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111妄想

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救護班の方には過労と言われ、浩司が心配そうに手を握ってくれる。

「いつも心配ばかり掛けてごめん。」
「そう思うなら、もっと俺に甘えろ。今は俺の方が年上なんだから。ほら、側に居るから横になってろ。」

軽く額を突かれて、俺は眠りについた。
次の日、凍死体の盗賊も発見されたので、皆の所に戻る事にした。

「本当に雪の中を歩いて大丈夫ですか。我々とブルネリ公爵の所に戻ってはどうです。」

兵士の方が、心配してくれる。

「大丈夫です。俺が拓ちゃんを安全に連れていきますから。」
「獣人の方々を宜しくお願いします。本当にありがとうございました。」

挨拶をして、森の中を2人で進んで行く。
兵士の方が見えなくなった所で俺は浩司に背負われ、テントに向ってエアウォークで走り抜ける。

「真っ白で奇麗だな。浩司、少し休まないか。」

俺達以外に誰も居ない。全てが白く染まり、風の音だけが聞こえる。
浩司は何も話さず、俺の我儘に付き合ってくれた。


戻ると、俺の様子を見たカイが無理をさせたと謝り続け大変だった。
もう少し体調が良くなってから戻ってきた方が良かったかもしれない。
浩司が寄り添ってくれようとしているのに、カイが世話をすると言って離れてくれない。
添い寝をお願いしたら受け入れてくれそうな勢いだ。

カイって性格も良いし、逞しい体をしている。
抱き付いたらどんな感じだろうと思っていると、浩司にデコピンをされた。
最近、感が鋭くて困ってしまう。

『お主が、変な妄想をしているのは儂にも分かるぞ。健康なったのは良いが、方向性に問題が有るな。』

俺のため息に浩司とグリムが笑っているが、浩司の目が怖い。
全く、俺はどんな顔をしていたんだ。
俺の状態を見たOZやアークのメンバーは出発を更に2日ほど遅らせ、そりに乗って皆に引かれる形でラグテルの町に向かう事になった。

カイとレムはアークが引き取ることになった。

******(ブルネリ公爵)

盗賊を退治したとの報告があった。
あの雪山で、こんなに短時間でどうやって行ったのか疑問に思っていたが

「そうか。浩司殿と拓殿が先に討伐してくれていたのか。
 拓殿の容態は本当に大丈夫なのか。」
「救護班の見立てでは精神的な過労との事です。」
「また彼に負担をかけてしまうとは不甲斐無い。討伐された盗賊は」
「全員、凍死で見つかりました。懸賞金がかかっていた一団という事が分かっています。」
「凍死?」
「はい、拓殿の話ですと、裸にして吹雪の中に放り出したらしいです。」
「そうか。それが拓殿の過労の理由か。
 浩司殿と拓殿に懸賞金と人質の救助を行ったお礼金をニックから渡すように手配を。
 ただし、彼等の名前が表に出ない様に配慮しろ。」
「分かりました。直ちに手配をしてきます。後、助けられた方々からこれを受け取って来ました。」

水の魔道結晶だった。

「盗賊の持ち物に入っていました。浩司殿と拓殿に渡して欲しいと。」
「そうか。では、これも合せて渡すよう手配を。」

しかし、あの彼がここまでするとは・・・全く無茶をし過ぎる。
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