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145Aランク冒険者

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俺達は守衛所の上から浩司とイルミネーションを眺めている。
ブルネリ公爵は今回の自爆行為を考えイルミネーションを中止にしていたが、町の人達から続けてくれるように強い要望が有った。
この町の人達は、獣人として差別を受けていたり、獣人を擁護したために迫害を受けたり、そんな理不尽と戦ってきた人が多い。
こんな事で、負ける訳にはいかないと。
そして、俺とピース医師が動けるようになるのを待って再開催することになった。

怖いという感情も有りながら、声を掛け合い、大人も子供も笑っている。
逃げたのは、他の町から来た人達だけだ。
この町に住む貴族達も、市民を守るために自兵を配置し、冒険者も自主的に警備を行ってくれているみたいだ。

「笑えるなんて、皆強いな。この町の人は、本当に凄い。」
「何を言っているんだよ。拓ちゃんが笑顔を守ったんだろ。」
「きっと何が有っても、努力して笑っているよ。
 それに、もしかすると原因は俺が広めて欲しいとお願いした水晶の玉かも知れない。」
「だとしても、そのお陰で、助かる人が大勢居るんだろ。だったら後悔する必要なんてない。
 自分で言っただろ、あんな事をした奴等が悪い。」

そう言って、俺の頭をゴシゴシと撫でてくる。


「この祭りを守った奴がどうした。」

後ろを見ると、Aランク冒険者のパーティ クリームのメンバーが居た。
あの騒動の中、彼等も魔力暴走者を仕留めてくれ、今回からイルミネーションの警備をやっている。

「ゆっくり話す時間も無かったから、改めて自己紹介するな。」

休憩時間で俺達に挨拶をしに来てくれたみたいだ。
話しかけてきた、顔に傷がある大男がリーダーのジークさん
ジークさんより一回り大きい巨漢のトムさん。
小柄な男がニコラスさん。
強気そうなスレンダー美人がジェニファーさん
ホワッとした色気のある女性がロビンさん

「俺達もあの場に居たが、捕えられたのは2人だけだ。
 怪我をした奴は居ても、誰も死んでいない。
 あの状況で13人の魔力暴走を死者を出さずに納めるなんてAランクの俺達でも無理だ。
 お前達が居たから、町の人間がまた笑顔でイルミネーションが見られる。
 何を考えていたかは知らないが、拓、もっと胸を張れ。」
「分かりました。ありがとうございます。」

ジークさんに言われて、少し気持ちが吹っ切れた。

「そういえば、遅くなりましたが、砂糖を送って頂いてありがとうございます。」
「何を言っているの。こちらこそ、ありがとうよ。蕎麦饅頭を初めて食べたけど、本当に美味しかったわ。
 パーティ名が【蕎麦饅頭】でも良いと思ったくらいよ。」

ロビンさんが嬉しそうに話してくる。
しかし本気で考えているなら止めた方が良いよな。

「そうよ、本当に美味しかったわ。ありがとう。
 美味し過ぎて、残った2つを誰が食べるかで喧嘩になる所だったのよ。」
「あれ、確か人数分を預けたと思ったけど数を間違えていましたか?」

ジェニファーさんが男達の方を見ると男性陣は気まずそうに視線を避ける。

「人数分だったわよ。
 ただ、あいつ等がピース医師とトリス錬成術師の分をじっと見るもんだから1つづつ分けてくれたのよ。
 全く、意地汚いんだから。」
「そうは言うが、お前等だって取り合いに参戦した癖に。」

ジークさん、この状況で口を挟むのは辞めた方が・・・
やはり、女性陣からの罵りが始まった。どうしたものかな。

「皆さん、せっかくのイルミネーションです。楽しく見ませんか」
「失礼しました。こんな奇麗な景色なのに喧嘩なんて無粋ですね。」

エチゴさんに言われて、ジェニファーさんがジークさんにキツイ視線を投げるも矛先を収めてくれたみたいだ。
良かった。おかげで静けさが戻ってきた。
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