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122土の腕輪

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「今日も良い天気だ。さぁ、遺跡を探しに行こう。」

誰も踏み入れたことのない遺跡が有ると思うと、自然とテンションが高くなる。

『拓、昨夜完成させた魔道具を渡さなくて良いのか。』

「あっ、忘れてた。出発の前に、アルは利き腕にこれを付けてもらえる。」
「この腕輪は何だ。」

俺が渡した腕輪をアルはとりあえず付けてくれた。

「拓さん、その腕輪はもしかして」

驚いているエチゴさんに腕輪の性能を分かっていないアル。

「土の魔道結晶を使った魔道具だよ。
 魔法陣の合性を考えて硬化、ロックランス、ロックウォールを組み込んである。」
「ちょっ、ちょっと待て拓。この魔道具の価値を分かっているのか。」
「大丈夫。十分価値は分かってる。この先、色々と旅をするならアルも魔法を使えた方が良いだろ。」
「待ってくれ、幾らなんでも受け取れるわけねぇだろ。」
「確かにこれは・・・
 バッグやテントですら入手すら出来ない物なのに、これまで受け取る訳にはいきません。」

エチゴさんと、アルの真剣な眼差しが痛い。
アルは腕から腕輪を外し、俺に戻す。
アルのプライドを傷つけてしまっただろうか。

「土の魔道結晶はマクニカ王国でパウロさんに売って頂いたものです。
 私が考えた一番良い使い方だと思って作ってみましたが
 無神経な行いをしてしまい失礼しました。
 ですが、良ければ この魔道具を使ってみませんか。
 アル用に用意したので、他に使い道も有りませんから。」
「本当に良いのか。俺にこんな凄い物を用意してくれるなんて本当に嬉しい。」

アルは振るえる手で俺から腕輪を受け取り、再び右腕に嵌めた。

「無神経なんてとんでもありません。
 今すぐには用意出来ませんが、戻りましたらアルの魔道具の代金を私の方で支払わせて頂きます。」
「俺も。頑張ってもたかが知れてるが、必ず払う。」
「その辺は、余裕が出来たらで良いですよ。
 使わなければ、アイテムボックスの肥やしにしかなりませんから。
 一番良い使い方を考えたつもりで、相手の事を考えていませんでした。
 渡しておいて何ですが、その魔道具を使いこなすのはかなり大変です。
 レオも1ヶ月以上練習していますが、未だ全性能も引き出せていません。
 もの凄く大変ですが、グリムの訓練を受けてみますか?」
「おぉ、浩司や拓の師匠の訓練を受けれるのか。エチゴさん、こんなチャンスは滅多に有りませんよ。」
「本当にそうですね。グリム殿、宜しくお願いします。」

効率が良い訓練だとは思うけど本当に大変なんだよな。
ガラもレオも初めは死んでいたし。
2人にグリムの訓練を進めて良かったのだろうか・・・

『どうじゃ。これが儂の訓練を受ける者の普通の反応じゃ。お前達の様に溜息なんぞ出て来ないぞ。
 そうじゃ拓、一通りの土魔法を見せてはどうじゃ。』

グリムが嬉しそうだな。
こうなって来ると、もう手が付けられない。
限界ギリギリの猛特訓。俺は魔道具を渡すタイミングを間違えただろうか?
2人には特訓が厳しくなる事を謝らないといけないかもしれない。
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