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142白い空間
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白い空間だった。上も下も分からない白い空間に俺は浮かんでいた。
『やっと、気がついたか。』
横に、白い鬚を蓄えた黒いローブを着た男が立っていた。
サンタの格好が合いそうな、恰幅の良い優しい感じだ。
『何じゃ、儂の事が分からんのか。』
『その声って、まさかグリム。』
『ハッハッハ、その通りじゃよ。こうして拓と会う事が出来るなんて考えもしなかったぞ。』
『もしかして、俺は死んだのか。』
『何を言っておるんじゃ。この儂が付いていて、死ぬわけがなかろう。
と言いたいが、拓が生きているのは奇跡に近い。無茶をしおって。
ここは、儂の意識の世界じゃよ。お主は夢を見ている様な状態じゃな。』
あれから、2日経っていた。
今、俺の体は高濃度の魔力を流してボロボロらしい。
光魔法が少しづつ体を治しているみたいだが、時間がかかりそうだ。
浩司達も魔力枯渇を起こして倒れたが、今は全員俺の体の横に居るらしい。
『浩司と話す事は出来る。』
『お主の意識が目覚めたなら可能じゃろう。』
とりあえず、俺の状態を伝えてもらうと、喜んだ後に説教が始まったらしい。
正直、聞こえなくて良かった。
全員から1時間位説教をされていたみたいだが、その間グリムと魔法談義で盛り上がっていた事は墓場まで持って行こうと思う。
あの後、どうなったかというと
自爆を出来ず捕まえた賊は事前に毒を飲んでいて、気がついた時には遅く全員死んだ。
持ち物からは背後関係を示すような物は何も無かった。
ただ、彼等の殺意を隠せていたのは、持っていた魔道具の効果という事は分かり、幾つか俺に回してくれるそうだ。
そして、問題が起きたのは俺だけで無かった。
ピース医師が体が麻痺していて全く動けず、オリバーさんが俺やピース医師の状態を見て自分を責め続けているらしい。
『ピースの麻痺は、お主らの魔力に触れた事による魔力障害じゃ。
あれだけの魔力に触れればおかしくなっても仕方がない。
原因がお主の魔力なら、お主の魔力で治す事が出来るかもしれん。』
皆が持っている俺の作ったポーションを集めてもらい、ピース医師を連れてきてもらった。
器に移し利き腕を漬けていると徐々に感覚が戻り、動かせる様になった。
俺の魔力を練ってあるポーションで効果が有るなら、治療で対応できるだろう。
そうなると、問題はオリバーさんか。
俺達が元に戻る事を分かれば元気になってもらえないだろうか。
俺が話せるまで待ってもらう訳にもいかず、浩司とグリムに間に入ってもらい話をする事にした。
「本当に、拓殿の意識は戻っているのですか。」
「戻っています。実際に自分で話すには時間がかかりますが問題ありません。
今は俺としか意思疎通が出来ないので、通訳をさせてもらいます。」
「そうですか、良かった。自分の為に拓殿まで取り返しの付かないことになったかと思うと」
「ピースさんも大丈夫ですよ。
高濃度の魔力に当てられて魔力障害を起こしているだけなので治ります。
先ほど、効き腕だけですが動かせる様になりました。」
「良かった、本当に良かった。」
ほっとしたのか、オリバーさんが涙を流し始めた。
オリバーさんが落ち着いた所で、場を和ませる俺の話しを伝えてもらった。
「えっと、拓ちゃんは魔法の天才だから、オリバーさんが心配する必要はないそうです。
ピースさんの事は、天才でも分からなかったので仕方がないし
拓ちゃんが元に戻れば問題なく対応出来るので安心して欲しいとの事です。」
本当にその通りだと素直に頷かれてしまった。
「あの、オリバーさん。今のは拓ちゃんなりに場を和らげようとした冗談です。
俺も滑ると思ったんですけどね。
拓ちゃんって、そういうセンスがゼロだから。ハッハッハッ。」
「いえ、本当に拓殿は凄いですよ。自分なんかとは比較になりません。」
「そこは突っ込んで頂かないと拓ちゃんが可哀そうな気が・・・
ウケなかったのも自分のセンスで無く、俺の話し方が悪いと責任転換していますしね。
所で、何で拓ちゃんが、ここまでしてオリバーさんを助けたか分かりますか。」
「・・・」
「単純に、オリバーさんの事が好きだからです。
オリバーさんを助けられなかったら、きっと自分を責めていました。
オリバーさんの為にも、拓ちゃんの為にも、本当に助かって良かったです。」
「ありがとうございます。自分に何かできる事はありますか。」
「ピースさんの面倒を見て欲しいそうです。
拓ちゃんがこの状態なので、治療が出来るのは少し先になるみたいですから。」
「ちろんです。拓殿の世話もさせて頂きます。」
「拓ちゃんの世話は俺がやりたいので大丈夫。
後、機会が有ればオリバーさんの体を調べさせてもらいたいそうです。
何でも、薬外の機能を確認したいとか。
俺も立ち会って拓ちゃんを監視するので安心して下さい。」
「そんな事で良ければ、何時でも協力させてもらいます。
拓殿になら、何をされても大丈夫ですよ。」
「もちろん、オリバーさんが嫌がる事はしませんが、何をされても大丈夫と言うのは別の意味で危険です。」
オリバーさんが少しでも元気になって良かったが、ほとんど浩司のおかげだ。
しかし、俺って本当に浩司に信用されて無いな。
浩司という相手が居るのに、危険っていったいなんだよ。
