊づつ取って手渡ししてくれる。
昨日、レオは本を渡そうとしてきたが、俺はどうしても店に並んでも1番に買いたかった。
俺も浩司もガラも1人1冊づつ。他に孤児院の分として3冊。
オリバーさんは騎士団仲間から頼まれていたらしく11冊購入していた。
わざわざ、ここで買って荷物を増やさなくてもと思ったが、レオが出す本はきちんと購入したかったそうだ。
本自体は軽い雑誌くらいで銀貨3枚。
普通なら、この3倍でも十分売れると言っていたが、広く知ってもらうため安く設定している。
初めの構想についてはレオと一緒に検討していたが、ブルネリ公爵との話で最終的にどうなったかは知らない。

「当初の予定から結構削られているな。丁寧に書かれているけど基本的なことばかり。
 本当に銀貨3枚で売れるのか?」

「拓から見たらそうかもしれないが、一般公開するのは画期的なんだぞ。
 エチゴさんや、ブルネリ公爵までチェックを入れたんだ、大丈夫だろ。」

夜は、ニックさん、オリバーさん、アークやクリームのメンバーを呼んでレオの出版記念パーティだ。
ダリウスさんも店を早く切り上げて来てくれた。
エチゴさん、アル、ダリウスさんの3人が揃っているのを見るのは久しぶりだ。
さっきから、アルとダリウスさんが嬉しそうに言い合いをしている。
ガラが前に出で手を叩くと静かになった。

「今日は、レオの為に来て頂きありがとうございます。
 身内自慢となりますが、レオの料理は本当に美味い。
 そんな料理上手のレオが、本を出版する事が出来たのも皆様のお陰だと思っています。
 では早速、今日の主役から一言。」

ガラが下がり、レオが前に出ると全員が拍手を送った。

「今日は、本当にありがとうございます。
 俺は、拓ちゃんに教わった事を本にしただけです。
 本来なら、拓ちゃんが受け取る拍手を俺が受け取っても良いのかな。」

急に場がしんみりしてしまい、俺に視線が集まる。何か言った方が良いよな

「俺が教えたのは基本だけです。後は、全てレオが考え努力して身に付けたレオの技術です。
 この本も随所にレオの工夫が盛り込まれている。
 もっと胸を張って皆の拍手を受けるべきだよ。改めて、おめでとう。」

「拓ちゃん、ありがとう。
 出来れば、人属、獣人属に関係なく、多くの人に料理が広まれば良いと思っています。
 そして、この様な本を出せた事を誇りに思います。
 本当に、ありがとうございます。」

レオが頭を下げると、全員から凄い拍手を受けていた。俺も手が痛くなるくらい拍手をした。
拍手が治まった所で、ガラがグラスを持ってレオの横に立った。

「では、皆さん、グラスを持って下さい。
 これから美味しい料理が広まってくれる事を願って、乾杯」

「「「乾杯」」」

ガラの音頭で食事会が始まった。
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