異世界遺跡巡り ~ロマンを求めて異世界冒険~

小狸日

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141薬外

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『暴走をしたのは13人か。拓、良くぞ被害を出さずに済ませた。』

爆発の時、俺はシールドで上を覆うのを止めると、空に向かい13本の魔力の柱が立った。
魔力を完全に抑え込む必要はない。
エネルギーの逃げ道を作ってやればいい。空に逃がせば、シールドへの圧力は一気に軽減される。

「良かった。何とかなった。」

全てが終わったと安心した時、

「くたばれ、ブルネリ」

魔力が暴走する寸前の男が1人舞台に飛び込んできた。
未だ居たのか。駄目だ、シールドも間に合わない。

「させるか。」

警備兵の1人が飛び出し賊に突っ込んでいく。
そのまま一緒に舞台の下に転げ落ちた所で魔力の暴走が起き、舞台や周辺の木々が薙倒された。
既に市民は舞台から離れ、舞台の上に居たブルネリ公爵達もシールドを張り被害は無かった。
俺は急いでその場に向かうと消し墨の様な人間だった物と兵士が1人、オリバーさんだ。
未だ息が有るが、酷い状態だ。
魔力暴走の時にシールドを張ったみたいだが、もう回復魔法では救えない。

『早く秘薬を飲ませるんじゃ。』

急いで秘薬を飲ませるが、何も反応が無い。もう1本飲ませようとした所で
ピース医師が駆けつけて、回復魔法をかけ始めた。

「彼は薬外です。薬は効きません。」

薬外とは薬の影響を全く受け付けない体質。
体内に入った毒の影響を受けないが、ポーション等の薬も受け付けない。
ピース医師の回復魔法が効いているのか、オリバーさんが俺を見て話しかけてくる

「拓殿、み、皆を・・・守って・・・下さい。」

もはや回復魔法では助ける事は出来ない。
多分、ピース医師も分かっていながらも回復魔法をかけているのだろう。
それがどうした。諦めてたまるか。

「俺に押し付けるな。守りたければ、自分で守れ。
 OZ、全員集まってくれ。ピースさんは、そのまま回復魔法を。他は離れろ。」

バラン将軍が全員を下がらせる。

「浩司は、俺に魔力を供給する準備を。
 皆は等間隔でオリバーさんを囲んで。
 魔法陣を起動させたら、ペンダントで魔力結界を張ってくれ。」

俺はアイテムボックスから2対の短剣を取り出し魔力を込める。
そして魔力で魔法陣を描いて行く。この世界に来て俺達が初めて見た魔法陣。
複雑だが、何度も見て完全に覚えている。
俺と浩司は、魂の情報から肉体を再生して、今この場に居る。
それには、何百年と溜めた膨大な魔力が必要だった。
しかし、オリバーさんの魂と肉体はここにある。ならば。

『お主達を呼び寄せた転生の魔法陣。肉体の回復でなく、再構築を行うのか。
 確かに、損傷した部分だけなら、2人の魔力で可能かも知れん。
 どうせ、何を言っても聞かんのじゃろう。
 拓は魔法陣に集中するんじゃ。皆には儂が指示を出す。
 浩司、外に居る奴らに隠す様に周囲を土の壁で覆う様に伝えるんじゃ。』

浩司が言うと、土魔法が使える兵士が土の壁を作り上げた。


拓が魔法陣を作り上げた所でピース医師に退いてもらうが、魔法陣から淡く光が漏れるだけで起動しない。

「浩司、もっと俺に魔力を流せ。腕輪の魔力も全てだ。早く。」

俺の肩に置いた浩司の手から流れ込む大量の魔力で、体が引き千切られそうだ。

「もう少し、もう少しだ。頼む、浩司。」
「畜生、これが限界だ。」

あと僅かな魔力があれば、起動させる事が出来る。後1歩足らない。
ここまで来て、諦めるしかないのか。その時

「拓殿、私の魔力を使って下さい。」

ピース医師が俺の背中に触れて魔力を流してくれた。浩司のとは違い異質の魔力だが、無理やり自分の魔力に乗せる。
魔法陣に魔力が満たされた。

『いけるぞ。浩司、結界を張る指示を出すんじゃ。』

「皆、結界を張ってくれ。」

浩司からの指示にOZのメンバーがペンダントに魔力を込め、結界が発生する。
それと同時に魔法陣が輝き、オリバーさんの体が浮かび半透明の青白い球体に囲まれる。

『結界にもっと力を込めさせるんじゃ。魔力を外に漏らすんじゃない。』

浩司が全員にグリムの言葉を伝え、魔法陣から放たれる強力な魔力を結界で抑え込む。

オリバーさんの肉体が淡い光に包まれると球体の表面に螺旋の模様が描き出される。

『これが、魂から読み込んだ人体の構造図。神秘の模様じゃ』

美しい、俺達はこの魔法陣でこの世界に来たのか。
たった十数分の事だった。オリバーさんの失われた体が序所に再構築されていく。
光が収まると無傷のオリバーさんが横たわっていた。

『成功じゃ、彼は助かったぞ。本当に良くやった。良くやったぞ。』

そのグリムの言葉を最後に俺は意識を失った。
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