好みのタイプだからと言って、これで手を出したら人間のクズだろ。
グリムも、そんなに笑わないで欲しい。
『やっと、気がついたか。』
横に、白い鬚を蓄えた黒いローブを着た男が立っていた。
サンタの格好が合いそうな、恰幅の良い優しい感じだ。
『何じゃ、儂の事が分からんのか。』
『その声って、まさかグリム。』
『ハッハッハ、その通りじゃよ。こうして拓と会う事が出来るなんて考えもしなかったぞ。』
『もしかして、俺は死んだのか。』
『何を言っておるんじゃ。この儂が付いていて、死ぬわけがなかろう。
と言いたいが、拓が生きているのは奇跡に近い。無茶をしおって。
ここは、儂の意識の世界じゃよ。お主は夢を見ている様な状態じゃな。』
あれから、2日経っていた。
今、俺の体は高濃度の魔力を流してボロボロらしい。
光魔法が少しづつ体を治しているみたいだが、時間がかかりそうだ。
浩司達も魔力枯渇を起こして倒れたが、今は全員俺の体の横に居るらしい。
『浩司と話す事は出来る。』
『お主の意識が目覚めたなら可能じゃろう。』
とりあえず、俺の状態を伝えてもらうと、喜んだ後に説教が始まったらしい。
正直、聞こえなくて良かった。
全員から1時間位説教をされていたみたいだが、その間グリムと魔法談義で盛り上がっていた事は墓場まで持って行こうと思う。
あの後、どうなったかというと
自爆を出来ず捕まえた賊は事前に毒を飲んでいて、気がついた時には遅く全員死んだ。
持ち物からは背後関係を示すような物は何も無かった。
ただ、彼等の殺意を隠せていたのは、持っていた魔道具の効果という事は分かり、幾つか俺に回してくれるそうだ。
そして、問題が起きたのは俺だけで無かった。
ピース医師が体が麻痺していて全く動けず、オリバーさんが俺やピース医師の状態を見て自分を責め続けているらしい。
『ピースの麻痺は、お主らの魔力に触れた事による魔力障害じゃ。
あれだけの魔力に触れればおかしくなっても仕方がない。
原因がお主の魔力なら、お主の魔力で治す事が出来るかもしれん。』
皆が持っている俺の作ったポーションを集めてもらい、ピース医師を連れてきてもらった。
器に移し利き腕を漬けていると徐々に感覚が戻り、動かせる様になった。
俺の魔力を練ってあるポーションで効果が有るなら、治療で対応できるだろう。
そうなると、問題はオリバーさんか。
俺達が元に戻る事を分かれば元気になってもらえないだろうか。
俺が話せるまで待ってもらう訳にもいかず、浩司とグリムに間に入ってもらい話をする事にした。
「本当に、拓殿の意識は戻っているのですか。」
「戻っています。実際に自分で話すには時間がかかりますが問題ありません。
今は俺としか意思疎通が出来ないので、通訳をさせてもらいます。」
「そうですか、良かった。自分の為に拓殿まで取り返しの付かないことになったかと思うと」
「ピースさんも大丈夫ですよ。
高濃度の魔力に当てられて魔力障害を起こしているだけなので治ります。
先ほど、効き腕だけですが動かせる様になりました。」
「良かった、本当に良かった。」
ほっとしたのか、オリバーさんが涙を流し始めた。
オリバーさんが落ち着いた所で、場を和ませる俺の話しを伝えてもらった。
「えっと、拓ちゃんは魔法の天才だから、オリバーさんが心配する必要はないそうです。
ピースさんの事は、天才でも分からなかったので仕方がないし
拓ちゃんが元に戻れば問題なく対応出来るので安心して欲しいとの事です。」
本当にその通りだと素直に頷かれてしまった。
「あの、オリバーさん。今のは拓ちゃんなりに場を和らげようとした冗談です。
俺も滑ると思ったんですけどね。
拓ちゃんって、そういうセンスがゼロだから。ハッハッハッ。」
「いえ、本当に拓殿は凄いですよ。自分なんかとは比較になりません。」
「そこは突っ込んで頂かないと拓ちゃんが可哀そうな気が・・・
ウケなかったのも自分のセンスで無く、俺の話し方が悪いと責任転換していますしね。
所で、何で拓ちゃんが、ここまでしてオリバーさんを助けたか分かりますか。」
「・・・」
「単純に、オリバーさんの事が好きだからです。
オリバーさんを助けられなかったら、きっと自分を責めていました。
オリバーさんの為にも、拓ちゃんの為にも、本当に助かって良かったです。」
「ありがとうございます。自分に何かできる事はありますか。」
「ピースさんの面倒を見て欲しいそうです。
拓ちゃんがこの状態なので、治療が出来るのは少し先になるみたいですから。」
「ちろんです。拓殿の世話もさせて頂きます。」
「拓ちゃんの世話は俺がやりたいので大丈夫。
後、機会が有ればオリバーさんの体を調べさせてもらいたいそうです。
何でも、薬外の機能を確認したいとか。
俺も立ち会って拓ちゃんを監視するので安心して下さい。」
「そんな事で良ければ、何時でも協力させてもらいます。
拓殿になら、何をされても大丈夫ですよ。」
「もちろん、オリバーさんが嫌がる事はしませんが、何をされても大丈夫と言うのは別の意味で危険です。」
オリバーさんが少しでも元気になって良かったが、ほとんど浩司のおかげだ。
しかし、俺って本当に浩司に信用されて無いな。
浩司という相手が居るのに、危険っていったいなんだよ。
好みのタイプだからと言って、これで手を出したら人間のクズだろ。
グリムも、そんなに笑わないで欲しい。
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